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第6話 怪奇カッパ怪人の切断するヒレ

 暖かい大型のビニールハウスの中は、甘い匂いに包まれていた。

何列ものイチゴの棚が、ビニールハウス内に並んでいる。

真っ赤な大粒のイチゴが、緑の茎からたくさんぶら下がっている。


挿絵(By みてみん)


 この農園のイチゴは丸みのある円錐形でつやがあり、大きな実が特徴である。

果汁が多く、みずみずしい食感が人気であった。


 よく誤解されることだが、イチゴの赤い部分は厳密にいうと『果実』ではない。

果実のように見える赤い部分は、茎の先端の花床(かしょう)が膨らんだものなのだ。

本当の果実は白いツブツブの方で、この中に種子が入っている。


「うわぁ、おいしそうなイチゴがいっぱいあるね。零司くん。ここのイチゴ、全部食べ放題なんだよね」


 モルモットのヌイグルミを抱いた中学生の空井イオリは、目を輝かせながら隣にいる児玉零司にきいた。


「そうだよ。イオリちゃん。結論から言うと、制限時間の中でなら食べ放題だ。お土産にする分のイチゴは別料金になるけどね」


「イオリさん。お土産のイチゴはノノさんの分も持って帰りますの。ノノさんはこのツアーに参加できませんでしたので、お土産がないとかわいそうですの」


 イオリと同じ中学の山宮サキが言った。


「そうだよねえ。ノノちゃん、すごく残念がってたねぇ。せっかく零司くんがツアー券出してくれたのに」


 零司は勤めている駄菓子屋で、常連のお客さんからバスツアー券をもらった。

食べ放題のイチゴ狩りがついていて、4人まで参加できるものだ。

零司はいつもの女子中学生三人組に声をかけ、イオリとサキはすぐに参加を希望した。

あいにく海堂ノノはその日は外せない用事があって、泣く泣く不参加となったのだ。


「たしか今日は、ノノちゃんも法事で別の県に行ってるんだよね。『お土産にシナモン餅か柚子餡(ゆずあん)マドレーヌを買ってきてやるぜ』って言ってたよ。あたし達はイチゴを食べられるだけ食べて、余ったのをお土産にしようね」


 そういうイオリに、零司は笑って言った。


「いくら食べ放題っていっても、無理してイチゴを食べすぎないでね。お腹がいっぱいになったら、イチゴのおいしさも半減しちゃうから。それに君たちも、さっきうどんを食べたばかりだよね。そんなに入らないでしょ」


「大丈夫ですの。児玉さん。わたくしもイオリさんもそうなると思っていましたので、うどんは小盛りにしましたの」


「あたしもまだまだ食べれるよー。だって甘いものは別腹だもん」


「なるほどね。じゃあイオリちゃん、サキちゃん。このトレイにイチゴを()んでいこうか」


 そういいながら、零司はイチゴの摘み方を説明する。


「イチゴを摘むときは下に引っ張るんじゃなくて、イチゴを上に持ち上げると簡単に摘めるよ。食べるときはヘタを取って、後ろの方から食べるといいよ」


「零司くん。イチゴは先っぽから食べるとどうなるの?」


「イチゴは先端の方が甘いんだ。だから後ろから食べたほう全体的に甘く感じるよ。先っぽから食べると、後ろの方が酸っぱく感じることもあるんだ。だからと言って、先端だけを食べて残りを捨てるのはマナー違反だからね」


「はーい。気をつけまーす」


「イオリさん。あちらの机に練乳とチョコソースが置いてありますの。最初に摘んだイチゴは普通に食べて、後半に摘んだ分は練乳とチョコで甘くしていただきましょう」


「そうだね、サキちゃん。それじゃあ、イチゴ狩り開始ー」


 イオリとサキはイチゴを摘んで専用のトレイに入れていく。

ためしにイオリは摘んだイチゴを1つ、口に入れてみた。

果汁が多くてみずみずしく、それでも程よい硬さを保っている。

甘く深みのある香りが口の中に広がっていった。


「おいしいっ。スーパーのより甘いよ。すっごくジューシーで最高っ」


 左腕に抱いているヌイグルミが、急にもぞもぞと動き始めた。


「あ、マロン。ちょっと待っててね。マロンにもイチゴあげるから」


 イチゴが入ったトレーをそっと物陰に置いて、その隣にモルモットのヌイグルミも置いた。

するとヌイグルミ……実は妖精のマロンが「いただくケビー」といって、イチゴを食べ始めた。


 そんな妖精の姿を見ていたイオリは、ビニールハウスの片隅に奇妙な物体が置かれているのに気づいた。

一見、大きなイチゴのオモチャのようにも見えた。

しかし急にその巨大イチゴに二本の足が生えて、立ちあがったのだ。


挿絵(By みてみん)


「カッパカッパー! キャハハハハーー」


 それはカッパ型の怪人であった。背中の甲羅は赤く、白い斑点の模様がある。

ビニールハウスの外から女性の声が響いた。


「どこだーっ。カッパ・アズルー! どこに行ったのだー! とにかく暴れるのだっ。周りの人間を恐怖に落として、マイナスオーラを闇海王メグダゴン様にささげるのだ!」


 イオリは、少し離れた場所でイチゴを摘んでいた零司に駆け寄った。


「零司くん、怪人がでたよっ! 零司くんは急いでバスツアーのお客さんたちを連れて、駐車場の方に逃げてっ。あたしとサキちゃんは向こうから逃げるからっ」


「わかった。イオリちゃんたちも気を付けて!」


 零司は他のツアー客たちに声をかけながら、一緒にビニールハウスから出た。

イオリとサキは反対側の出口から駆け出し、近くにあった倉庫の陰に隠れた。


 イオリはぎゅっと拳を握った。

彼女の左手の甲にハートに似たマークが浮かんだ。

サキの手にはスペードに似たマークが浮かぶ。


「サキちゃん、変身だよっ」


「はいですのっ、イオリさん!」


 ふたりは両手を前に出し、親指と人差し指の先を合わせて三角形を作った。


「スカイパワー・チャージアップ!」


「マウンテンパワー・チャージアップ!」


 両手の間に三角形の光が現れた。三角形がクルリと半回転し、六芒星となる。

そこからあふれ出る光の奔流が、ふたりの身体を覆い隠した。


 挿絵(By みてみん)


 光の中から二人の魔法少女が飛び出した。

一人の頭のカチューシャには鳥型、もう一人には龍型の飾りがついている。

そして二人は、ビニールハウスから出てきたカッパ型怪人の前に立つ。


「お待ちなさい! セーラー服魔法少女ハートポッポ、ここに参上!」


「同じく、キーシャポッポ参上! この世の悪事をやめさせる。私たち……」


「「セラレンジャー!」」


 ふたりは両手を胸前でクロスしてポーズをとった。


 カッパ型怪人の隣に槍の女フォークダンスが立ち、セラレンジャーたちを睨んだ。


挿絵(By みてみん)


「おのれセラレンジャー! せっかくいつもと離れた場所に来たのに、どうしてまた我々の邪魔をするのだ。ここまで来るのにどれだけ苦労したと思っているのだ。やるのだっ、カッパ型怪人カッパ・アズルー」


「カッパカッパー。オカニアガッタカッパハ、サビシイノー。キャハハハハーー」


 カッパ型怪人がキーシャパッポを目掛けて走りこんできた。

怪人は腕についた刃物のようなヒレを振るった。

キーシャポッポがかわすと、後ろのビニールハウスの壁と支柱が切りさかれた。

ビニールハウスが傾き、中のイチゴ棚が崩れ落ちるのが見えた。


「ああっ……。イチゴがっ」


 キーシャポッポが悲しそうに叫ぶと、槍の女フォークダンスが笑い出した。


「はっはっはっ……。だーかーらー、キサマたちがおとなしくカッパ・アズルーに斬られればよいのだ。我々のせいではないぞ」


「そうはさせないっ。いくよっ! ポッポロッド! キャイガーボール!」


 ハートポッポの左手に赤い光の玉が現れた。

そしてラケット型の杖で光の玉を打ち出した。


 命中する寸前、カッパ型怪人がくるりと振り向いた。

キャイガーボールは赤い甲羅で跳ね返された。


「えー、そんなのあり? ズルい」


 怪人はさらに振り返って、ハートポッポに走りこんできた。

そのまま腕のヒレで切り付けてくる。

なんとかかわすが、怪人は続けて後ろ回し蹴りを放った。

怪人の蹴りをまともに受けて、ハートポッポは跳ね飛ばされた。


「ジャバウォック・スイング」


 キーシャポッポが糸付きの青い光球を投げた。

が、怪人は両腕のヒレの刃で挟むようにして、光の糸を切った。


「カッパカッパー。キャハハハハーー」


 カッパ怪人は軽くジャンプして空中でくるりと回り、キーシャポッポに蹴りを放つ。

よけたところで尻尾の追撃があり、弾き飛ばされた。

 

「はうっ!」


 飛ばされたキーシャポッポは、ハートポッポの隣の地面に叩きつけられた。

それを見て槍を持つフォークダンスが笑った。


「はっはっはっ。よくやったのだ、カッパ・アズルー! その調子でセラレンジャーをたおすのだっ」


「カッパカッパー。キャハハハハーー」

 

 カッパ・アズルーがヒレの刃を構えて、キーシャポッポに迫る。

気力を振るって立ち上がったハートポッポは、その間に割り込んだ。


「ポッポバリアー」


 カッパ・アズルーが円形のバリアにヒレをたたきつける。

それを必死でおさえるハートポッポ。


「させないっ。あたしは友達を絶対に傷つけさせない!」 


「カッパカッパー。トモダチ、イナクナルー。ウチハ、テンコウスルカラ、トモダチミンナ、イナクナルノー。キャハハハハーー」


「え?」


 ハートポッポは高笑いするカッパ怪人を見た。

これまでに戦ってきた怪人も、みんな大きな声で笑っていた。

しかしハートポッポには、怪人たちが泣いているように感じられてしょうがなかった。

以前、黒衣の玉子様から聞いたことがある。

何か悲しい経験やつらい思いをした人間が、弱った心につけこまれて怪人にされてしまうことがあるって。

後で妖精のマロンにもきいてみたが同じ意見だった。

この怪人も、もしかして……?


「友達を作ることをあきらめちゃだめだよっ! ケンカしたっていいんだよ。絶対すぐに仲良くなれるからっ」


 ハートポッポは怪人に向かって叫んでいた。


「あたしだって、転校したばかりの時は怖かったんだよ。前の学校に戻りたいって思ったこともあるよ。でも大丈夫。大丈夫なんだ。友達なんて簡単にできるんだよっ」


 いつの間にか、カッパ型怪人の動きが止まっていた。


「心配しなくたって、友達はすぐできるよ。最初は誰かに挨拶するだけでいいんだよ。それに前の学校と新しい学校、両方に友達がいるって素敵なことなんだよ」


「カッパーカッパー……。……アアアア」


 カッパ怪人は両手で頭を押さえて、よろよろと何歩か下がった。

槍を持つフォークダンスが叫んだ!


「何をしているのだカッパ・アズルー。お前は闇海王メグダゴン様の忠実な部下なのだ! だまされるな! セラレンジャーを倒すのだっ」


「カッパカッパー! キャハハハハー」


 カッパ怪人は再度ヒレの刃を構えた。


 その時、複数の黒い(つぶて)のようなものがどこからか飛来した。

礫は怪人カッパ・アズルーの足元でパパパパン!と炸裂した。


「誰なのだっ! どこにいるのだ!」


 フォーク・ダンスが周りを見回すと、どこからかギターのゆっくりとした調べがきこえてくる。

その方向を見ると、近くの倉庫の屋根の上に人影があった。


 黒の燕尾服に黒のシルクハットを被っている。

こちらに背を向けて、黒く長細い旅ギターを鳴らしていた。

黒いマントが風になびいている。


 黒衣の者は演奏を止め、振り返った。

帽子をかぶった顔は目も鼻も口もなし、つるりとした焦げ茶色の玉子型の仮面をつけている。


「スカッと参上、スカッと回復。さすらいの回復師ハティ・ダンディ、ここに推参!」


 黒衣の玉子仮面は倉庫から飛び降り、セラレンジャー達の横に立った。


「しっかりしろ、セラレンジャー。本日の回復アイテムはこれだっ」


 黒衣の仮面は駄菓子の『フルーツ餅飴』を二人に渡した。


「ありがとう、ハティさん」


 ふたりはオブラートに包まれた餅飴を口に入れた。

オブラートはすぐに溶け、口の中にフルーツ味が広がる。

ゆっくり噛むと、やわらかく噛み切れた。


「力が湧いてくる! おいしいって、幸せです!」


「こちらも痛みが消えましたの。ハートポッポ、わたくしが援護しますの。いつものようにお願いしますの。ポッポロッド!」


「セラレンジャー! 今の幸せな気持ちを光に変えて、あの怪人を闇から解き放て!」


「はいっ! やるっきゃないない! ポッポロッド!」


挿絵(By みてみん)


 ハートポッポの背中から鳥の翼に似たオーラが広がった。

その左手の上に、強い輝きの赤い光球が現れた。


 キーシャポッポがラケット型の杖で青く光る玉を飛ばし、向かってくるカッパ怪人をけん制した。

ハートポッポは左手の光球を軽く投げ上げ、ラケット型の杖を振るった。


「アババイボール・オーバードライブ・シュート!」


 光球は大きく空中にあがり、獲物を狙うハヤブサのように怪人目掛けて急降下した。

そして、光球は怪人カッパ・アズルーに命中した。


「カッパカッパー! なんだか気持ちよくなってきたかも……」


 怪人カッパ・アズルーの姿がぼやけたようになり、どこかに走り去っていった。


「ああっ、どこへ行くのだカッパ・アズルー! おのれセラレンジャー。こんどこそ、私がこの槍で……」


 フォークダンスが槍を構えたその時、彼女の額の宝石が赤く点滅した。


「くっ……。またしても時間切れなのだ。セラレンジャー、覚えていろよ。次こそキサマ達を倒すのだ!」


 フォークダンスの背後の空間が割れて、暗い闇の世界が広がっているのが見えた。

そこへ彼女が飛び込むと、割れた部分が何事もなかったかのように元に戻る。


「あのカッパさんは元の人間に戻れるのかな……。って、ハティさんは?」


「また気づいたらいなくなってましたの」


「いつもすぐに行ってしまうケビ。マロンはお菓子が食べたいケビ」


 二人は変身を解いて元の姿に戻った。

イオリは妖精マロンに残った餅飴を渡した。


 半壊していたビニールハウスが、光につつまれて復元されていくのが見えた。

妖精マロンが餅飴を食べながら言った。


「イオリちゃん。バスの時間は大丈夫ケビか? 早くイチゴをつまないとお土産が……」


「この騒ぎだし、ちょっと間に合わないかも。っていうか、イチゴ狩りは中止になるよね」


「しかたないですの。ノノさんへのお土産は、農園の方が摘んだのを買っていきますの」


 * * *


 少し離れた別のビニールハウスの陰で、黒衣の玉子仮面は小柄な女の子の話を聞いていた。


「……春休みが終わったら、ウチは転校して別の県の中学校に通うことになるんだ」


 女の子は顔を伏せたままでつぶやく。


「……ずっと不安で不安で、怖くて怖くて。……ウチと転校先のみんなの話が合わなかったら、どうしよう。趣味が合わなかったらどうしよう。……前の学校へ帰れって言われたらどうしようって」


「ふむ。不思議な(ゆかり)があるものだな。君の転校先が宇須美中学であるか。ならば案ずることはないぞ。その中学の生徒たちと趣味が合うことをすればいい」


 仮面男は駄菓子の『イチゴ型チョコ』の小箱を取り出し、女の子に差し出した。


「君にあげるよ。これを食べて元気を出すがいい。駄菓子には人を幸せにする力があるんだ」


 女の子がチョコを受け取ると、仮面男は一歩下がった。

そしてどこからか黒い玉子を出し、頭上に掲げた。


挿絵(By みてみん)


「宇須美町のへの字山のふもとに大きな駄菓子屋がある。転校先の新しいクラスメイトと一緒に行ってみるといい。みんなで楽しみを分かち合えるはずだ。ではさらばだ。君の人生に幸あれっ!」


 仮面男の右手の玉子が割れて、黒い煙がその姿を覆い隠した。

煙が晴れたそこには、もういなくなっていた。


 女の子は、しばらく仮面男が消えたあとを見ていた。

そして小箱からチョコを取り出して、口に運んだ。


 * * *


 宇須美町の北側に大きく広がるへの字山。

その名の通り、空から見ると平仮名の『へ』の形になっている。

山のふもとに、町で一番大きな駄菓子屋『射手舞堂(いてまうどう)』がある。


 駄菓子屋の児玉零司に、海堂ノノが話しかけていた。

ノノは小柄な少女を連れている。


「それでよう。こいつ、今日からわたしのクラスに来た転校生。駄菓子に興味があるっていうから、連れてきてやったぜ」


「……よ、よろしくお願いします。ウチ、原科(はらしな)ヨツバっていいます」


 小さな声でペコリを頭をさげる少女を見て、先に店に来ていたイオリとサキが顔を見合わせた。


「こっちこそよろしくー。ヨツバちゃん」


「よろしくお願いしますの。ヨツバさん」


 中学生四人組となって、お菓子を物色している。

ノノはヨツバをつれて、チョコレートのコーナーに案内した。

そこでノノはタバコ型のチョコ、ヨツバはイチゴ型チョコを見ているようだ。

イオリとサキは隣のキャンディのコーナーで飴餅を選んでいる。


 急にヨツバが「キャッ」と悲鳴をあげた。

イオリとサキがそちらを見ると、『ぴょんぴょんカエル』のオモチャを持って笑っているノノがいた。

カエルのオモチャにチューブが付いており、先端の空気袋を押すと跳ねるのだ。


「ちょっとノノちゃん。ヨツバちゃんを驚かしたらかわいそうだよー」


「……びっくりした。カエルのオモチャだったんだ。あ、ウチにもやらせて」


 ヨツバもそのオモチャを受け取って、ぴょんぴょんと跳ねさせてみた。


「いやあ、わりぃわりぃ。お詫びにいいものを聞かせてやるよ。なぁ、零司さん。いつものギター、ヨツバにもきかせてやってくれよ。いいだろ?」


「ノノさん、お詫びって……児玉さんにやらせるんですの?」


 彼女たちのやりとりを見て、零司はくすっと笑う。


「ま、うちの店のオモチャで驚かせたお詫びってことかもね。それでは一曲ひいてみようか」


「わ、待ってました! 零司くんのギター」


 イオリが嬉しそうに手を叩いた。

零司はレジの横からミニギターをとり出して、演奏を始めた。


  同じつばさの鳥たちは

  みんな仲間だ友達さ

  ブタもネズミもシマリスも

  みんななかよく友達さ


  違う姿の友達も

  みんな仲良く遊ぶのさ

  キツネもクマもオオカミも

  ぼくもみんなと友達さ


 零司がギターの演奏を終えると、イオリ、ノノ、サキに交じって、ヨツバも楽しそうに笑いながら拍手をしていた。


次回、『第7話 妖魔トカゲ怪人のうごめく尻尾』、自分に自信を持てないものに幸あれっ。


零司くんの歌うマザーグース"Birds of a feather flock together"の原詩はこちらです。


Birds of a feather flock together,

And so will pigs and swine;

Rats and mice will have their choice,

And so will I have mine.


零司くんがアレンジしすぎてて、歌詞の意味がだいぶ変わってます。

原詩は、ことわざの『同じ穴のムジナ』とか『類は友を呼ぶ』に近いでしょうか。

著作権の切れているもしもしかめよのフシで歌えるかも


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― 新着の感想 ―
[一言] ヨツバ……ま、まさかあの財閥の(違 それにしても、まさかイチゴに擬態しての登場とは!! しかも迷子になっていたとは!! これまでとは違うパティーンの登場で面白かったです!!
[一言] モルモットのぬいぐるみはやっぱり生きていたんですね! 一話完結なので自分のペースで読むことができて楽しいです!
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