表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

七夕のサンタクロース

作者: 若松ユウ

「ニコラウスさん、お仕事です!」

「はい? いいかな、ルドルフくん。今日は、七月七日じゃぞ。十二月の暮れまでは、まだ半年近く残っとるわい」

「それは、オイラも変だと思いますよ。でも、子供たちの願い事を書いた紙が、この枝だか草だかわかんないものに鈴なりになってるんです。――ほら、見てくださいよ、このカラフルな紙の数々を!」

「ブハッ。これこれ、顔に押し付けるんじゃない。……どれ。ひとつ、読み上げてみようかのぅ。『かけっこがはやくなりますように。あきら』、『じがきれいになりますように。かずこ』。ほぅほぅ」

「『いちごののったしょーとけーきがたべたいです。なるみ』、『あたらしいさっかーぼーるがほしいです。へいた』。なるほどねぇ」

「しかし、まぁ、こんなものを持ち込んで、どうするつもりじゃ?」

「えっ? そんなの、やることは一つに決まってるじゃないですか。ここにある願い事を叶えるんですよ!」

「却下じゃ」

「えぇ、何で駄目なんですか? 子供たちの夢や希望を叶えるのが、オイラたちの唯一の仕事だって、いつも言ってるじゃないですか」

「いやまぁ、それはそれ、これはこれじゃ。だいたい、これは平仮名じゃろう? サンタクロースが真夏の日本へ行ったら、何事かと思われるに決まっておる」

「そこは、あわてんぼさんってことで、見逃してくれないんですか」

「そんなお茶目な真似は、ワシのキャラクターに合わんわい。そうでなくとも、あの国でワシたちは、要注意人物として警察にマークされとるんじゃからな。とにかく。これは、元あった場所に戻してきなさい」

「シュン。ニコラウスさんなら、きっと乗り気で準備を手伝ってくれると信じて来たのに。オイラ、ガッカリだよ」

「……わかった。そう、あからさまに落ち込むな。願い事を叶えてやろう」

「ホント? わぁい。やっぱり、言ってみるもんだな。ありがとう!」

「はいはい。そう、ドタバタとはしゃぎまわるでない。床が傷むじゃろうが」

「あっ、ごめんなさい。嬉しくって、つい」

「はぁ。面倒なことになったもんじゃのぅ」

  *

「やれやれ。これで、最後じゃな」

「まだだよ、ニコラウスさん。紙は、もう一枚残ってるんだ」

「なんじゃと! しかし、持ってきた袋には、贈り物は一つも残っとらんぞ?」

「そりゃあ、そうだよ。だって、最後の願い事は、これだもの」

「ナニナニ。……『ニコラウスさんが、ずっと健康で長生きできますように』。なんじゃ、これは?」

「エヘヘ。オイラの願いです。叶えてくださいね?」

「フンッ! おだてても、何も出さんぞ?」

「とか何とか言っちゃって。オイラ、知ってるんですよ? その袋が二重になってて、実は、もう一つプレゼントが隠してあること」

「オッホン。こういうところだけは、鼻が利くんじゃな。――ほれ、受け取るがいい」

「やったね。これだから、オイラはニコラウスさんのことが好きなんだ。サンキュー」

「あぁ、その代わりといっては何じゃがな。十二月二十四日の夜も、今夜に増して、よく働くのじゃぞ。良いな?」

「はい、サンタクロースさま」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ∀・)若松さまらしい「掛け合い」で読者を惹きこむ作品ですね。独創的なタイトルに引力がありますね~。そしてそれを裏切らない内容。あっさりめでストレートかな?みたいな印象もあったりするけど、まぁ…
[一言] 面白かったです。 小気味のいいジョークが話のテンポをよくしてると思います。 オチも微笑ましくて楽しく読めました。
[良い点] 可愛らしいお話ですね。 ほのぼのします。和みました。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ