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誰か助けて
市内を走る電車を乗り継いで、駅から徒歩十五分の住宅街のど真ん中に果矢の家があった。鉄の門扉の先に洋風の館が見えている。
インターホンを鳴らす。
「はい、ハーハー、どなた?」
息を切らしてる?
「突然お伺いしてすみません。私、水野な――」
「てめえ、まだ話は終わってねえぞ。サインして判子押しやがれ」
「黙りなさい。絶対押しませんからね」
「力づくで押させてやる」
「や、やめなさい。誰か。誰か助けてー」
インターホンが切れたのか、それきり声が聞こえなくなった。おそらく今助けを求めたのが、果矢のお母さんだろう。
私は果矢を助けに来たはずなのに、なぜか、果矢のお母さんを助けるべく、錠のかかった門扉をよじ登って、春の花咲くガーデンを抜け、玄関まで来てしまった。
呼び鈴を鳴らしてしばし待つ。
「お、凪じゃねーか」
母親の首へ回した腕を締めながら、果矢が出てきた。




