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オイリーガール  作者: しきゐこづゑ
夏の革命的いちにちの第1章
9/55

第9話 お弁当

「無茶しおって、運転すると性格の変わるタイプじゃな?……きっと」


 "お前もな!"と呆れて、思わずJimmyになって心の中でつっ込んだ。


 あんな道で追い抜きなんて出来っこないから、飽くまで肉薄するだけの所謂……


 煽り。


 なんだろう……と。高価、高性能な車を持った者がよく陥る(そうでなくとも車の価値と己の'器'を勘違いして気持ちが大きくなる)、もしくは屈折的性格の持ち主の忌むべき所業。車種は異なるがいたましい事件にもなった絶対にやってはいけない行為。


 料金所で往復分の料金を支払って、下界とは気温も数度低いであろう山麓を一部区間では平野が一望出来るドライブウェイに入って、先程とは違ってこの旧いポルシェによく似合った緩やかな速度で暫く流す様に走った。幾つ目かの見晴らしの良い'峠の駐車場'と呼ばれる場所に車を停めて、その駐車スペース脇の木々の屋根の下に作り付けの石のテーブルと椅子が幾つか設置してある場所のその一つに私達は腰掛けてお爺ちゃんお手製のお弁当を広げた。


挿絵(By みてみん)


 暑いけど,


 木陰にそよぐ風、鳥の声と蝉の合唱……


 誰もいない、そして時折り通る車以外に人工的な音の一切しない場所。


 まださっきの色んな音が……ポルシェの、毒蛇=アルファロメオというらしい=のエンジンと排気音、カーブでのブレーキング、タイヤの鳴く音、突然のトンネルの反響、車がガードレールに接触する嫌な音。それらが整理出来ない侭に代わるがわる脳裏に残響する。その余りに鮮やかな対比/ギャップを為す平穏な場所と時間、そしてあの瞬間の恐怖ーー多分、それと同じだけの味わった事のない昂揚感? アドレナリンや興奮物質が、表現があってるのか判らないけど いっぺんに吹き出してくる様な不思議な感じ。


 テニスをやってて息もつかさぬラリーの応酬、駆け引きと緊張感。はち切れる寸前の精神力と体力の限界、前に出てきた相手を抜けるコースとラインが見える一瞬。そしてそのポイントに通せるか否かの技量、勝利と敗北。それらとは…よく似てるかも知れないんだけど、また少し違った……いや根本的に違った感覚。その差が何か?はその時は深く考えない事にした。


 薄味の卵焼きに唐揚げ……味の付いてない海苔だけ巻いたおむすびはかぶりついて、家に居る時同様、特に会話を意識する事もなくお箸と頬張る口だけがよく動く。


「しかし、爺ちゃん?なんであんな運転ができるん?」


 不意な問いかけに


「昔はもちっと出来(でけ)たがのう……」


 とだけ答えてチラと視線をポルシェに移した。つられて私も同様に白いボデイにおく。


「お客さんの車、あんな荒っぽい運転しちゃダメだよ」


「そうじゃな。でもこいつぁお客さんのじゃない。ウチのんじゃ」


「え?」


 ……ウチの車といえば軽トラと積載車、そして工場内はいつも修理の車が流動していて、カバー被ってるのも多かったからそんな車があるなんて全く知らなかったし第一興味もなかった。

 高価であろう車がお客さんの修理預かりの車ではなく、ウチの車であった事の意外さもあって少し驚いた。


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