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**闇落ち白狐のあやかし保育園  作者: うちはとはつん
第2章 中核都市ベイルフ
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080 北上する五人~更に北上する~


カニポイの旨さは、おやつの域を軽くこえている。


みんなで、三つ、四つ、五つと口に放りこむ内に、小腹が満たされてしまった。


「あ、あれ? ちょっと……うにゅ……」


そう言って霧乃が、腰をおろす。

ちょっと休憩のつもりが、お尻に根が張ったように座り込んでしまう。

少し、眠くなっているのだ。


今までチヒロラに出会えた喜びが、心をカッカとさせて眠くなかったのだが、急にきた。


やはり昨日、夜遅くまで起きていたのが原因だろう。

寝不足のハイな気分が、切れかかっている。


豆福が目をこすりながら、霧乃のそばでコテンとする。

まぶたの落ちかけた夕凪が、霧乃のとなりに座り込んだ。


朱儀は夕凪のひざを枕にして、寝息をたて始めてしまう。


「うーなぎ……ねちゃだめだって、かりでしょ」


霧乃が豆福を引き寄せながら、となりの夕凪に小言をいう。


「きりこそ、ねるなよ、かりだぞー」


夕凪も朱儀を撫でながら、言い返す。


「ねてないし」

「ねてるだろ」


「うーなぎ、目をあけて」

「あけてないし」

「だから、あけて」

「ん?」


霧乃と夕凪が、頭をグラグラさせながら、言い合いをはじめた。


「あの、きりさん? うーなぎさん?」


チヒロラはそんな二人を見て、困ってしまう。

そんなに眠たければ、寝ればいいのに。


チヒロラはそう思うのだが、二人は眠ろうとしない。

二人の狩りへの情熱は、頭がグラグラしたぐらいでは消えないのだ。


そんな二人を見守るチヒロラは、ちっとも眠くなかった。


同じように寝不足のはずだが、ルーティンワークの霧乃たちと違い、全てが初体験なことばかりなのである。


興奮しっぱなしで、全く眠気がおそってこないのだ。

困り果てるチヒロラの目の端に、動くものがあった。


「ん?」


チヒロラがそちらへ振り向くと、沢の反対側に全身白骨のアンデッドが歩いている。


かなり崩壊が進んでおり、歩く度に体の表面が剝離(はくり)して、粉になっていく。

それでも歩みを止めない。


「あ……あの、大丈夫ですか?」


チヒロラがそう語りかけても、アンデッドは反応しなかった。

ただひたすらに、北へ進もうとする。

アンデッドが、木の根に足を取られて転ぶ。


その衝撃で、左の大腿骨が折れてしまった。

上体を起こそうとして、支える両腕の上腕骨も折れる。


「ああっ!」


チヒロラは慌てて沢をわたり、アンデッドを助け起こそうとした。


しかし触れたアンデッドの肩が、ボロボロと泡のように崩れていく。

とうとう、アンデッドに限界が来たようだ。


「ああ……」


チヒロラの目の前で急速な崩壊が始まり、そこに小さな砂の山ができた。


チヒロラは、その砂山をジッと見つめる。

悲しくはなかった。

もう何度も、見慣れた光景だったからだ。


ただ、儚さで心がチクリとする。

チヒロラはそのアンデッドに、お師さまの姿を重ねてしまう。


北への想い。

その想いが目の前のアンデッドと、お師さまを駆り立てる。


少しでもいいから、自分の平気な体を分けてあげられたら良いのに。

チヒロラは、いつもそう思っていた。


「せめて粉だけでも、はかばーに持って行けたら……」

「はかばーに、もっていきたいの?」


後ろから声をかけられ振り向くと、そこに霧乃と夕凪が立っていた。


霧乃は豆福をだっこし、夕凪は朱儀を荷物のように脇へ抱えている。

二人はまだ眠たげで、フラフラしていた。

チヒロラは目を、パチクリして話す。


「はい、せめてそうしたら、この人が喜ぶかなって……」


「ふーん、じゃ行こっか」

「よし、行こう。きこえた、あーぎ?」

「うにゅー」


朱儀が返事をする、どうやら起きているようだ。


三人は少しも迷わず、行くことに決めた。

豆福は熟睡中である。

喜ばれるのは、褒められるのに近い。

だから行く。


こうして五人は、更に北上していくのだった――





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