28部目
地球宙域に到着して、そんな雑談が終わってから、自分達は本格的な調査に入った。
数時間の間、その事に忙殺された結果、さまざまなことが分かってきた。
たいていはレポートに書かれていることだったが、それ以外のものも含まれていた。
「えっと…では、第1回船内会議を開きます。司会はイサキ名誉元帥、書記は金川元帥とします。では、何か分かったことは?」
イサキ少佐は、すぐに聞く。
自分が最初に発言する。
「まず、ロボットによる探査ですが、周辺の破片は、確かに太陽系に存在していたもので間違いないです。ただ…」
そのことを言っていいのか分からずに、口ごもる。
イサキ少佐は続けるように言った。
「ただ、なんだ」
「ただ、この破片の中に、不可思議なものが混じっているのです。どうやら、縮退炉の部品のようなのですが…」
「だが?」
さらに突っ込んでくる。
他の人たちも、自分の報告を真剣に聞いている。
覚悟を決める。
「この破片を炭素測定器にかけてみた結果、196年前のものだと分かりました。日付など、詳細は分かりませんが船によって運ばれてきたと思うのが妥当でしょう。博士が、当時そこで作っていたと思われます」
自分は報告を、そうまとめた。
「…博士が、か」
イサキ少佐はぼやいた。
「博士については、すでに死んでしまっているから詳しい話が聞けない…ほかには?」
ギガルテ大尉が話し出す。
「永嶋大尉が言っていたように、観測した分の破片は196年前のものと分かっています。おそらくは、縮退炉のものがそのまま破壊されて出来たものだろうという見識も一致します」
「…新情報は無いのか?」
イサキ少佐は机を指でこつこつ叩いている。
「ひとつだけあります。これらの破片は、一見無秩序に並んでいるように見えますが、実際は、太陽があった位置を中心に回っているのです。おそらく、ブラックホールはその位置に収まっているのでしょう」
「電磁波の説明はどうするんだ」
身を乗り出しながら、たずねる。
「ブラックホールの構造は、ご承知と思います。物質がブラックホールに落ちる際、強大な電磁波を発生することがわかっています。現在発見されている破片を全てあわせても、もともとの質量の100万分の1も残っていません」
「その差が、ブラックホールに一気になだれ込んだって言うことなのか」
「そう考えます。その結果が、地球ごとの消滅です」
全員の頭がオーバーヒートしそうになってきたとき、結論が出た。
「…今じゃ、全てが仮説だが、それだったらどうにか説明が出来るな」
イサキ少佐がひざを軽く叩いた。
「つまり、縮退炉として使われているブラックホールが、何かの弾みでぶっ飛んだということだな」
「博士に聞けたら、どれだけいいか…」
自分はつぶやいた。
周りは、静かにうなづいた。
太陽の方向にカメラを向けると、真っ黒な物体が観測できた。
「アレがブラックホール本体だ」
「なぜ、今まで気づかなかったのでしょう」
自分がモニターに表示させる画像を見ながら、スケース少尉が聞いた。
「こっちのほうに、探査機を向けてなかったから、だな。重力異常もそのせいで観測できなかったのだろう」
冷静に言った。
「なるほど…」
イサキ少佐が、感心したように言う。
「では、結論をまとめますよ」
モニターの電源を切って、一同の方を向く。
「地球…正確には、冥王星以内の全ての惑星が木っ端になったのは、近距離はブラックホールが直接的な原因、遠距離はその結果発生した破片による破壊、ということでいいんでしょうか」
「十分だろうな」
イサキ少佐は納得するようにうなづく。
こうして、情報を集めて討議したらそのような結果になったので、船は人工惑星に戻ることになった。
戻ると、すぐに軍団長に報告をした。
「…ということです」
レポートを見せながら、イサキ少佐は言った。
「分かりました。お疲れ様です」
労をねぎらう。
そして、一言言った。
「ところで、これからどうする予定なんですか?」
「とりあえず、のんびり働きますよ。何でも屋みたいなことでもしながら」
正直に言うと、イサキ少佐が言ったことは本当ではない。
自分達の年金は、かなり貯まっているはずなので、それを崩していけば働かなくても一生遊んで暮らせるのだ。
「じゃあ、軍で働くのはどうでしょう。軍務大学校で、ちょうど教授の数が足りないんですよ」
軍団長が、指を組みながら話す。
一瞬考えてから、これからのことを考えると、そのようなことも必要かと思い、目配せを互いに交わす。
「分かりました。教鞭をとらせていただきます」
一礼して、イサキ少佐が言った。
妹を除いて、全員が軍務大学校へ教授として入った。