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**闇落ち白狐のあやかし保育園  作者: うちはとはつん
第2章 中核都市ベイルフ
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095 らくーちは、きらって、ない


「うわー……」


パーナは自分の語る言葉で感情が高ぶってしまい、もう泣き顔がくしゃくしゃだ。


いつもこの、テンションなのだろうか?

夕凪はパーナが何を喋っているのか、全く理解できなかった。


それでも話し続けるパーナに、夕凪は苛立ってしまう。


ただ心象で、これが好意からというのは感じられるのだ。

しかし、だ。


――なんだコイツ、きもちわるいっ!


夕凪はパーナから何か恐ろしいものを感じ、ドン引きした。

その気持ちが思いのほか強く出てしまい、パーナに伝わってしまう。


「あ……」


パーナはくわっと目を見開き、みるみる顔が青くなっていった。


「ああっ! 私を嫌わないで下さいっ。

お願いします、嫌わないで下さいっ。

ああ、どうしようっ、どうしたら良いのっ!?」


パーナは半狂乱になり、子供のように泣き始めてしまった。


「えーっ、そんなことないよっ。うーなぎは……うーん」


夕凪は慌てて否定しようとするが、正直いって好きではないので、言葉がつまってしまう。


もうダイレクトに伝わっているので、今さら無駄だ。


困った夕凪は、

そういえば、らくーちは、どうだったか、と思い返す。


「わかったよー、ちょっと目を、つむってみて」


夕凪が、何かやるつもりだ。

それが何なのか分からないが、ヤークトは素直に目を瞑った。


パーナもしゃくり上げながら、シワが寄るほど強く目を瞑る。

もうこれ以上、嫌われたくないのである。


夕凪はパーナのことを、頭がおかしいと確信するが、それと同時に大真面目なのだとも感じた。


だから夕凪は、夕凪なりにちゃんと答えようとする。


「たぶん、らくーちは、きらってないよ」


夕凪はそう言って、二人へ自分の心象を送る。

森で会った、オレンジ髪の獣娘のことを――


楽市が抱き起し、ポーションを手渡すところ。


その獣娘に取り憑いて、ポーションの中身を知り本気で怒ったこと。


沢で、獣娘の体を治そうとしたこと。


少し態度の硬かった二人が次第にうち解けあい、夢中になってお喋りしていたこと。


そして獣娘が帰るとき、帰り道を心配していたこと。

夕凪が楽市の隣で見ていたことを、ヤークトとパーナに送る。


「どう? らくーちは、きらって、ないでしょ」


夕凪がそう問いかけると、ヤークトとパーナの体が震えだした。


「え?」


見ると、二人とも泣いている。

パーナは初めからだが、ヤークトも目に涙を溜めていた。


「なんで!?」


夕凪は、困惑してしまう。

ここまで完全にかやの外であるクローサも、心配して話しかけているが、大騒音で聞こえない。


ヤークトがうつむくと、溜まっていた涙がひとしずく落ちる。


「これは、本当のことなのでしょうか……」

「え、うんっ」


夕凪はヤークトに聞かれて、次に何を言われるのか身構えてしまう。

ヤークトは、ぽつりぽつりと語り出した。


「あたしたちは生まれた時からずっと、エルフ様に育ててもらいました。

エルフ様があたしたちの主です。

 

何千年にも渡って、あたしたちは育てて頂いたのです。

だから不満など、口にすべきではありません。

 

けれど、もし……

もし同じ獣の、ラクーチ様があたしたちの主だったならば、


見させて頂いたように、

触れ合って頂き、

本気で心配して下さり、

怒って頂けるのでしょうか?」


「えっ??」


夕凪の頭の中に、?マークが並んでしまう。


「おこって、ほしいの!?」

「はい、主があたしたちのためと思って、怒って下さるその気持ちが嬉しいのです」


夕凪はちょっと分からない所もあったが、パーナに対してのような感情を抱かなかった。


夕凪が意味を飲み込めるように、ゆっくりと話してくれたからだろう。


「あるじって、なに?」

「そうですね……ウーナギ様にとっての、ラクーチ様のことです」


「えっ、やっぱり、分かんない。

何でらくーちに、おこられたら、うれしいのっ!?」

「もし許されるのなら、あたしたちは……」


そこまで話したとき、少し離れたところにある別の城壁塔が、轟音とともに都市のある内側へ吹き飛んだ。


取っ組み合ったままの角つきと四足獣が、城壁塔を砕き、都市へなだれ込んできたのだ。


もう一匹の四足獣も、城壁を突き破って入ってくる。


「ふああああっ」

「あああああっ」


夕凪とヤークトはあっけに取られて、粉塵を巻き上げる三体を見る。

そこへ城壁塔から降りてきた霧乃が、夕凪の肩に手をかけ声をかけた。


「こんなとこに、いたの、うーなぎっ!

何か、きょうのトリクミ、いつもとちがうっ。

ちょっと、やばいかもっ」


三体は街を破壊しながら、戦い続けている。


その戦いはさながら暴風雨のようであり、繰り出す一撃ごとに、周りの家屋を巻き込み吹き飛ばしていた。

夕凪が目を丸くする。


「がしゃって、あんなに、動けたっけ?」

 

ここに来るまでの山越えジャンプといい、今日のがしゃは動きが機敏すぎる。


「分かんない。

でもちょっと、はなれた方が、いいかも」


逃げようと言った霧乃に、夕凪がまったをかける。


「まった、この三人も、つれてくっ」

「だれ、このひとたち?」


「いいから早く、もってっ」

「う、うんっ」


夕凪は上から覗く朱儀たちへ、手招きし声をかけた。


「早く、もってっ」


霧乃がパーナを、

朱儀がクローサを、

夕凪がヤークトを担ぎ走り出そうとした時、ふと足元が陰る。


何かと思い、見上げる夕凪たち。

すると巨大幽鬼(ゴースト)が黒く濁りながら広がり、ベイルフ全体を覆いつくそうとしていた――







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