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20部目

案内された部屋は、かなり広い部屋だったが、何も無かった。

「えっと、冷蔵庫ー、洗濯機ー、テレビー、ベッドにソファーにカーペット。テーブルはあるけど、他はないっと」

金川大尉が一つ一つを確認しながら部屋をぐるりと見る。

15畳ほどのリビング兼玄関、隣接する形であるキッチンとお風呂とトイレ、おまけのように付け足されたような格好のベッドルーム。

「あと、食料と水が無いんだな…」

自分は冷蔵庫を確認しながら言った。

「じゃあ、ご飯はどうしようか。誰かに頼む?」

金川大尉が、早速ソファーに座っていた。

「そうもいかないんじゃないか?いろいろ忙しそうだしな」

イサキ少佐がベッドルームから出てきた。

「とりあえず、全員がベッドで寝れるように配置されてはいるな。ツインベッドだけどな」

伸びをしてから続ける。

「さってとー。とにかく、今は寝ておこうか。明日からはまた忙しくなりそうだ」

イサキ少佐に言われるように、持ってきてもらった荷物の中から私服に着替え、そのまま眠った。


翌日、日が出るころに自分は起きた。

すでにイサキ少佐はリビングに出ていた。

「おはようございます…」

ここ最近の疲れが出ていながらも、きっかり定時におきてしまう自分の体が恨めしい。

さらに、二度寝も出来ない。

そのことは、イサキ少佐も同じことらしい。

「ああ、おはよう」

なれているイサキ少佐は、はっきりと起きているようだ。

「珍しいな、寝不足か?」

「…ええ、ちょっと考え事をしていまして…」

このままここで暮らすのも悪くない…だが、98年間の空白はいかんともし難い。

その間に、自分が必要とされなくなった可能性も大いにある。

ロボットの社会進出も著しくなっているこの時代では、自分のような技術者は、ほとんど用なしのようなものだ。

そう結論付けたのは、3時を少し回ったころだった。

それから眠ったのだが、起きたのは…さっき言ったとおりだった。

「まあ、ゆっくりとしたらいいさ。計算は今日にも結果が出るだろう…」

イサキ少佐は、ソファーに深く腰を下ろす。

「ここ最近のスーパーコンピューターの性能って、どれぐらいのものなんでしょうね」

「さあ、な。俺らの頭よりもすごいんじゃないか?」

「それって、すでにコンピューターとかって言うレベルじゃないですよ」

いつの間に起きたのか、ギガルテ大尉が自分のすぐ後ろに立っている。

「おはよう」

「おはようございます」

ギガルテ大尉とともに、自分もソファーに座る。

「さて、そんなことよりも、元の時間に戻れるかどうかが分からないということが問題だ」

「技術的に仕方が無いことだと思います。いまだに確立されていない技術なんですから。時間を飛び越えるだけでもすごいことと受け止めないと…」

自分は、イサキ少佐に言った。

「そうか…」

ぼんやりと、天井を見ている。

何を思い出そうとしているのだろうか。

自分には判断がつかない。


さらに時間が経つと、まだ寝ていた人たちも起きてきた。

「おはよーござますー…」

金川大尉が、ボーっとした顔で歩いてきた。

「お前ら全員、顔洗って来い!」

イサキ少佐は洗面台の方向を指差していった。

「ふぁーい…」

あくびをしながら歩いていく。


すっきりした顔をして出てきたのは、それから10分もかからなかった。

「で、今何時なんですか?」

はっきりとなった頭でスケース少尉が聞く。

それと同時に、自分のすぐ横に座る。

「午前8時だな」

壁にかかっている時計を確認する。

向こうでは、こちらをニヨニヨ見ている人たちがいる。

「どうしました?」

イサキ少佐と金川大尉の二人だった。

「いや、いつの間にそんなに仲良くなったのかなって思って」

「…まあ、いろいろと…」

しどろもどろで答えると、そこを鋭く追及される。

その時、誰かが部屋をノックした。


「失礼します。準備が整いましたので、軍団長室にお越しいただけますでしょうか」

「分かりました」

すぐに軍服に着替えて扉を開けると、若い軍曹がいた。

「ご案内いたします」

淡々と職務をこなす、そのような感じを受けた。

だが、何も言わずに自分達は彼についていった。


軍団長室では、昨日会った博士が紙を持って待っていた。

「やあ、またあったね」

「計算の結果が出たということでよろしいでしょうか」

イサキ少佐は博士に聞いた。

「うん、その通りだよ。98年間の長期間にわたる時間飛行は想定外で、計算がややこしかったんだ。でも、どうにか出た」

「して、その質量は?」

博士はイサキ少佐の質問にすぐには答える気が無いようだったが、無理にでも答えさせようとするその目に負けた。

「…時間を飛び越えるために必要なものは、質量、向き、そして重力波だ。重力波に乗って向きを調整しつつ、質量ある物体を時間の直線に乗せる」

「どれだけの質量が必要なんでしょうか」

プリントに目を落としながら答える。

「約80Gtほどいるな。大体大型戦艦1隻分に匹敵する重さになる」

「80ギガトン…」

簡単に説明することが出来ないほどの超巨大質量だということだけは理解できた。

ただ、それ以上の理解は進まない。

それほどのものだということだけは分かった。

「同じ質量のものが必要ということでしたね。どれほどの誤差が許されるのですか?」

イサキ少佐は続けて博士に尋ねる。

「最大で1tほどでしょう。差は小さいほどよろしいですが、許容誤差をあえてあげるならば、それほどになるものと予想しますね」

一拍置いてから続ける。

「すでに軍が動いてくれているので、後30分ほどしたら連絡が入る手はずになっているから、それまでの間、ここで待っているしかないさ」

博士はそういって、近くにあったつばが広く取られている、麦藁帽子みたいな布製の帽子を顔にかけて、寝始めた。

自分達は、その間、何を持っていくべきかをいろいろと話しあった。

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