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魔法少女の敵の親玉やってます  作者: 気乗りしないお調子者
4/9

4話 1/30年目

1年目とか書いてるけど30年分書くわけじゃないんでよろぴく

さて、優綺が眠ってから半年ほど時間が経った

最初の一年はなにも起こらないかもと期待はしていたがやはりそうはいかないらしい


「やっぱり、私とは比にならないほど強力らしいわね…」


私の目の前には黒い靄が集まったかのようにうごめく黒い影、人型、動物型、不定形型、怪物型、いろいろな黒い影がひしめき合っている

そう、この影たちは優綺から溢れ出る行き場を失った力が具現化した存在、放っておけばこの世界の街を壊す、壊しきると表の世界に溢れ出てさらなる災厄を招くだろう


はっきり言って、私の時とは大違いだ

私の時は人型の黒い影が溢れていただけだ

優綺のように暴れることすらなかった


そしてなにより、これを放置するのは非常にマズイ

さて、どうしたものかとしばらく唸りながら考え込む


「このままでは私が溜め込んだ180年(・・・・)分の力を使わなくてはいけなくなる…」


おっと、私の実年齢がバレてしまう


と、そこでふと優綺が言っていた独り言を思い出した


(なんというか…高速で再生したら魔法少女の変身シーンみたいになりそう)


そう、『魔法少女』だ、『魔法少女』なんだよ!

我ながら妙案を思いついたと思いながら早速準備に取り掛かる


「楽をするために、今を苦労するぞお!!!」


それに、優綺の異能力が目覚めたってことは、魔女達にとってそういう事(・・・・・)なんだから


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その日、一人の少女の運命が変わった

少女は目の前に浮いているファンシーなユニコーンのぬいぐるみっぽい生物?から目が離せなかった


「娘、魔法少女に興味はないか?」


確かに心が震えた気がした




それから少女は目の前の生物?から話を聞いた

要約すると

・今この世界にはトレイターと呼ばれる世界を壊す『敵』が生まれ、滅亡の危機に瀕している

・今一人だけこの『敵』に対処しているが数が多くとても間に合わない

・これの対処のために魔法少女としての『異能力(才能)』を持っている子を探している


「そうして見つけたのが私…」

「そういうことだ」


少女は少しだけ考えた、魔法少女になる事はむしろ賛成だ

だけどそこじゃない、問題は命をかける事になるというのと

なにか漠然とした、魔法少女になったら全てが変わってしまうような不安感がある

だから決めあぐねている

でも、魔法少女になるという誘惑にはどうしても勝てなかった


「やります、魔法少女」


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少女が魔法少女になってからさらに半年が経った


ちなみに少女の魔法少女としての姿は、よくあるピンク色のフリフリとした衣装だ、可愛い系だがしつこくない程度にフリルが抑えられている




トレイターの数は減っていない、むしろ増えてすらいるように感じていた

個々の強さは大したことはないが、数が多いためどうしても消耗戦になり、プラマイゼロで退却

これの繰り返しだ

そして休息してる間に数が増え結局さらに数が増えた

溢れて溢れてきりがない

最初は魔法少女に夢を見たがどうだ、夢なんてない、終わらない戦い、仲間もいない、いつも息を荒げて帰宅する現実、親からも騙し騙し過ごす生活はひどく息苦しく感じる

最近になって一番落ち着くのはトレイターと戦っている時間になってしまった


魔法少女には変身した時、血漿石(ジェム)と呼ばれる石が身体のどこかに現れる

その石が砕けた時、魔法少女は死ぬ

トレイター達はその血漿石を欲しがり、魔法少女をよく狙う、目的はわからないが渡してはいけないとユニコーンのファンシーな生物?に事前に聞いていた


「いつまで戦えばいいの!倒しても倒しても終わらない!お母さんとも喧嘩しちゃうし!なんなのよ!」


少女はトレイターから逃げながら怒っていた

逃げて逃げて、行き着いた先は白い霧に包まれた広い公園だ

と、そこで


少女は背筋を駆け巡る悪寒に後ろを振り向いた

そこには不定形型のトレイターがいて、そいつから伸びた触手の先に血漿石が10個それぞれの触手に持っていた

魔法少女としての直感だろうか、このままではまずい事になる

そう思った


この白黒だけどカラフルな世界で異変を感じたのは始めてだ

ここまでの明確な悪寒は本当に初めてで、冷や汗ばかりが流れる


不定形型のトレイターが血漿石を自分の体の中に突っ込んだ


今度は恐怖でしゃがみこんだ


不定形型トレイターの体が赤く輝き、青く輝き、緑に輝き、紫に輝き、様々な色に輝いた

最後に黒い輝きに包まれると丸い塊になり

バリッと表面が砕けると同時、中からベチャッと人型の何かが"生まれた"

真っ白な肌に綺麗な銀髪、黒い目に赤い瞳、小さな唇は艶があってどこか妖しい魅力を感じる少女が生まれたての子鹿のように立ち上がった

ひどく弱々しく見えるのに、その両足で立つとフラフラとした足はしっかりと地を踏みしめた

しばらく上を見つめたかと思うと少しだけ周りをキョロキョロと見渡し、魔法少女ーーの後ろを凝視した

魔法少女はその視線を追うと、ソレが目に入った


そこには、黒い、丸い球体状の繭としか言いようのない物体が四方八方に糸のような黒い糸を伸ばしていた

鼓動を刻むようにその黒い繭は赤い血管のような筋が浮かんでは消えていく

そしてトレイターの少女はその繭の前に移動する

魔法少女はその姿がひどく弱々しく見えた。

とその時トレイターの少女は口を開く


「ママ、会いたいよ、ママ…」

「ママ…?これが…?」

「ママ…早く起きて?ねえ、一人は寂しいよ…」


ふえ、びえぇぇぇぇぇぇええん!

トレイターの少女は泣いた、泣き続けた

繭に頬ずりをして、だけど鼓動以外は何も感じなくて

泣いた

ずっと


「そんな姿を私に見せて、私はどうすればいいの?」


そんな魔法少女の姿をユニコーンのファンシーな生物?は無表情に見つめ続け、小声で「潮時か」と口にする


魔法少女は半年にして魔法少女を引退した

彼女はこれからの魔法少女のためにこう書き残した


【トレイターに同情することなかれ】

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