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パパとママは、ちゃんと見ててくれてるよ

作者: 鵜飼ヒロキ

 ……もっと、僕のことも構ってよ!!


 僕の家族は、いつも弟にばかり目を向けている。

 ……弟のてつやが生まれる前は、僕にいっぱい構ってくれたのに。

 僕は6才、てつやは今8ヶ月で、てつやが生まれた時は嬉しかった。本当に嬉しかった。

 ……だけどそれから、パパもママも、僕には構ってくれなくなった。

 ……全く。

「ねぇ、ママ。この絵本読んで」

「良いよ!」

「わーん! わーん!」

「あぁ、てつや、また泣き出しちゃった。ごめん、なおと、ちょっとだけ待ってて」

「えっ? ママ!」

 こんな感じで、ずっと僕に構ってくれない。いつも、てつやが優先される。


「なおと、今日の昼は何が食べたい?」

「うーん……ハンバーグ!」

「じゃあ、ママが頑張って作るね!」

 今日はパパもママも僕に構ってくれた。

 しかも、ハンバーグが食べれる! やった。


 そう思っていたけど、

「なおと、お昼ごはんよ」

「……えっ!? 何でハンバーグじゃないの?」

「あぁ! ごめん、なおと。忘れてた。ハンバーグ食べたいって言ってたね」

「でも、お魚だって、美味しいぞ! なおと」

「……もう、パパもママもてつやばっかり! 大っ嫌い!」

「ちょっと、なおと!」

 僕はとても怒って、家を飛び出しちゃった。

 外をしばらく走っていると、道が分からなくなった。

 ……どうしよう、家に帰れない。お腹空いた。

「……う……う」

 僕は泣きそうになって、その場に座り込んだ。

 ……すると、

「ぼく、大丈夫?」

 少し優しめの声がした。

 顔を上げると、知らないお姉ちゃんが居た。

「お姉ちゃん、誰?」

「ごめんね、悪い人じゃないから。みさきっていうの。ぼくは迷子?」

「……うん、家を飛び出してきちゃった」

「そうなんだ。家、帰れそう?」

 僕は首を振る。

 まだ、このお姉ちゃんは少し怖い。

「そう、……本当にわたしは悪い人じゃないからね!」

 何か、良い人そう。

「お姉ちゃん、僕ん家に連れてってくれる?」

「うん、家の周りにあるものさえ教えてくれれば、調べるから」

「じゃあ、行こう!」

 僕はこのお姉ちゃんと一緒に家へ戻ることにした。

「じゃあ、家の周りにあるものを教えて」

「うーん……前に少し大きな公園があって、隣にコンビニがある」

「OK、分かった」

 お姉ちゃんはスマホで何かをしていた。

「もしかして、ここだったりする?」

 お姉ちゃんはスマホの画面を見せてきた。

「あっ! ここ」

「そっか、この道なら知ってる。行こう!」

 僕はお姉ちゃんと手をつないで歩き出した。


「……大丈夫かな? なおと」

「大丈夫だ。きっと、お腹が空いて帰ってくるよ」


「にしても、なんで家を飛び出してきちゃったの?」

「うーん……」

「ごめん、聞かない方がよかった?」

「いや、大丈夫。実は僕、8ヶ月の弟が居るんだけど、弟が生まれてから、パパもママも僕に構ってくれなくなったんだよね」

「そうなんだ」

「絵本も読んでくれないし、話も聞いてくれないし、嫌になっちゃう」

 僕は知らないお姉ちゃんに全てを話した。

「そっか。でもね、弟くん、まだ小さいんでしょ? だったら、弟くんが心配になるのも分かるよ。わたしもね、妹が居るんだけど、君と同じ頃は妹ばっかりでずるい! って思ってたけど、今は生まれたばかりの小さい子が心配になるのも分かるようになった。だから、弟くんがある程度大きくなったら、また構ってもらえるよ」

 お姉ちゃんは僕に色々教えてくれた。

「それに、弟にばっかりって言ってるけど、君のお父さんもお母さんも、本当は君のことも気にしてると思うよ」

「ホント?」

「うん!」

 そんなような話をしていると、見覚えのある景色になった。

 家に着いたんだ。

 すると、

「なおと!」

 外で探してたママが僕に駆け寄ってきた。

 きっと、怒られる。

「もう、どこ行ってたの!」

 その言葉を言った後、泣きながら僕に抱きついた。

「……心配したんだからね」

 ママはとても泣いていた。

「大丈夫か? なおと。怪我してないか?」

 弟を抱いたパパも出てきた。

「このお姉ちゃんが、ここまで連れてきてくれた」

 僕はお姉ちゃんを指差した。

「ありがとうございました。息子を助けていただいて」

「いえいえ」

 何か知らないけど、パパもママもお姉ちゃんにものすごいお辞儀をしてた。

「じゃあ、ぼく、お別れだね。もう、家族に心配かけちゃダメだよ」

「バイバイ!」

 僕たちはお姉ちゃんと別れた。


 ……1つ、分かったことがある。

 パパもママも、僕とてつやのために頑張ってるんだ!!

 読んでいただきありがとうございます。

 きっと誰かが、あなたの頑張る姿を見ててくれています。

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