一次試験終了
組んで踊り始めると、私の足は勝手に動いていた。足をどこに出せばいいか、迷うことはなかった。宗谷さんの足の運びに合わせて足を出す。それだけで、間違わずステップが踏めた。私をコントロールしてくれてるんだ。多分、すごく神経と筋肉を使って。
自分が情けなくてうつむいてしまう。
「顔、上げろ」
「ごめんなさい」
「いいから顔上げろ。突っ込むぞ」
そう言って、宗谷さんは他のペアが踊っているスペースへ進路を切った。
「ぶつかるぶつかる」
「力抜け。私を信じろ」
宗谷さんの声を聴いて全身を脱力する。ここで指示に従わないのは、裏切りだ。だって、宗谷さんは任せろと言って、私はお願いしますって言った。なら信じなきゃ嘘だ。
進路の先で踊っているペアとの距離が縮まっていく。ぶつかると思った寸前で、ナチュラルターン。
紙一重でぶつからず済んだ。
「つぎつぎ行くぞ」
「えええ」
宗谷さんは止まらない。他のペアとペアの間を回転しながら抜けて行く。ターンの連続で視界が回る回る。
曲の音が大きくなった。終わりが近い?
「アレ、やるか」
「アレって?」
宗谷さんがしゃがみ込み、私の両足、膝の裏に手を回した。
「水野、ジャンプ」
「え? え?」
「早く」
何をされるか、予想のつかないまま跳ぶ。すると、一瞬で持ち上げられた。宗谷さんの顔が真直にある。これ、お姫様抱っこだ。
「ちょっと、ま――」
「目、回すなよ」
宗谷さんがその場でスピンを始める。
私は悲鳴を上げながら、宗谷さんの首に手を回す。スピンのスピードが速まるにつれて遠心力が強くなっていくので、必死になって宗谷さんにしがみつく。
何十回も回った後、下ろしてもらい、またワルツのステップに戻る。私の平衡感覚は狂いきっていた。視界も揺れている。それでも立っていられるのは、やっぱり宗谷さんのおかげだった。
ラストターンを決めて、私と宗谷さんは片手を繋いだまま、腕が伸びきるところまで行って、横並びになる。もう一方の空いている手を体の横斜め上へ挙げて、下ろしながら、二人そろってお辞儀する。
他のペアのお辞儀と試験管の拍手、そして宗谷さんの横顔。
お礼を言わなくちゃ。
「宗谷、さん」
「何だよ? お前、息上がってるじゃんか」
宗谷さんが私を引き寄せる。私には抵抗する力なんて残ってなくて、そのまま宗谷さんの胸にもたれかかる。
「ごめんね、いっぱいいっぱい迷惑かけて」
「別に謝らなくていい。パートナーを助けるのは、当たり前のことだし」
「え?」
顔を上げると、宗谷さんがそっぽを向いていた。
「何でもねえよ。ほら、行くぞ」
次ここで試験を受ける受験生五十人ぐらいが中へ入って来た。私は宗谷さんに肩を貸してもらったまま、体育館を出た。
私の、いや、私達の一次試験が終了した。




