8話 30年目 私の娘に会いに行く!
30年、それは綺玲にとっても、ファーストにとっても大きな節目になる時間だ
そう、本当に大きな
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「クソッ!結局いつまでたっても魔法少女はバニッシュに勝てないのかよ!」
一人の魔法少女がそう言いながら強く地面を叩いた
同時、地面に小さなクレーターができる
「ッハハハ!当たり前だろう?お前たち魔法少女如きと私たちバニッシュは一人一人の質が違うんだよぉ!」
バニッシュを中心に沢山の魔法少女が地に伏していた
ほとんど下着と言えるほど肌を露出した褐色肌の女、背中にその女よりも少し長い大剣を背負っている、一定の間隔で黒く明滅していることから普通の剣じゃないことがわかるだろう。
「くそっ!あの人が居てくれたら…!」
「こうなることは知っていました」
静かに、だけどよく聞こえる声がした。
力強くて、魔法少女にとっては頼りになる声だ
そして、バニッシュにとっては出来るだけ会いたくない相手である。
そう、その少女の声こそ魔法少女が言った[あの人]であった。
真っ白な足首まで隠れるドレスに身を包み、髪をお団子にし、その周りを三つ編みの髪が一周している。
前髪のサイドから三つ編みの髪が垂れ下がっている。
輝くような金髪が真っ白なドレスと合わさって神々しさすら感じるのは気のせいではないはずだ。
そう、彼女は
「魔法少女のセリナです」
優雅にカーテシーをする。
誰もが見惚れた、バニッシュでさえも。
「…おう、やっとお出ましか?セリナ」
「そう言うあなたのお名前は?」
「私か?私は…レアだ、そう呼べ」
「レアさんですね」
「挨拶は、いいだろう?さぁ、やろうや」
バニッシュ…レアはすぐにセリナと戦うために武器に手をかけて少し屈んだ。
セリナは短槍をゆるく構え、攻撃に備える。
「あなたは、この魔法少女とバニッシュについて、何か知っていますか?」
「あん?いきなりなんだ?」
「知っていますか?」
高圧的に、二度セリナはレアに聞いた。
「詳しくはしらねぇな、ただ、我々はこう説明されている『母上を守る為だ』とだけ聞いている」
「そう…私はそれを聞くまで何も知らなかったわ、あなたはちゃんと答えてくれるバニッシュさんで良かったわ」
「ま、別に口止めをされてはいないからな」
両者、深く腰を落とし、構え、突き進む!
しかし
「「うぐっ!!!」」
二人、いや、この場に居る者全員が同時に胸を押さえて蹲る
((何か、来る……!))
二人は思う、何が、何者が?
だけど確かなのは、目の前のバニッシュとは、魔法少女とは、明らかに違う!
そして、ソイツは現れた
「お?おっおっお?なんか沢山魔法少女がいる!あとバニッシュも!」
自分達よりも頭一つは小さい子供であった
小さい少女はルンルン♪と軽やかなステップを踏みながら二人に近づく、そのステップで器用に倒れている魔法少女をかわしながら。
「ん〜…」
じーっと二人の顔を、目をしっかりと覗き込む。
右目の緑色をした瞳にはセリナを
左目の赤い色をした瞳にはレアを
「きめた!二人とも連れて行くよ!」
「つ、連れて行くって何処にだ?」
「例え子供でも見知らぬ人に連れて行かれるのはちょっと…」
と、言い返すもやはり怖い、この小さな子供が、目の前のレアが弱く感じてしまうほどに
「そんなの決まってるじゃん!あの子を迎えに行くんだよ!そう、私の娘をね!」
そう、この子供の正体は
三改木綺玲である
「む、娘だと?」
「その年で、娘?」
「む、私はこう見えても3桁歳だよ?娘くらいいてもおかしくないでしょ?」
そういうと無邪気に笑った。
それが何より怖かった