表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
**闇落ち白狐のあやかし保育園  作者: うちはとはつん
第2章 中核都市ベイルフ
83/683

083 エルダーリッチの妄想お手紙


低位のスケルトン、ゾンビ、幽鬼などが集まれば、彼らより溢れ出る憎悪が、地中に染み込む。


それが地下深く眠る、古代の戦人(いくさびと)に絡みついていく。

何十層も絡みつくころには、その部分がぬかるみとなり戦人が這いあがってくる。

 

その姿は、生者を絶対に殺すという意思に溢れていた。


憎悪が死者に贈る、新たな甲冑や武器は、とても禍々しいフォルムをしている。

触れるものを切り裂くように、至る所が鋭利にとがっているのだ。


これが低位アンデッドから、新たに強い中位アンデッドが、生まれるプロセスである。


その中位アンデッドが、スペックを生かし更に北へ推し進む。

しかしある地点で、ピタリと進むのを止めてしまう。


ここら辺は低位アンデッドと、同じ理屈なのだろう。

これ以上進んだらヤバイかもと、防衛本能が働くのだ。


山頂から眺めると、外側に低位アンデッドの層、内側に中位アンデッドの層が、ハッキリと別れているのを視認できる。


山間部なのでアンデッドコロニー同士は、分断されている。


しかしこれらを更に高い位置から眺めれば、北の一点を中心にした、巨大な二重リングが確認できるだろう。


「随分増えたなあ、中位アンデッド」


イースが山頂で双眼鏡を覗きながら、うんざりした声をだす。


「増えただけじゃねえよ、あいつら何してんの?」


サンフィルドの眼下にある盆地へ、周りの中位アンデッドが、どんどん集まって来ていた。


イースたちが早朝から髪をおだんごにして、アンデッドコロニーを観察していると、発生した中位アンデッドたちが、移動していくのを目撃する。


どこへ行くのかと思い付いていくと、少し離れた場所にある盆地へ、中位アンデッドが集まっていた。


イースたちが付いていった中位アンデッドだけでなく、他の場所からも集まって来ている。

一体なにをしているのか?


「何してるか分からないけどよ、分かることはあるぜ」

「なんだい?」


「あれ絶対、俺たち生きてる奴にとって、ろくなもんじゃねえよ」


「あー、それは間違いない」

「イース、なー帰ろうぜ」

「いや、それはちょっと……」


イースの安全を確保したがるサンフィルドと、観察したくて、それをのらりくらりと躱すイース。


そのやり取りの横で、リールーは黙々と双眼鏡で眺めていた。


不安から口数が多くなる男子とは違い、リールーは黙して熱するのだ。

サンフィルドの提案を躱すためなのか、イースはふと思い出した事を話し出す。


「ねえ、エルダーリッチの書簡って知っているかい?」

「なんだよ、それ?」

「話して」


黙して熱するリールーも、食いついてきた。


「大昔にエルダーリッチが、他のエルダーリッチに当てた手紙さ。


そこにはアンデッド発生の、考察が書かれているんだ。

主題は、中位アンデッドが集まるとどうなるか?」

 

「ふんふん」

「続けて」


「結論からいうと、現実的じゃないって書かれている」

「どういう事だ?」

「続けて」


「中位アンデッドが集まるなんて、地獄でもない限り無理だって書いてあるんだ。


それはもし地上で集まることになったら、たちまち生者が介入して、潰しにかかるからさ。

 

中位アンデッドが集まるには、その前段階で、大量の低位アンデッドが必要になってくる。

もうその時点で、生者どもに潰されるだろうと書かれている」


「あー」

「それだけ?」


「いや、ここからが面白い。

それでも、もし集まれたという仮定で手紙はつづく。


せっかく中位アンデッドが集まるんだから、単純にまた地中から強いアンデッドが、発生するんじゃ面白くないと書いている。


私が考えるに天然のアンデッド発生の上位現象として、天然召喚式が来てほしいと書いている」


「天然召喚式ってなんだよ、聞いたことねえぞ」

「本当にあるの?」


「ないよ彼が作った造語さ、そう言いうのが、あったら良いなっていう願望だね。


そいつで凄いやつを呼び出して、ダークエルフを蹴散らしたいと書いて、手紙は結ばれている」


「なんだよそれ。ただのエルダー妄想お手紙かよ」

「ばかみたい」

「うん、そうなんだよ。でもさ……」


そう言って、イースは眼下に広がる景色を眺めた。


その妄想の第一段階、中位アンデッドのコロニーが目の前にあった。

その視線を察してリールーが言う。


「なによ、その妄想をどっかの神様が、叶えてくれるってわけ?」





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ