パーティ「トライデント」、結成
一日目、AM10:00。
「ん?」
「え?」
体育の授業中、不意に周囲の風景が変わった。
たまたまそばに居た二人、馬酔木恭介と宙野彼方は顔を見合わせる。
「なに、これ?」
「幻覚、って線はないか?
カナ、なにが見えるかいってみろ」
「ええと、壁。朽ちかけたの」
彼方は周囲を見渡し、目に入ったものを片っ端から言葉にしていく。
「落ち葉と枝とか石とか、そのまま放置されている道。これ多分、長く人の手が入っていないね。
廃墟、かな?」
「おれにも同じのが見える。
集団幻覚でなかったちょしたら、お前が好きなラノベとかにあるやつか?」
「突然異世界に転移させられるやつ?
はは、まさか。
もしそうなら、ステータスオープン、とかいったら……出たよ! おい!」
「ステータスオープン、といえばいいのか?
ああ、出たな。よくわからん表示が」
「ステータスと、PPとCP?
PPがゼロスタートで、CPが5000ずつ入っている。
PPとCCの違いってなに?」
「ヘルプによると、パーソナルポイントとコミュニティポイントの略、だそうだ。
とかいわれても、違いがよくわからんが」
「ええっと、PPは、使用することでスキルとかを使えるようになるみたい。
CPは、お金の替わり、かな?
物品が買えるみたい」
「お前の好きなゲームみたいだな。
で、どうすればいい?」
「といわれても、ゲームの目的がわからないとな。
当面の目的は……これか。
ええと、クエスト、可能な限り多くのモンスターを討伐せよ、と。
これ自体は、RPGとかにありきたりだけど」
「5000しかないと、まともな武器は買えないな。
それに、そのモンスターとやらはどこに……」
「いや、あっちから来るのが、それじゃない?
ってか、多過ぎ!
道埋め尽くしているじゃん!」
「まず、結界術ってのを取ってみるか。
使用ポイントも少なめだし」
「レベル1だと、50ポイントか。
どこまで効果があるのか」
「使ってみればわかるさ」
「おお!
モンスターが見えない壁にぶつかって、勝手に自滅していく!」
「自分を中心として半径1メートルに見えない結界を作る感じか。
あと、短時間しか保たないらしい」
「レベル1だからね。
多少でも余裕が出来たのは、正直ありがたいかな」
「ウサギかネズミかってサイズでも、これだけの数にもみくちゃにされると無事では済まないしな。
あとは、攻撃手段か」
「5000ポイント内だと、ろくなのがないね。
ぼくは、まず投網を買う」
「逃げられないようにするためか。
ならおれは、まず金属バットを買うか」
「モンスターを倒せば、ポイントを貰える。
ポイントが増えれば、もっと上等な武器も買える、と。
スタートとしては、そんなもんでしょ。
あ、あと、パーティってのも組めるみたいだね。
いろいろ便利そうだし、三人で組んじゃお」
「よくわからんけど、仲間外れにするとハルねーがうるさいからな。
ちゃんと連絡しておけよ」
「わかっているって。
じゃあ、パーティ申請したから、それOKして」
「トライデント?
これがパーティ名ってやつか?」
「気に食わないかな?」
「いや、別になんでもいい」
「じゃ、投網投げるから、そこに入ったモンスター潰しておいて。
その間にねーちゃんに連絡しておく」
「おお」
「えーと、この分だと、ねーちゃんもこっちに来ているよな?
連絡するのは、ああ、これか。
テキストか音声を選べるって……音声のが手っ取り早いか。
あ、ねーちゃん? おれおれ。
いや、おれにもよくわからないんだけど、モンスターってのを倒せば倒すほど有利になるみたい。
今、キョウちゃんと一緒にいるんだけど……あ、はい。
すぐに合流しますか。
こっちに来るのはいいけど、その前に結界術ってのを取って欲しいかな、安全のために。
場所?
ええっと、ヘルプさんに直接訊いた方が手っ取り早いと思う。
おれも今こっちに来たばかりだから。
え?
マップが表示された?
おれたちの位置はわかったけど、ちょいと距離がある、と。
時間は多少掛かってもいいよ、おれたちはおれたちで、モンスター潰しながら待っているから。
あ、移動する前にパーティに入って。
同じパーティのメンバーだとポイントとかアイテムの共有が出来るみたいで、なにかとお得だから。
うん、こんなこといっている間にも二人でかなりのモンスター潰して、今、ポイント3万、いや、四万超えた。
一体あたりのポイントは少ないんだけど、数こなすとすぐにあがるね、ポイント。
ねーちゃんはモンスターのこと考えなくていいから、まずはこっちに合流することを最優先して」




