29部目
エピローグ
時間を戻る実験は、成功か失敗か、まったく判断が付かなかった。
結果としては、こちらとしては失敗、博士から見たら成功なんだろう。
時間を元に戻る方法が分からず、自分達はこの時間の中で暮らすことにした。
博士が書いた論文が公開されていたが、それを再び行うためには、種々雑多のものが足りなかった。
自分は、公舎に住むことになったが、その中でも小隊は変わらなかった。
香は、本人の家で暮らすことになった。
いまなお語られている、唯一の不老不死者として生きている。
ついさっきも、5人目と結婚するとか言って電話をかけてきた。
相手を看取ることが、私の使命だって言うことらしい。
一方のこちらも結婚した。
イサキ・ミカガイ少佐と金川崎大尉、自分とパ・スケース少尉が互いに結婚し、残されたキガイ・フラン中尉と西海平八郎中尉は、大学の同僚と結婚した。
「…ということで、今日の授業はおしまいだ。宿題として、レポート5枚以上に現代の軍についての簡単な考察をまとめること。レポート用紙は教務課にあるものを使ってくれ。では」
自分は、授業終了のベルがなると同時にそういって、講義室を後にした。
教鞭をとりだしてから半年ばかりが経つ。
妹は、元気にやっているし、イサキ少佐と金川大尉も新しい家で住んでいる。
キガイ・フラン中尉と西海平八郎中尉の二人も、しっかりと自立しているようだ。
それでも、彼らは自分たちの家を中心にして行動をしているようで、しょっちゅう遊びに来る。
だが、この日の家には、自分とスケース少尉しかいなかった。
「ただいまっと…ああ、もう帰ってきていたのか」
「お帰りなさい。そうよ、講義が4限目までしかなかったから早めに帰れたの」
会話の中から、自然に敬語が取れ、いわゆ対等な関係になっていた。
それは、全員がそうであった。
自分は、家に上がると着替えた。
「今日はどうだった」
「いつもと変わらないわよ。相変わらず、寝る生徒や話す生徒や真剣みにかけるのよ。誰であっても」
「ハハハ、それはいつの時代も同じだから大丈夫だろ」
着替え終わると、冷蔵庫の中からビールを取り出してソファーに座ってから開けた。
「ねえ、今日は誰も帰ってこない予定だし…」
スケースは、自分のすぐ横に座った。
「…そういや、何で自分を選んだんだ。男なら他にもいただろうに」
ビールを一口飲んでから、聞いてみた。
「えっと、なんとなく…かな?」
「なんとなくって…そんな理由かよ」
自分は、あきれるやら、おどろくやらで何もいえなくなった。
「私と合いそうな気がしたから、思い切って付き合おうと思ったの。ただそれだけよ」
スケースは体を密着させてくる。
無意識か、意識的かは判断が付かない。
ただ、自分は恥ずかしくなった。
「…ま、いいか」
自分はなんとなくどうでもいいような気がして、一気にビールを飲み干した。