128 三角テントの乙女たち
ベイルフの城壁に上下逆さまになった三角錐のテントが、押しつけられるように、くっついている。
もとは壁から離れたところに、設置してあった。
しかし角つきが、幽鬼に絡まれて落下した際その衝撃で、壁までコロコロと吹き飛ばされたのだ。
テントを支える軸が一本折れてヘタっているけれども、辛うじて三角の形状は保っている。
その後の、がしゃのトリクミで踏みつぶされなかったのは、幸運と言えるだろう。
そのテントの中で、クローサが目を覚ました。
胸に強く圧迫感があり、寝苦しくて起きたようだ。
切れ長の目を、おっくうそうに開けて数度またたく。
すると自分の胸の上に、パーナの栗毛色の獣耳がみえた。
パーナがクローサの上で、なぜか寝ているのだった。
「ん……パーナ、なんで?」
フレンドリーなスキンシップは、日常のことなので構わない。
しかしパーナは聊かふっくらとしており、重いのだった。
クローサはパーナを、そっとどかそうと彼女の背中に触れる。
すると手に、しっとりとした肌の感触が伝わってきた。
そこでクローサは、パーナが裸だと言うことに気付く。
「えっ、ちょっとパーナ!?」
クローサはこの状態が理解できず、顔を真っ赤にしてモゾモゾする。
するとすぐに、自分も裸なことに気づいた。
下着も何もつけていない。
全身に、肌と肌が密着する感触がつたわる。
「えっ、ええーっ!?」
クローサが、思わず大きな声をだすと。
すぐ隣で、寝苦し気な吐息が聞こえた。
ヤークトの少し低い、艶のある声である。
「ん……ふう……」
右耳がそれをしっかり捉えて、クローサはゾクゾクしてしまう。
横を見ると、そこには何も身に着けていない裸のヤークトがいた。
背の高いスレンダーな裸を少し丸めて、クローサへ寄り添うように寝ている。
普段はキリッとしたヤークトだが、今はあどけなく可愛らしい寝顔を、クローサに見せていた。
「ヤークトっ、あなたまで、何で裸なのっ!?」
クローサの声に反応して、ヤークトのダークブルーの獣耳がパタパタと動く。
するとヤークトの赤い瞳が、うっすらと開いた。
目の焦点があう。
ヤークトはクローサが隣にいると知り、少し微笑んだ。
「やあ、クローサ。
あたしのベッドで、何をしているの?」
「ヤークト、ここベッドじゃないよっ」
「え…………ん?」
ヤークトは意識がはっきりしてくると、隣りのクローサが裸なことに気付く。
「え、何をしているの?」
「それは、あたしも知りたいよ」
驚いたヤークトが慌てて上半身を起こすと、形の良い胸が揺れた。
視点が変化しクローサの上で眠る、裸のパーナにも気付く。
パーナのフサフサの尻尾と、丸い尻が目に飛び込んでくる。
ヤークトは、顔が真っ赤になった。
「ちょっと二人ともっ、裸で何をしてんのさっ!?」
「ヤークト、あなたも裸でしょっ!?」
「えっうそ、あーっ! これどういう事!?」
「分かんないっ!」
ヤークトは、やっと周りを気にしだす。
「ここどこなの!? とにかく、服をっ」
狭いテント内である。
隅に落ちているローブを、すぐに見つけた。
何故か白いローブが、灰だらけだ。
ヤークトは顔をしかめながらも、ローブを持ち上げると、中からも大量の灰が零れでてくる。
「ごほっ、なにこれ!?」
くしゅんっ
クローサの上で眠るパーナが、可愛いくしゃみをした。
「……どうしたの二人とも? 声が大きいよー」
パーナが寝ぼけまなこで起きようとすると、手に柔らかな感触がひろがる。
何だろうかと見てみると、自分の手の中で窮屈そうに形を変える、クローサの胸があった。
「ええーっ!?」
パーナは二人が裸で自分も裸だと知ると、顔を真っ赤にして叫んだ。
「きゃあああああっ! 二人とも私に何をしたの!? ひどいっ!」
「はっ?」
「えっ?」
誰よりも恥ずかしがり狼狽するパーナを見て、ヤークトとクローサは逆に落ち着きを取り戻す。
「とにかく服を着よう、クローサ」
「そうだね」
「きゃあああああっ、けだものおおおおっ!」
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