3話 三改木綺玲
ここまでがプロローグかな?
その声にはすごく聞き覚えがあった。
いや、忘れるはずもない声だ。
特徴的な高い声、だけど不快ではなくひどく心地いいこの声は
「お母さん」
「優綺、おはよう」
「あ、おはようございます」
そう、私のお母さんだ。
なぜこの世界にいるのか?なぜこの世界の事を説明できるのか?なぜ…色々な事を考えてしまうのは仕方がない事だろう。
でも、教えてくれるのならたとえ相手がお母さんでも聞いておくべきだ。
「この世界について、教えてください」
「おぉう、色々と段階を飛ばして聞いたねえ」
「この理解不能な状況から脱出できるのなら、たとえお母さんでも聞いておくべきだと思っただけです」
「さすが私の娘!」
そうしてお母さんはこの世界についてを話し始めた。
「この世界はウィッチワールドと言うのよ」
「ウィッチワールド?」
「そう、魔女の世界と書いてウィッチワールド、このウィッチワールドはその名の通り魔女が作り出した世界よ」
「魔女が作り出した世界…」
「今までにも似たようなことが何度かあったでしょう?」
「はい」
「その全てはウィッチワールド」
「なるほど、つまりこのウィッチワールドは、この世界にいる魔女の誰かがわざわざ世界を作って引き起こしてる現象ってこと?」
「んー…少し違うけど概ねそんな感じよ、例えばこの世界、優綺にとってはとても心地いいでしょう?」
「はい、今までと決定的に何か違います」
「それは、この世界が優綺の世界だからよ」
「えっ…えぇぇぇぇぇえええ!?!?」
衝撃の事実だった。
このほとんど白黒のカラフルな世界は私が作った世界だったんだ…あれ、でも…
「やり方なんて知らないよ!?」
「知っていたら逆にお母さんがびっくりしちゃうわ」
「じゃあどうやってこの世界から出るのさ!?」
「それは、あなたの力を整えるのよ」
整える?
力を?
ちょっと何言ってるのかわからない
「まあ、わからなくて当然よ」
「はぁ…じゃあ具体的にどのくらいの時間がたったら元に戻る…整う?の?」
「さぁ?」
「え?」
「わからない、と言ったのよ」
この世界を知ってるのにわからないとはこれいかに
「正確には”どのくらいの時間が必要か”わからないだけよ」
「???……力を整えるのに必要なのは修業的なアレじゃないの?」
「ええ、違うわ」
「?????………???」
「時間よ、自然に整う以外に選択肢がないのよ」
「じゃあお母さんはどのくらい時間がかかったの?」
「そうね…だいたい1年だったかしら」
「じゃあ私もそのくらい??」
「さぁ…優綺のウィッチワールドは私のウィッチワールドと比べても桁違いに力が強いもの、予測なんて不能だわ」
「……それって少なくとも5年はかかるってことなんじゃ」
「5年?バカを言わないで、もっとかかるわ」
「もっとって…私の青春時代全部捨てるの私!?!?」
「えっ…そこなの?」
「そこでしょ!?」
って、今はそんなことよりも
「いつ終わるのかもわからないなんて…は~あ…これからどうしよう」
「じゃあ力が整うまでの時間、寝て過ごす?」
「えっ…そんなことできるの?」
「ええ、私の異能力を使えば」
「じゃあお願いします!」
こういう時に頭を下げれない人間はどうかとおもうよ?私
「じゃあ準備するからちょっと待ってて」
お母さんはそういうと、椅子を1つ家の中から外に持ち出した
私もそのあとを追う
近くの広い公園まで歩くとそこに椅子を置き、目をつむりながら両手をゆるく広げ、何かを腕に抱いているかのようなポーズで固まると、そこから黒い糸が四方八方に一気に噴き出す、木々に引っかかったと思ったら大人が8人並んで寝っ転がれるほどのサイズのハンモックが完成する
「さ、優綺、あの上で寝っ転がりなさい」
「??…はぁ」
お母さんに言われた通りに寝っ転がると、上からタオルケットよりも薄い掛布団が私の上に落ちてきた
そのまま目をつむると、急激に眠気に誘われる
「そのままおやすみなさい、優綺」
その声が聞こえた瞬間、私は起きていられなくなった
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優綺の母こと私、三改木綺玲は実のところ優綺の力が整うまでの時間を正確に把握していた
30年だ、優綺の異能力の力の量…わかりやすくMPと呼ぶけれど、私のMPが730だとすると、優綺のMPは21900、私の30倍だ、だったら力が整う期間も私の30倍と考えた方がいい
だから私は、優綺にこう言う
「30年後までおやすみなさい」
そういった瞬間、ハンモックが一気に収縮し、きれいな円を描き、丸い繭になった
両目を閉じれば中の様子を見れる私は少しだけ中の様子を見ると、胎児のように丸まり、寝息ひとつ聞こえないぐらい静かに優綺は眠っていた
「さて、これから忙しくなるよね…優綺がウィッチワールドを発現させてしまったってことはそういうこと…なかなか気がめいるなぁ…」
私は優綺を守るために準備を始めた