天才は学園に行ってみる
「お兄ちゃん今日はお仕事お休みなの?」
「いや、今日は少し遅く出る予定なんだ。」
仕事へ行く様子がない春人に対し、美優が首を傾げて聞いた。
「じゃあ、今日の朝はお兄ちゃんとゆっくりできるね!」
「そうだな」
ニコニコと嬉しそうに笑う美優に対し、微笑む春人。
「おはよぉ、、、」
「おはよう、雪菜」
寝ぼけ眼でリビングに入ってきたのはつい先ほど起きた雪菜である。
「もっと早起きしなさい雪菜!」
「、、、、無理」
雪菜は低血圧気味であり、朝はめっぽう弱いのだ。今日だけでなく毎日こんな感じである。
「でも、雪菜は昔より早く起きれるようになったね。」
「うん、、、、って兄さんお仕事は?」
「今日は少し遅めに出かけるんだ。」
「そうなんだ、、、じゃあ、もっと早起きすれば良かった。」
早く起きれば春人と朝の時間をもっと一緒に過ごせていたのにというニュアンスを込めて雪菜は残念そうに言った。
「ふふーん!私は雪菜が起きてくるまでお兄ちゃんを独占できたし、今日だけは寝坊助な雪菜に感謝しないとね。」
「むぅ、、、、」
「早起きは三文の徳なんだから!」
(俺といられることが徳なのか?)
疑問に感じた春人だったが、嬉しそうに顔を綻ばせる。
「ほら、早く身支度を整えきて!朝ご飯にするよ。」
そう言われた雪菜は身支度を済ませに行き、久々の3人での朝食になったのだった。
*
「行ってきます!」
「行ってくる、、、」
「2人ともいってらっしゃい」
朝食を食べ終えた後、2人は登校する時間がやってきた。元気に出て行く美優と無気力に出て行く雪菜。
春人はそんな対照的な2人の様子にフフッと笑ってしまう。
2人が出て行ったことを確認すると、、、、
(よし、俺も準備するか)
そして、春人はある所へ電話をかけたのだった。
*
(ここが2人の通っている学校か、、、)
都立美穂野学園。都内でも偏差値トップを誇る都内屈指の有名高校だ。敷地はとても広々としていて、校舎もとても綺麗で知らない人は大学と勘違いしてしまうかもしれない。
春人自身も知ってはいたが、来ること自体は初めてだった。
(それじゃあ、行くか。)
現在の時刻は昼前。丁度4限目を受けている時だろうか。
ちなみに秘書の皐月に今日の仕事はすべてキャンセルの旨を伝えてある。
そして、事前にこの高校の学園長に個人的に電話し、自由に学校見学する許可を得た。何故、学校長と知り合いなのかという話だが、それは様々なバイプがある春人だからだ。教育関係者に知り合いがいてもおかしくはない。
春人は2人の在籍しているクラスである2-Aと2-C、両方のクラスがある校舎の2階に行くことにした。
授業中だからか、道中人通りはなく誰1人として会うことはなく目的のところまで辿りつく。
春人はどちらのクラスに先に行くか考えた末、先に美優が在籍する2-Aから行くことに決めた。
廊下にはそれぞれの教室を表す表示板があるので、迷うことなく辿りつく。
春人は後ろ側のドア付近に近づいてそっと中の様子を見た。
英語の授業だろうか、黒板には英文が書かれている。黒板の前には中年くらいの男性教師が立っており、英文を読みあげていた。
(美優はどこかな、、、、)
視線を動かし続けたところ、、、、、
(いた!)
窓側の後ろから2番目の位置に座っていた美優。
真剣に授業に取り組んでおり、真面目にノートを取っているのが伺える。
まるで美優の性格を表しているかのような授業態度だった。
(ん、、、?)
美優の事を見ているとある事に気づく。
(美優のこと見てるな、、、)
クラスの男子生徒数名がチラチラと美優のことを隠れ見るかのように視線を送っているのだ。
当の本人である美優は集中しているからか、気づいている様子はないが、普通なら気付いてもおかしくない視線の数だ。
ノートを取るときに視線を妨げるように垂れる髪の毛を耳にかける仕草をすると、男子生徒達は見惚れるように固まっている。
昼休みが始まったらそれとなく2人にバレないように2人の交友関係や学園での様子を探ろうと思っていた。
その前にどうせなら貴重な妹達の授業風景も見ておこうかと思って立ち寄ったのだが、、、、、
(不安だ、、、、、)
この様子を見るに美優の男子生徒からの人気は一目瞭然だ。多分、告白されたのも1回だけではないはずだ。
(これは気を引き締めなくては。)
そのあと、数分授業を見たあと雪菜が在籍する2-Cに向かったのだった。
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