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闇落ち白狐のあやかし保育園  作者: うちはとはつん
第2章 中核都市ベイルフ
136/683

136 楽市とキキュール、即答する。


楽市はポスンと椅子に座り、溜め息をつく。

そして苦笑いをした。


「あんなの、見せられちゃうとなー。

仕える者の意地かあ。

あたし、ああいうの弱いんですよねー。

ちょっと、じーんと来ちゃいましたよ」


「そう言えば、ラク殿も仕えていたのでしたな。

ラク殿も、あんな感じだったのですかな?」


「いや、あたしはー、あはは……」


そこで楽市は色々と思い出し、遠い目になってしまった。


ガチャリ


外に出ていた、霧乃、夕凪、豆福が帰ってくる。

 

「「 ただいまー 」」

「まー」


「んっおかえり」


夕凪は帰って来てすぐに楽市の前へ立ち、なにやら唇をとがらす。


「らくーち、やくーと、きらいなの?」

「ん?」


そう言えば、夕凪があの三人を連れてきたのだった。

楽市はそんな夕凪の髪を、くしゃくしゃにしてやる。


「そんな訳ないよ。

あたし気に入ったよ、あの子たち三人」

「えっ、ぜんぶ!?」


「ヤークトとパーナは、あたしのこと慕ってくれて嬉しいし、クローサもね」

「えー、あいつもー?」


夕凪はしかめっ面する。

最後の方だけしか知らないが、クローサが楽市へ、指差しているのを見ていたのだ。


「あの子は信じてる人のために、あたしに立ち向かったんだ。

あたしが怖くて、あんなに震えてたのにさ。

なかなか、できる事じゃないよ」


「ふーん」

「たださ、ちょっと悲しい」


楽市はそう言って、ナランシアたちが受けた扱いを思い浮かべる。


「かなしいの?」

「あの子の信じている人がね、最低の奴だからさ」


「あっ、だーくかーっ」


「そう、クローサがどんなに慕っても、いつかはナランシアみたいに捨てられる。

ヤークトはそのことに悩んで、あたしに助けを求めて来たんだ」


「らくーち、やくーと、たすける?」


夕凪が楽市の膝に、両手をのせて聞いてきた。

楽市がその手に、自分の手をのせる。


「うん、助けようと思う」

「そっかっ!」

「ただ、クローサの方がねー」


「えっ、あっちも、たすけたいの?」

夕凪の後ろに立つ、霧乃が聞いてきた。

ダッコされた豆福も、のー?とか言ってる。


「う~ん……」


助けるとは何だろうか?

信じるものから引きはがして、それが助ける事になるのだろうか?


「ラク殿少し確認したいことがあるので、宜しいですか?」


うなる楽市に、シノが声をかけた。


「あっ、はい。何ですか?」

「先ほどあの娘に言った“あたしの森”に、ベイルフも入りますかな?」


「ベイルフですか? う~ん……」


今のベイルフは“豆福の力?”で、北の森の飛び地みたいになっている。

しかし楽市は思う。

それが、あたしの森と言えるかどうか。


「ちょっと違うかな。

あたしのって感じがしないんですよ。

何かちょっと奪っちゃった、というか何というか」 


「ではベイルフの住人も、あたしの物じゃないと?」


「えっ、住人ですか? ものだなんてそんな。

あたしの森って言うのは、あくまでも最初の森とか山々の事で……」


「では再生したベイルフの獣人は、放っておくと?

このままではダークエルフの、実験材料になるでしょうが」


「ええっ、あ、う~ん……どうすれば良いのかなー。

無理やりダークエルフから引きはがすと、クローサみたいに怒ると思うんですよ。 う~ん」


キキュールはシノの後ろで、考え込む楽市を冷ややかに見つめる。


楽市は、誤魔化していると感じた。

クローサみたいに怒るから何とかと言っているが、そんなものは言い訳で、要するに面倒くさいのだろう。


キキュールは思う。

こいつも結局ダークエルフのように、ベイルフの獣人を見捨てるのだと――


キキュールは苛立ちがつのる。

そんなキキュールの思いが、伝わったのだろうか?

シノが、楽市へ簡潔に告げた。


「なるほど、つまり面倒くさいのですね」

「えっ、いやそんな事っ」


うろたえる楽市を置いて、シノは続ける。


「いや良いんですよ、それが普通です。

それにラク殿には、最優先でやらなければならない事があるでしょう?


アヤシの子たちの、安否確認ですよ。

それを放っておいて、獣人にかまけていたら、助かるアヤシも助からないかもしれません」


そう言われた、楽市の顔つきが変わった。

真剣なまなざしで、シノを見つめる。


「いい顔つきをしますね。

それで良いんです。

さて、ではキキュールっ」


キキュールは、楽市の顔つきに気を取られていたので、いきなり振られてピクリとする。


「……なんだ?」

「ベイルフの獣人を、助けたいかね?」


「こいつ……」


キキュールは分かっていることを、わざわざ聞くシノに苛ついてしまう。

そもそも今のキキュールの感情は、シノのせいなのだ。


「……ああそうだ。分かっているだろう」

「なるほど、では最後に二人へ聞くが、ダークエルフはどうかね?」


「ダークエルフですか? 無理ですよ。

あいつら敵だもの」


「いらんっ」


即答する二人に、シノは笑う。


「やはり二人は、気が合うと思うのだがなあ……

まあそれは、おいおい。

ではラク殿、キキュール、こんな話はどうかね?」


そう言って、シノが長々と話し始めた――









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