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オイリーガール  作者: しきゐこづゑ
夏の革命的いちにちの第1章
11/55

第11話 VW Beetle

 ここから十数メートルの場所。男性に声を掛ける爺ちゃん、余程混乱していたのか?私達には全然気付いていなかったみたいで吃驚して振り返った彼は最初ちょっと訝しげな表情を浮かべたものの、やがて携帯を下ろし腕まくりした作業つなぎ姿の爺ちゃんと話出し二人して屈んでエンジンルームを覗き込んだ。指差しながら何やらあれこれ……


 爺ちゃんはポルシェのフロントボンネットを開け、車載工具を取り出しずんぐりむっくりした車に向かった。それから小一時間部品を外したり、ペットボトルの水で洗ったりまた部品を外したりつけたりしてる様子を遠くから眺めたり。私は手持ち無沙汰で携帯を取り出してみたり。...…流石に退屈なので思い切って故障した車に近寄って行った。


「どう?爺ちゃん?」

 エンジンルームに突っ込む首は3本になった。出がけに少しだけ覗いたポルシェの其れによく似てる感じ。でももっと埃っぽくて雑然とした機械の詰まった殺風景な空間。……ゴムベルトで繋がったプーリーや太いホースや何本もの配線類。


「キャブの目詰まりと、燃料ホースがフィルターん所で劣化して漏れとる。他にも色々な……」と爺ちゃん。


「あ、こんにちは」

 自分より少し年上っぽい大学生くらいと思しき男性は顔を上げた。下界より気温は若干低いとはいえ真夏の炎天下、二人とも汗だくだ。


「……暑いのにごめんなさい、急に動かなくなっちゃって、助けて貰ってます」と私に向かっても少しこうべを垂れた。


「孫じゃ」


 私は邪魔にならないよう少し脇の方から修理風景を覗き見ながら二人の会話を聞いてる。フォルクスワーゲンのタイプ1 通称ビートルと呼ばれる車、生い立ちは少々キナ臭くはあると言うが後年世界中でカブトムシやら亀やらゴキブリと呼ばれ愛され続け4輪自動車として最も製造された謂わば、その名の通り大衆自動車の代名詞たる一台。成る程、JKでも知ってる有名な風体/名前である。男性は新車から長く所有維持し続けて免許を返納した親戚から譲り受けた事が 嬉しくって数日間は試運転兼ねてのご近所ドライブだったが、週末の今日はだいぶ慣れて来た事もあって、暑いけど最初は恐る恐るだった免許取得教習時以来のマニュアルミッションにもこれ迄運転した家の静粛性あってスムースなプリウスとは違って直角に近い姿勢でエアバッグのない細いエボナイトのハンドルを握り、後方でバタバタする煩いエンジン音や無骨な操る感溢れるドライブが余りにも楽し過ぎたので思い切って遠出したらこの有様だった…...と愛憎入り混じったかの表現に耳を傾けた。


 ふ〜ん?確かに'後ろの煩い'云々は解るわね?


 それからまた少し時間が経過して、バラした幾つかの部品を再度組んだ後 燃料ホースの劣化した先端部をカッターナイフで少し落とし、再び燃料フィルターに差し込んでホースクランプをしっかり締め直す。更に同様にポルシェに積んでいたオイル缶をバチン!と開け、漏斗はないのでペットボトルの上部をカッターで切って代用し少し足した。手際いい爺ちゃんのそんな様子を暫し興味深く眺め続けた、


 取り敢えず応急処置は終えたらしい。促されて男性がエンジンを始動させると、少し長いクランキングの後ヴォン!っとエンジンは元気よく目覚めた!その瞬間、男性の安堵と歓喜の笑みがほころぶ!その表情がやけに印象的だった……。


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