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**闇落ち白狐のあやかし保育園  作者: うちはとはつん
第7章 天空のライカ・ユーヴィー
404/683

403 がしゃ髑髏編隊、槍のシャワーを擦り抜ける。


霧乃、夕凪、朱儀の偵察部隊が、ベイルフへと帰還し、

楽市たちへ気に食わぬ黒犬の顔を、心象で見せた時のこと――


シノが、旧世代のダークエルフについて語ってくれる。

その中に、ライカ・ユーヴィー・SSR・ソービシルの話もあった。


ダークエルフがドラゴンの秘術を使い、ダークエルフの姿を捨てたころ、シノは北の辺境で潜伏中である。

したがって正確さに欠ける情報だと、前置きした上で話してくれた。



天空(アルチュード)の異名をもつライカ・ユーヴィーは、属性相転移を使い、“モスマン”というモンスターに取り憑きました。

そしてその力を、我が物としたのです。


モスマンと言う名は、この大陸で聞いたことが無く、恐らく別の大陸で捕獲したモンスターでしょう。

一説にはラク殿と同じく、異世界からきたとも言われています。


モスマンは、体長十五メドル(メートル)ほど。

その姿は、昆虫と黒毛の獣を合わせたような姿で、背中にドラゴンの翼が二対生えているそうです。


翼には目玉模様があり、それを見つめると催眠効果があるとか。

口から糸を吐き、攻撃するという話も聞き及んでおります。


ライカはこのモスマンを、ペットにしているとか……多分ですが。

いやそうではなく、実は別の星々に住む者のペットだとかどうとか……

もうここら辺になると、眉唾な話なのですが。


シノはそう言って、済まなそうに話してくれていた。



    *



モスマンの数、約七〇〇〇。


それらが一斉に目玉模様の翼で舞い、大空にまだら模様を作り上げる。

モスマンは大きな顎を開き、口腔から黒い糸を高速で射出した。


糸は真っ直ぐに伸びていき、空気中で硬質化。

そのまま一本の長大な槍となって、楽市たちへ襲い掛かる。


楽市たちが谷底から飛び出したことにより、真上からだけでなく、様々な角度から全モスマンが大槍を射出し始めた。


更に山々の頂きより、ストーンゴーレムが投擲(とうてき)する、ミスリルの槍も重なる。


七〇〇〇プラス二〇〇〇。

計、毎分九〇〇〇本の黒と銀の大槍が、空中を泳ぐスターゲイジーたちへ、シャワーのように降り注いだ。


通常ならばあっという間に串刺しにされ、針山のようになっているだろう。

しかしスターゲイジーは、投擲される槍を遥かに凌ぐ速さで、槍のシャワーを縫うようにすり抜けていく。


その内の二体の背に巨人楽市が掴まっており、振り落とされないよう必死に背骨を握っていた。

大空を駆け抜ける風圧で、巨人楽市の翼の端や尻尾が、激しく暖簾(のれん)のようにはためいている。


それによる気流の乱れや、巨人楽市の重量を物ともせず、二体のスターゲイジーはくねり突き進んだ。

その周りを五体のスターゲイジーが、護衛機のように飛行する。


霧乃たちは激しく揺れる巨人楽市の中から、すぐ傍を飛ぶスターゲイジーたちを、顔を真っ赤にして見つめた。


全長十五メートルのがしゃが編隊を組み、降り注ぐ槍をすり抜けて高速飛行する様は、たまらなく格好良いのだ。


(すっげー、こいつら速い、カッコイイーっ!)

(ばーかばーかっ、そんなトゲトゲが、がしゃに当たるか、ばーかっ!)

(わーすごーいっ! いーなー、あーぎもがしゃで、とびたいなー)


(ぶあああっ、しゅっしゅっ、しゅっしゅっー!)よけるマネ

(がしゃさんたち、とっても速いですーっ! チヒロラもお外飛びたくなっちゃいましたっ!)

(ぶふんっ!)


パーナとヤークトは座ったまま手を取り合い、すぐ脇でくねる巨大な魚の背骨を見つめ、空を見つめ、地表を見つめた。


上空ではまだら模様が、まるで一つの生物のように蠢き、地表では山々が流れるように過ぎ去っていく。

その地上から空までをつなぐ空間いっぱいに、キラキラと星が瞬いていた。


それがロマンティックなものではなく、自分たちを殺すため、一つ一つが陽光を反射して飛んでくる槍だと思うと、顔が引きつってしまう。


(ヤークト……いつも思うけど凄い光景だよね……ごくりっ)

(うん……凄い、何ていうかすっごい……)


楽市も厳しい目つきで飛来する槍を見つめ、巨人楽市が掴まるスターゲイジーたちへ、瘴気を通して指示をだす。


(うん、このまま飛び続けて)

何とか、先に行ったがしゃたちに合流――


ガクッ、ガクガクンッ


楽市が言い終わらぬうちに、掴まる二体のスターゲイジーから奇妙な振動が伝わり、急に失速し始める。


(どうしたのっ!? ああっまさかっ!)


高速で飛び続けたために、スターゲイジーが魔力切れを起こしかけていた。

楽市は直ぐに理解し、顔が青ざめる。

動きが鈍り、飛来する槍が骨の体にかすり始めた。


(ちょっと待って、今すぐにっ!)


楽市は慌てて、二体へ瘴気を注入する。

急速充電のようにスターゲイジーの中で魔力がみなぎり、魚たちは軽く頭をふって再び素早く泳ぎ出す。


ホッとしたのも束の間、霧乃たちの叫び声が上がった。


(らくーち、がしゃがーっ!)

(わー、よけろーっ、やめろーっ!)

(どうしよ、どうしよーっ!)

(ぶああっ、やーめーてーっ!)

(がしゃさん、みんな落っこっちゃいましたーっ!)



挿絵(By みてみん)

https://36972.mitemin.net/i594474/


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