表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
闇落ち白狐のあやかし保育園  作者: うちはとはつん
第3章 カルウィズ天領地
150/683

150 楽市、電流が走るっ


ベイルフより東北東へ、一二〇キリルメドルの地にある、


カルウィズ天領地。


そこはダークエルフ、“ソービシル家直轄の避暑地”として栄えていた。

山野の地形を活かしながら、様々な宮殿が点在する場所である。


そこへ隊列を組んだ六体のがしゃが、森林を搔き分け近付いていく――



    *



楽市たちは、瘴気により枯死した跡をたどり、巨大アンデッド・がしゃを追う。

 

枯れた道はあっちにフラフラ、こっちにフラフラと、蛇行しながら東に伸びていた。 

おそらく山野の獣たちを、追っかけたりしながら進んだのだろう。


日が沈み夕闇が迫るころ、楽市たちはその途中で、がしゃに襲われたらしき街を発見した。


日が暮れて枯れた道が視認しづらくなり、千里眼で周囲を観察していたとき、パーナが見つけてくれたのだ。


パーナが千里眼の術をとき、何とも不思議そうな顔をして楽市へ報告した。


「あの、確かに襲われた跡があるんですけど、何というか元気そうなんですよ」

「がしゃが、撃退されたの!?」


楽市に聞かれて、パーナが首をかしげる。


「まさか、そんな事ができるとは、思えないんですが……」


角つきの頭蓋内は、楽市の出した狐火がフワフワと浮かび、青白く照らされている。

ヤークトがその下で手書きの地図へ、ここまでのルートを書き込んでいった。


「多分そこは、ツァーグという街ですね。

ベイルフと比べて、とても小さい所です。

そこがガシャを撃退できるとは、ちょっと考えにくいです」

 

「うーん、よく分かんないな。じゃあ行ってみるか」


楽市がそう言うと、パーナとヤークトがうなずく。


「わーっ、どこいくのっ?」

「かりか? かり、いくのかっ?」

「おにく、たべる?」

「たべるーっ!」


霧乃たちが、楽市の“行く”という言葉に反応して騒ぎはじめた。


今日はずっとがしゃの中に居たので、退屈しているのだ。

霧乃たちは正直に言って、がしゃ探しに余り興味がない。


「狩りじゃないよ、街へ行くんだよ」


「まち? いくいくっ!」

「べいふー、みたいなとこ? いくっ!」

「おにく、たべたいっ!」

「たーいーっ!」


上の子二人は、とにかく外に出れれば良いらしい。

下の子二人は、何だか食べたいモードに入っていた。


「朱儀、豆福、今日はガマンしなさ…………ああっ!!」

 

そこで、楽市に電流が走るっ。

感電したように尻尾が膨れ上がった。

全て言う前に、自分で気付いてしまった。

 

狩りはできないけど、お肉は食べたい。

ならば、街で食べればいいじゃない。


「ふあああ……」


ベイルフでは、忙しすぎて気が回らなかった。

もう心のどこかで、諦めていた自分がいたからだろう。

 

なぜ諦める必要があるのか、あたしの馬鹿っ。

楽市は自分を叱咤し、そして今、気付けたことの喜びを噛みしめた。


 

――街にくりだし、味付きのお肉かーっ


 

「らくーち、何か、ばかっぽい」

「口とじろ、らくーち」

「あはは、かおが、へん」

「かお、へん」


口を開けて固まる楽市に、子供たちが呆れてしまう。

そんな楽市の硬直を溶かすように、とつじょ大きな音が響いた。


グギュルルルルルーッ


皆が何事かと音の方向を見ると、パーナがお腹を押さえて、顔を真っ赤にしている。

 

「ちょっとパーナ」

「ごめんヤークト、だってー」

 

「……あっ、そうか!」


我にかえった楽市が、思わず声をだした。


そうなのだ。

パーナとヤークトには、毎日の食事が必要なのである。

基本食べなくても良い、楽市たちとは違うのだった。


松永などもパーナやヤークトと同じなのだが、野生の獣は獲物が取れなくて、食べない日などざらにある。


真っ赤になったパーナを、松永がペロリとした。

共感のペロリかもしれない。


楽市がふらりとパーナに近付き、その手をとる。


「分かる、その気持ちっ!」


パーナは音を聞かれて、顔を真っ赤にしているのか、主に手を握られて真っ赤にしているのか、自分で分からなくなった。


「ふああ、ラクーチ様やめてください。ふあああーっ」











評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ