エントリー
ゴールデンウィークも毎日学校に行って練習した。凛さんは基本ノータッチで、時々、様子を見に来るぐらいだった。指導をお願いしても、一言、二言、簡単なアドバイスをくれるだけで、後は自分たちで考えろって言われた。
歌の指導は私と怜夏が、踊りの指導は果矢と怜夏が、演技指導は熱美が、それぞれ担当した。でも、教えるって難しい。思ってることが伝わないと、ストレスも溜まって来る。みんな、何度か爆発した。喧嘩もした。
五月も三週目に突入すると、喧嘩をしてるどころじゃなくなってきた。本番までもう二週間を切った。焦る。ミスる。稽古をすればするほど、できていないところが浮き彫りになって、また焦る。
劇の完成度が上がらない。むしろ下がってる? 何がいいのか悪いのか、分かんない。それでも、私達は練習を続けた。
本番一週間前、澪先輩と樹理先輩がC組の教室を訪れた。
「みんなー、私のこと覚えてるー? 世界一かわいい娘役、樹理ちゃんだぞっ。こらっ、果矢ちゃん。芋虫を生でかじってるような顔しないのっ」
樹理先輩、相変わらずだ。
「突然来てごめん。君たちの練習を見学させてもらいたいんだけど、いいかな?」
「ええですけど、なんでウチらの練習を?」
「いや、もしかするとってこともあるから、一応ね」
「はあ。よお分かりませんけど、まあ、ゆっくりしてってください」
せっかくなので通し稽古を見てもらった。たった二人でも、観客がいると緊張する。でも体が歌を、踊りを、芝居を覚えていて、大きなミスなく通すことができた。と思う。
「ありがとう。とてもよかったよ」
「私も感動して涙出ちゃったよー」
「お世辞は要りません」
怜夏がそう言うのも無理はない。だって樹理先輩、泣いてないし。どころか、通し中、声を上げて笑ってたし。
「怜夏ちゃん、こわーい。私、お世辞なんて言わないよ。嘘ついたことないもん」
「嘘つけっ。てめーは嘘の塊だ」
果矢が樹理先輩を指さす。
「澪ー、酷いこと言われたー。慰めてー」
「よしよし。じゃあ、私達も練習しないといけなくなったから、そろそろ行くよ」
「いけなくなった?」
まるで今、私達の劇を見て決めたような言い方だ。
「そうだよ、凪。君たちの劇があまりにもよかったから、私達もエントリーすることにした。だって、下級生が劇コン優勝なんてことになったら、上級生の面目丸つぶれだからね」
「お二人は今日までエントリーされてなかったんですか?」
「する必要ないと思っていたんだ。でも、君たちのことを見くびり過ぎていたようだ。ごめんね」
「またねー」
翌日、エントリーしたグループの名前と演目のリストが掲示された。
私達のグループ名は「C組」で、演目は『フェアリーデュエル』。
澪先輩と樹理先輩のグループ名は「C組のみんなー、見てるー? 樹理ちゃん、頑張っちゃうぞー」で、演目は『ロミオとジュリエット』。




