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私は尾山台杏菜、27歳。普通の会社員。
前髪なしの全力ひっつめ髪でノーメイクにウエリントン型の黒縁眼鏡。
眼鏡はノーメイク隠しの伊達メガネ。視力は良い。
仕事の日はちゃんとメイクするのでこんなに地味じゃない。
シンプルな白いクルーネックのシャツブラウスに黒いワイドサルエルパンツで
先の2人に比べると可愛げも色気もないのは否定できない。
「えーと、救世主様?こちらに…」
黒い詰襟騎士様達の中でもひときわ体格の良い短髪赤毛・翠眼の男性が
恐る恐る手を指し出して私はホールから連れ出された。
ようこそとか求めていたとか言わないのね。
神殿風ホールを後にした私達は緑がきれいな庭が眺められる廊下を進み
どうやらここはお城のようだときょろきょろしながら騎士さんの後をついていった。
連れて行かれた先は大きな窓から綺麗な花が咲く庭が眺められる明るい部屋で
そこでゆったりとしたソファを勧められ、メイド?が良い薫りのお茶を出してくれた。
私の向かいには短髪赤毛・翠眼の騎士様が座りメイド?が部屋から退出すると
さっそく話し始めた。
「えー、救世主様。この度は召喚に応じていただきありがとうございます。」
「……」
「早速ですが、瘴気浄化および害獣討伐に関してのご説明を~」
「いやいやちょっとまって。ここは何処であなたたちは誰ですか。
そもそも何が何だかわからないんですけど。イチから全部説明してくれない?」
「救世主様…」
「私は尾山台杏菜。救世主様ってなにそれ?」
「オヤマダアンナ様、ですか。えーと?」
「苗字はオヤマダ、名前はアンナ。で、あなたは?
人に名乗らせて自分は名乗らないんですか?
それは失礼じゃないですか?」
短髪赤毛・翠眼は私が語気強めの大きい声に驚いたようでちょっと目を見開きつつ
「救世主様…あ、いやオヤマダ様、失礼いたしました。
私はラヴァンタ国第二騎士団団長のバルビアス・クロルス。
後ろに控えているのは副長のウェトラニス。
その他の者は部下である第二騎士団員だ。」
部屋にいるのはクロルス団長以下団員含めて5人。
騎士団ってことはまあ要するに軍人ってことかな。
「ここはラヴァンタっていう国?なんですか。聞いた事無いんですけど…
あの、これって何かの撮影なんですか?ドッキリ番組?
いきなり無関係の人を巻き込むのってあり得ないっていうか…」
団長はちょっと何言ってるのかわかんないんですけど?って顔でみてくる。
何言ってるかわかんないのはこっちなんですけど?