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闇落ち白狐のあやかし保育園  作者: うちはとはつん
第1章 異界の異物
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063 楽市へ、会いにいく


「えー、うっそだー」

「くすくす」


とても目の前の白くてブニブニしたものが、同じだなんて信じられる訳がない。


「んー、どう言ったらいいんだろう」


楽市が考えあぐねていると、後ろで松永がもそりと動いた。

前足に乗せた顎を上げて、辺りを気にしだす。


少し遅れて霧乃、夕凪、朱儀も、辺りの気配を気にしだした。

楽市だけが、いつも後れてしまう。


「ん、どうしたの?」

「らくーち、あれ……」


夕凪が指さす方向から、鹿に似た獣が近付いてきた。

一頭や二頭ではない。


木々で隠れて分かりづらいが、数多くの気配がする。


「らくーち、こっちも……」


別の方向を、霧乃が指し示した。

そちらからは、豹に似た獣たちが近付いてくる。


他にも、大小様々な種の獣たちが近付いてきた。

見れば、どの獣も傷だらけだ。

 

無理もない。

ストーンゴーレムの襲撃で、必死に逃げていたのだろう。

ただ、首を傾げてしまう所があった。


獣たちの傷が、どれも黒い(にかわ)のようなもので塞がれているのだ。

傷まわりの毛が流れ出た血で固まっており、痛々しい姿である。


しかし、肉が裂けて見えるはずの傷口そのものは、黒い何かで綺麗に塞がれているのだ。


「なにこれ?」

「なんか、かっこいい……」

「!?!?」


霧乃たちが不思議がり、まじまじと見る。

そこに、囲まれたという怯えはない。


三人は野生児のセンスで、そこに敵意がないことを感じ取っていた。

松永もすくりと立つものの、首を傾げるのみである。


楽市は、ふと自分の尻尾を見る。

今は白い自慢の尻尾に戻っており、傷一つ無い。


ふっさふさである。

戦いの最中、自分から出る瘴気が尻尾を修復していたので、驚くことでは無いのかもしれない。


「もしかして……」


豹に似た獣が一匹、楽市へ近付いてきた。全身が傷だらけだ。


獣は楽市の前までくると、口に咥えていた骨を置いてゆっくりと下がっていく。

それをきっかけにして、獣たちが次々に楽市の前までやってきた。


頭上を通る太い根から、これもリスに似た獣が一匹降りてくる。

口に何か詰めているようで、頬袋がパンパンだ。


獣は楽市の前で、口から一つ一つそれを吐き出す。


それはつるりとして黒ずんでおり、もぞもぞと動いていた。

全部で七つ。何か誇らしげだ。


それをしばらく楽市に見せた後、再び全てを頬袋につめこんで頭上へ去っていく。

獣のいた場所には、木の実が一つ残されていた。


鹿に似た獣の母子が、近付いてくる。

母親には眉間に大きな傷があり、子はどこが傷だか分からぬほど黒かった。


母子は恐る恐る鼻先を近付け、楽市の手を舐めて下がっていく。


次々と色々な獣や鳥が、楽市に近付いては下がっていった。

楽市だけにではなく、霧乃、夕凪、朱儀、松永にも多くの獣が集まっている。


骨、

木の実、

何かの葉っぱ、

ピカピカしたガラクタ。


夕凪が、目の前に積み上げられていく物を見て面白がった。


「あははっ、すげー。らくーち、なー」


夕凪が振り返ると、楽市の顔がほうけていた。

何とも言えない、まぬけ顔である。


「らくーち?」


夕凪がもう一度呼ぶと、楽市がつぶやく。


「参拝だ……これ……」





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