表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生者の「こころ」  作者: あかいの
3/13

先生との出会い

 辺りが夕焼け色に染まり始めて、いい加減そろそろ帰らなくてはと思い、重い腰を上げたその時であった。波の音に混じって、風流な笛の音が聞こえてきたのである。

 音のする方向には男が一人。浴衣と言って伝わるかどうか不安だが、この世界における東方の島国の民族が着るような恰好で、篠笛という木材からなる横笛を吹いていた。その男と私の距離は100m程離れていただろうか。向こうは私の存在にまだ気づいていない様子だった。

 私はもう一度座り直し、しばらくその音を聴いていくことにした。浴衣や篠笛なんてものがこちらの世界にもあったのかなどと思いつつ、私は男の奏でるメロディーに耳を傾ける。

 ああ、懐かしい。篠笛なんて元の世界にいたころは全くと言っていいほど興味を示さなかのに、今はなぜこんなにも。



 懐かしさの虜になり、しばらく聴き入っていると、私はあることに気が付いた。

 それはこの懐かしさの正体であった。最初は篠笛の音からくると思われた懐かしさはそこだけから由来するものではなかったのだ。この懐かしさは篠笛独特の風流な音からだけでなく、男が奏でるメロディーからも来るものでもあったのだ。

 私はそのメロディーを知っていた。それも16年以上前から。

 16年以上前から知っているメロディー。つまり、それはこの世界にあるはずのないメロディーだ。

 私は再び立ち上がり、その男のいる方向へ早歩きで駆け寄った。もはや懐かしさは驚愕へと変わり、驚愕は未知の存在への不安と恐怖へと変貌していた。

 一体あの男は何者なのだ。

 最初は風流に見えたその男が、だんだんと不気味に見えてきた。それはその男がこの世界に存在するはずのないメロディーを奏でていたということだけでなく、そのメロディー自体からも来る印象であった。

 なぜそのメロディーを知っている?

 なぜそんなメロディーを奏でている?

 私はその男のことを不気味と思いつつも、しかし、その正体を知らずにはいられなかった。

 


 十分に近づいたところで私は「あの」と声をかけた。

「どうかしたかい?」

 男は篠笛を吹くのをやめ、こちらを向く。その声音は不気味なほど優しかったことを今でもよく覚えている。


「なぜ、ドナドナなのですか?」


 これが私の先生との出会いだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ