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闇落ち白狐のあやかし保育園  作者: うちはとはつん
第2章 中核都市ベイルフ
114/683

114 ベイルフで、迷う


外へと通じる、南城壁の大門。


そこには家財道具を詰め込んだ荷車が殺到して、大渋滞を起こしていた。


城門付近はもちろんのこと。

そこへたどり着くまでの中央道が、かなりの長さで渋滞し塞がっている。


それらが皆、動く様子を全くみせない。

荷車を引く、四足獣。

そして、その所有者であるダークエルフ共々、ことごとく息絶えていたからだ。


巨大な幽鬼が、街にみっちりと堕ちたとき。

獣人ばかりでなく、民間のダークエルフも死んだのだろう。


民間のダークエルフたちに支給されていた、対瘴気用のマジックアイテムでは、ゼロ距離の瘴気まで防ぐことはできない。


それぞれの身につける青い鉱石が、みな砕け散っていた。

霧乃と夕凪は、その有様をみて途方に暮れる。


「これぜんぶ、どかす?」

「むりっ」

 

「うーなぎ、別のとこ、いこ」

「うん」


石畳の神輿はわきの道へと入り、迂回路をさがす。

しかしどこでも、荷車が邪魔をして通れないのだった。


「うわー、うーなぎ、ここせまい、とおれないっ」

「よし、もどるっ」


「あれ、うーなぎ、ここ先がないっ」

「うーっ、もどろっ!」


霧乃たちは、狭い道やら袋小路へ迷い込みルートを探す。


その間、よゆうだと思っていた瘴気が、すぐそこまで来てしまった。

それを肌でじんわりと感じ、みんなで慌ててしまう。


ただ迫りくる瘴気が霧乃たちにとって、気持ち良さそうなのが困りものである。

 

そうこうしていると、御輿がまた住宅の行き止まりに、入り込んでしまった。


三方を取り囲む、薄暗いレンガの壁をにらみつけて、担ぎ手の四人は振りかえる。

どんどん近付く瘴気を感じて、チラリと心情がこぼれてしまう。


「ごくりっ」

「気もちよさそう……」

「あーぎ、がまん……するっ」


「わーっ、皆さん後でお願いしますっ。

後でおねがいしますーっ!」


豆福だけが、それどころでは無い。

夏の日差しの中で、瘴気の濃いところをザブリと浴びたら、どんなにスカッとすることか……


「わーっ、皆さん、足を止めないで下さいっ。

後ろへ下がりますっ、後ろへ下がりますよーっ!」


そんな四人へ、神輿の上から声がかかる。


「子供たちよ……石畳につかまってくれ」

「ん、なに?」


夕凪が聞き返そうとする前に、呪文(スペル)を唱えるキキュールの声が響く。


物理浮遊(フィジーフロウ)っ」


その声とともに、石畳の御輿がふわりと浮かんだ。

みんなで慌てて、石畳にしがみつく。


「うわーっ」

「ういてるっ」

「わっ、まってまってっ」ぴょん

「キキュールさん、大丈夫なんですかっ!?」


「ああ……お陰でだいぶ、体が動くようになってきた。

君たちしっかり、掴んでいてくれ。

このまま、屋根までいく」


キキュールは何とか動くようになった左手で、魔法陣を手元に描き、石畳をあやつる。

ゆっくりと上昇する石畳。


レンガの壁を上がりきると、そこは赤い瓦屋根の海だった。

昼をだいぶ過ぎたとはいえ、まだ日は高い。


夏の日差しが照りつけて、独特のオレンジがかった赤が眩しかった。


その瓦屋根がリズミカルに連なり、ずっと南の城壁まで続いている。


神輿にぶら下がる霧乃たちは、大喜びだ。豆福は、それどころでは無い。

霧乃がうっとりとして、つぶやいた。


「とっても、きれい……」


四人はこのまま、大空へ飛び立つのかとワクワクしたが、そうでもなかった。

ふわりと行く。

だがゆっくりで、軌道も不安定だ。


「すまない……

今の私には、これが限界だ……」


キキュールが苦しそうに、声を絞り出す。

そう言っている間にも、石畳がゆっくりと降下してしまう。

それを見て、夕凪が気にせず答えた。


「だいじょーぶっ。

ねえこれ、軽いままに、しといてくれる?」








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