夜の空のヒメたるもの
薄墨の空に
そこだけ色を染め忘れたように
純白のドレスが白く輝く
無粋な雲が
風に吹かれて
彼女を覆い隠そうとしても
薄い灰の絹のレースを纏ったかのようで
彼女の白さが際立つばかり
隠しきれないその美しさに
今宵の月姫には敵わない、と
星姫たちはそそくさと
夜の空の彼方に消えていく
夜空のパーティーに残っているのは
芯を持って強く輝く
僅かな星姫たちばかり
あなたが余りに輝いていては
殿方たちも遠慮して
誰も近寄れませんよ、と
金の星の姫が囁くと
私を照らすあの方は
その程度では霞みませんよ、と
月の姫はころころと笑う
世界を巡るあの方に代わり
夜を照らすのが私の仕事
あの方の側に控えるときは
青に溶ける白で良い
控えることが叶う程度には
輝けるように自らを磨く
それが私にできること
月の姫の笑顔を見つめて
熱くて灼けてしまいそうね、と
金の星姫は笑って消えた
金色に輝く星姫は
あの方が空に昇られる頃
また会いましょう
そう言った
それは随分気の長い話ね
月姫は笑顔でそう応えた