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高校生150名が異世界廃墟に集団転移したようです。みんなは戸惑っているようですが、おれたち三人は好きにやらせて貰います。  作者: (=`ω´=)
ダンジョン篇

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105/401

指名

 午後に入ってから立て続けに、亥のダンジョン、辰のダンジョン、申のダンジョンからパーティが自主的に離脱。

 その三つのダンジョンに、順番待ちのパーティが入れ替わりに入っていく。


「中に入っていた時間からみて、攻略しきる見通しが立たなかったから、自分から出てきた感じかな」

 これについて、彼方はそう評した。

「気力とか体力が尽きて、うっかりミスで死亡するよりはよっぽど賢明な立ち回りなんだけど」

「たった一度でダンジョンを攻略しきるのは、普通に考えて、難しいですよね」

 青山が、そうつけ加える。

「それは、あれ」

 赤瀬がコメントした。

「今日、二度もダンジョンクリアの通知があったから。

 あの通知、全プレイヤーに聞こえてくるんでしょ?」

「ああ、そっか」

 遥も、その言葉に頷く。

「迷宮の中に居る時に、そんな通知が立て続けに聞こえてきたら。

 焦る人は、焦るのか」

「なんなら、もっと短い時間、せいぜい二時間くらいで一度外に出るくらいでもいいと思うけどね」

 彼方がいった。

「人間の集中力って、そんなに長く保たないから。

 ダンジョンの中に、都合よく休憩所とかがあれば、話は別なんだけど」

「たとえ短時間でも、何度も迷宮内に入っていけば、中の情報は蓄積されていきますからね」

 仙崎が、意見を述べる。

「コツコツとやっていけば、いずれは誰かがゴールにたどり着きますよ」

「功名心というか、自分で功績をあげたい人とかは、頑張り過ぎちゃうかも知れないね。

 あと、焦っている人」

 彼方は、そう予測する。

「死んだら、まあこの世界では終わりではないけど、それでも、ペナルティはかなり重いわけだから。

 そのリスクの方を、功績とか功名心とかよりもずっと、重視するべきだと思うけど」

「大部分のプレイヤーは、自分が死なないことを最重視して動くんじゃないかなあ」

 恭介が、のんびりとした声を出す。

「功績とか功名心とか、そんなものがこの世界でなんの役に立つのか。

 おれには、さっぱり理解出来ないんだが」

「今日は初日ということもあって、みんな張り切っているようだけど」

 彼方が、苦笑いを浮かべながら、そう返す。

「明日以降は、もうちょっと短いスパンで出入りするようになるんじゃないかな」

「そうでないと、順番待ちしている人も疲れるでしょ」

 遥が、指摘をする。

「だって、朝から実質半日待って、ようやく自分たちの番になるわけでしょ?

 さらにその次の人の番は、いったいいつになるのやら」

「プラスして」

 仙崎も、予測を口にする。

「ダンジョンに入る人が増えれば増えるほど、中の情報も増えていくわけで。

 普通に考えると、より短い時間で深い場所にまでたどり着けるようになっていくと思うのですけど」

「そうした要素を考えると、日が経つにつれてダンジョンに入っている時間は短くなっていくと思う」

 彼方も、そうした意見に頷いた。

「今日中にダンジョンに入れないパーティは出て来るかも知れないけど、明日以降は、むしろダンジョンに誰も入っていない時間も増えていくのかも知れない」

「一度、誰かに攻略されたダンジョンにアタックするメリットって、あんまりないよね」

 赤瀬が、指摘をした。

「マップとかの情報が集まっている状態だと、再攻略する難易度も低くなっているわけだし。

 全ダンジョン制覇狙いなら、わからないでもないけど」

「中の情報が、まったく集まっていないダンジョンは、これで残り四つ」

 恭介がいった。

「丑、巳、未、戌、だ」

「フロアの広さとか、出て来るモンスターの傾向とかだけでもわかると助かるんですけれどね」

「その辺は、今頃生徒会が必死こいてまとめているところでしょう。

 ダンジョンから帰還した人たちから、聞き取り調査とかして」


 そんな会話を交わした直後に、生徒会から子のダンジョンについての詳細が公表される。

「氷のダンジョン、か」

 その情報にざっと目を通してから、恭介が呟く。

「どうやら、焦って自滅しただけ、ってわけでもないらしいな」

「気温が、ぎりぎり零度のダンジョン、か」

 彼方も、呟く。

「元の世界の、冬の気温だ。

 マーケットで防寒具なんかも手に入るし、急いで準備すれば、そんなに深刻なダメージにもならない」

「でも、慣れない環境とモンスター、その二つを初見で相手にするのは、分が悪いよ。

 気温だけではなく、足元も凍りついていて、滑って危ないってわけでしょ?」

 遥はいった。

「わたしなら、早々にリタイアしている」

「環境的な悪条件と焦りが重なって、ってところかな」

 彼方は、そう結論する。

「あと、寒いんで、判断力が鈍っていた可能性もあるか。

 まあ、レッドホットキャッツってパーティは、運がなかったな」

「こういうルールなら、無理そうって思う要因が一個でもあったら、早々にリタイアするのが無難だと思う」

 恭介がいった。

「無理して頑張っても、メリットらしいメリットもないわけだし」

「ですね」

 仙崎も、恭介の言葉に頷いた。

「メリットらしいメリットもないのに、デスペナルティは大きい。

 だったら、無理をしない方がいいですよね」


 午後二時半頃。

 丑のダンジョンと未のダンジョンから、前後して、中に入っていたパーティが自主リタイアして出て来る。

「残るは、巳のダンジョンと戌のダンジョン、か」

 恭介が呟いた。

「そっちは、随分と粘るなあ。

 何事もないといいけど」

「生徒会から、今、ダンジョンに入っているパーティが出て来たら、今日の探索はそれで終わりにするとの通知が来ていますね」

 青山がいった。

「どうやら、夜間のダンジョン攻略は、やらせない方針のようで」

「それが賢明だよ」

 彼方が、そう返す。

「別に、タイムリミットが設定されているわけでもないし。

 二十四時間態勢で挑む理由もない」

「今日だけで、二つのダンジョンがクリア出来ているわけですしね」

 仙崎がいった。

「攻略を急ぐのなら、酔狂連とユニークジョブズにあと五回、今日の方法を繰り返して貰えば、十二個のダンジョン全部をクリア出来るようにも思えます」

「いや、中に海がある、卯のダンジョンは、その二つのパーティでも無理かも知れない」

 恭介が指摘する。

「他のダンジョンとは、ちょっと性質が違いすぎる」

「そうだ。

 卯のダンジョンがありました」

 仙崎は、すぐに前言を撤回した。

「トライデントは、その卯のダンジョン攻略を目指すのですか?」

「どうなんだろ?」

 彼方は、首を傾げて恭介を見た。

「どうなんだろ?」

 遥が、首を傾げて恭介を見る。

「まずは、自分の住処を建てるのが優先でしょ」

 恭介はいった。

「そうこうしているうちに、他のパーティが先に攻略しちゃうのなら、それでも別に構わないし。

 あのダンジョン、本格的に攻略しようと思ったら、入念な準備が必要になるし。

 おれ的には、なるべく自分では攻略しない方向で考えたいんだよね」


 午後三時十二分。

 巳のダンジョンに入っていたパーティが、自主リタイアして出て来る。

 詳細な情報はあとで公表する、とのことだったが、そのパーティの最終到達地点は、十八階層だと発表された。

「粘りに粘ったが、終わりが見えなくて諦めた。

 ってところかな」

 恭介は、そう評する。

「頑張ったよなあ」

 口に出してはそういったが、心中で、

「無駄な頑張りだ」

 とも、思う。

 おそらく、そのパーティはあまりよくない意味で、真面目な人が揃っていたのだろう。


 その後、ほとんどのパーティが次々と自主リタイアしてダンジョンから出て来る。

「おかしいな」

 午後四時を過ぎた頃、恭介はそう呟いた。

「いくらなんでも、長すぎる」

 他のパーティが帰還する中、戌のダンジョンに入ったパーティだけ、続報がない。

 午前八時にダンジョンに入ってから、おおよそ八時間。

 いくらなんでも、長すぎる。

 なにか、ダンジョンの中で想定外の事態でも起こっていないといいが。

 恭介がそんなことを思っていた矢先、生徒会から連絡が入った。


『すまんが、ちょっと手を貸して欲しい』

 小名木川会長は、前置きもなしに、恭介にそう告げた。

『今から、トライデントの三人に、戌のダンジョンまで来て欲しい』

「そこでなにをやらされるんですか?」

 恭介は訊ねた。

「こっちにも、いろいろ準備があるんですけど」

『どうせ、装備類は倉庫に入れっぱなしなんだろ?

 用件を簡単にいうと、戌のダンジョンに入った連中が、ダンジョンマスターの人質になっている』

「ダンジョンマスター?」

 恭介は、思わず大きな声を出してしまった。

「そんなのが、居るんですか?」

『どうやら、居たようなんだ』

 小名木川会長は簡潔に答える。

『先に攻略完了した午と酉のダンジョンは、攻略法があれだろ。

 おそらく、ダンジョンマスターに接触する前に攻略したんじゃないかと、うちの者は予測している。

 で、だ。

 戌のダンジョンマスターは、どうやら戦闘狂らしくてな。

 先に突入したパーティでは食い足りないから、お前らの中で一番強いやつを連れてこいと、そう仰せだ。

 連れてこないと、今居る連中を全員、なぶり殺しにしてやる、と』

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