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闇落ち白狐のあやかし保育園  作者: うちはとはつん
第3章 カルウィズ天領地
188/683

188 白いドラゴン、楽市の肌をガン見する。


白いドラゴンが、巨人楽市をガン見する。


今度は去らずに、間近で見るつもりらしい。

それを受けて楽市は思う。


女子の肌を遠慮もなくガン見するのは、如何なものか!?


そこは遠慮しろよと、楽市の羞恥心が悲鳴を上げていた。

たとえ種族が違うとしても、高度な知性を持つならば察してくれよ。

楽市はそう考える。


楽市は巨人楽市の色々な所を隠したいが、そうも行かなかった。

心象内で霧乃たちが、楽市をガン見しているからだ。


(ぽろんして……)

(うっ)

 

楽市がまだ何も言っていないのに、豆福が先回りしてつぶやいた。


豆福は植物系の妖しではあるが、姉たちにガッツリ影響を受けて、植物の子らしからぬ、かなりアクティブな性格に育っている。

 

楽市の行動を先読みしてつぶやくとは、中々の観察眼だ。

さすが獣と鬼の姉三人に、野生児(ハンター)として鍛えられているだけの事はある。


その霧乃、夕凪、朱儀の三人は、別の意味で楽市をガン見していた。

三人の中で“ヌルヌル階段”を行くのは、既に決定事項となっている。


異論は認めない。

けれどその前に“けっかい”なるものを、何とかしなければならないのだ。


(ヌルヌルは、きりたちに、まかせてっ!)

(うんうんっ)

(そーそーっ)


霧乃が力強く言うと、夕凪と朱儀もこれまた力強くうなずいた。


――ヌルヌル階段は任せろ。

だが結界は良く分かんないから、楽市が考えろっ


三人の目ヂカラが暗にそう言って、指示を待っている。


(はあー)


楽市はその期待に応えるため、空を見上げた。

次に近くでそびえる、巨大な黒壁を見つめる。


(外側でガンガン雷を落としていたくせに、こっちへ入った途端落としてこないのは、上に結界があるせいか……

 

そういえば境内の気配も、内側に入ったら随分濃くなったよね。

空と壁で、境内を隔離かあ……)


楽市は暫く壁を眺めて、ふと気付く。


(あれ? 上に結界があって、下に壁。

それじゃあ、魚がしゃは何処から入ったの?)


楽市たちが穴を掘って突入する前から、魚がしゃはバラバラになって、コケの野原に転がっていた。


(……ねえ、霧乃、夕凪。

この壁に、どこか穴とか空いてないかな?

朱儀の空けたやつじゃなくてさ)


楽市が周りを見ても、霧が濃くて何も分からない。

そろそろ、日も沈みかけている。

日照量の少ない霧の谷では、もうかなり暗いのだった。


楽市から指示がでて、霧乃と夕凪の顔がパッと輝く。


(まかしてっ! じゃあらくーち、黒いのだして、すぐみつけるっ!)

(パッてだせ、パでいいぞっ!)


(ああ、そうか……うんと、どうしようかな)


楽市はこの地が境内だと知った後は、瘴気をまき散らすことに、強い抵抗を覚えてしまう。

できるだけダメージを、負わせたくないのだ。


散々暴れといて今更な気もするが、楽市の心は揺れる。

少し考えて瘴気を全方位ではなく、壁側だけへ当てることにした。


(壁の方だけでいい? パッと一瞬だけ)

(だいじょーぶ、いけいけ)

(はやくだせ)


(それじゃあ行くよ、いっせーのー、せっ!)


楽市から瘴気のフレアが爆発的に膨れ上がり、すぐに収まる。

瞬間的に放出した瘴気は、指向性をもち壁側だけに叩き付けられた。

 

霧乃と夕凪は、五感全てを楽市と連結してフル稼働し、瘴気の動きをトレースする。

瘴気は壁を透過しながらも、溢れた流れが壁に沿って薄く広がっていった。


朱儀の空けた穴に瘴気が入り込み、穴の中でステイしている七体の巨大スケルトンが、狭いスペースでギュッと固まっているのが分かる。

 

まるで巣穴でジッとする、小動物のようだ。

ちょっとカワイイ。

二人はニヤニヤしながらも、トレースは怠らない。


すると巣穴とは反対側に広がる瘴気から、霧乃と夕凪の感覚にヒットするものがあった。

綺麗にくり抜かれた六つの穴に、瘴気が入り込んでいく。


(らくーち、あった、こっちーっ!)

(上の、ほーだぞ、らくーちっ!)


霧乃と夕凪の弾む声と共に、楽市へ二人の心象が流れ込んでくる。

楽市は脳裏に浮かぶ、画を見てつぶやいた。


(レンコンの穴かな?)













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