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自分だけの仕事部屋

作者: 松下勇一郎

私の仕事はフリーランスのWebプログラマだ。


なかなか説明するのが難しい仕事だが、たとえば、YahooのようなWebサイトの機能を作ったり、会社の中で使うシステムを、ホームページのような形で使える様に作るのが仕事である。


フリーランスのプログラマと言うと、数名から数十人が集まる「現場」に個別契約で参加する「現場常駐」のプログラマと言うのも多い。むしろこちらが主流と言えなくもないが、私の場合は、俗にSOHOとか在宅とも呼ばれる、仕事を持ち帰って一人で作業をするプログラマである。


一時、小さなオフィスを構えてみたこともあるが、今は自宅で仕事をしている。

自宅には自分しかいない。今年で三十路を迎えるが、未だ独身。


一日中、部屋には私しかいない。


仕事場を兼ねる様になると、自宅には全く人を入れたくなくなる。

機密保持がうるさくなるような仕事は、個人の私には回ってこないが、

自分だけの仕事場と言うのは他人に見られたくはないものだ。


特に問題はなくとも、自分の机の引き出しを覗かれては深いに思うだろう。

私の自宅は既に机の引き出しそのもの、私の人格を端的に表しているような、そんな気がする空間になっている。


仕事をするコタツの周りにはゴミや書籍が土手を作りっている。

生活の場と仕事場の間には明確な境界を引くことが出来ず、

それは空間的なことに限ったものではなく、時間的にもその二つは分ちがたく混ざりあっている。


だが、私はこの二つを改めて分離するのが怖い。

果たして,私には私生活らしい私生活などあるのだろうか?


一度だけ、事務所を借りてみた折には、

部屋の中が妙に空虚になった。


別に家具がないわけではない。事務所から帰って来てみると、

何もすることがないのだ。あまりにも寂しい空間。

自由業と言われる立場の割に、生活の楽しみ方を知らない、

仕事人間である事実を突きつけられるのである。


こんな自分と自分の部屋が変わることがあるとすれば、

圧倒的な勢いで私生活の両分が拡大し、仕事と混ざりあうことが拒否される状況、

ようするに恋人なり奥さんなりが出来たときだけだろう。


この部屋に黒舟が来襲するがごとく、

誰かがやって来るならば、一体どれほどの急激な変化がおこることだろう。

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