第6話 元魔王と元勇者、家族と顔合わせする
「あぶぅー。」
「あきゃー。」
「あら、ルディ様、アル様ご機嫌ですね。」
「「あーぅ。」」
《さて、状況確認と行こうか》
《ああ、そうだな。》
見た目は無垢な赤ん坊である彼ら―ルディウスとアルディスはつい先ほど転生した元魔王カルトと元勇者天輝である。今彼らは、念話の魔法を使って会話をしている。
《カルトの名前はルディ、僕の名前がアルになった。ここまではわかる?》
《会話をしていた大人の話を聞くに、見た目も同じだっていうことも分かっている。ただ、目がよく見えないな》
《そーだね。それに、メイドさんがいるから貴族だねー。》
《貴族、か。》
《どうしたの、カルじゃないルディ。》
《・・・・・・名前、わざわざ言い直さなくていいぞ。》
《いやいや、今の名前に慣れとかないと後々困るじゃん?》
《まあ、そうだが。》
《それで、どうしたの?》
《・・・・・・貴族ってことは、その、アレがあるだろ。嫌だなーと思って。》
《アレ?・・・・・・ああ、お茶会とか夜会のこと?ルディは苦手だったもんなー。》
《そうだよ。》
そう、ルディウスは茶会や夜会などの貴族の催しが大の苦手なのだ。それはアルディスも同じで。
《僕も苦手だなー。僕は勇者をしてた時に何回か出席したんだけど、何故か女の人が群がってくるんだよね。しかもさりげなく互いを牽制してて、アレは怖かった。》
《・・・・・・普通はそんなにあからさまじゃないはずだ。群がられてたのはお前が独身の勇者だったからだ。自分の家に縛り付けようとしたんだろ。》
《こわっ、怖いよ。》
《まあ、俺にとってのデメリットはそれくらいだな。》
《あれ?貴族に生まれたことはいいの?》
《ああ、むしろ貴族だからこそのメリットがある。》
《え、どんなメリットが?》
《教育が受けれる。》
《なるほど。》
「・・・・・・ルディ様、アル様。お父様とお母様がいらっしゃいましたよ。」
《《キターーーー。》》
ちなみに、このキターーーーは喜んでいるキターーーーではなく、もう勘弁してよ来ないでのキターーーーである。1日に何回も会いに来ては、抱き上げられ、かわいがられ、挙句に世話まで焼かれる赤ちゃんライフにルディウスとアルディスは疲れていた。見た目は純粋無垢な赤ん坊でも、中身は200歳越えの元魔王と元勇者なのだ。そんなわけで、ルディウスとアルディスはとても疲れていた。
「ルディ、アル。今日はあなた達のお兄さんも連れて来たのよ。・・・・・・ほら、レグルス。あなたの弟たちよ。」
そう言って、レグルスをルディウスとアルディスが寝かされているベビーベッドの前まで押し出し、顔を見せる。
「・・・・・・。」
「?どうしたレグルス?お前の弟だぞ?」
《・・・・・・ルディ、お兄さんだって。爵位は継がなくてもよさそうだよ。》
《ふむ。大体4歳くらいだな。親に甘えたいのに俺たちが生まれたことで、親が俺たちにとられるとでも思っているのだろう。》
《だからあんなに不機嫌なんだね。》
正解である。
「レグルス、君が彼らを守ってあげるんだよ。」
「・・・・・・まもる?」
「そうよ。この子達はまだ何もできないの。だから、私たちが守ってあげないといけないの。それに、愛してあげるの。赤ちゃんはね、たくさんの愛をもらって育つのよ。」
《《すみません。僕(俺)たち、そこらの大人よりも強いです。》》
ルディウスとアルディスは心の中で突っ込みを入れた。実際、転生前のチートでハイスペックな能力を、赤ちゃんである現在に、すでに引き継いでいるので、並の大人だとワンパンでやられてしまうのである。
「・・・・・・。」
《まだ不機嫌そうだね。ルディ。》
《なんだ。》
《父様と母様のためにも一肌脱ごうか。》
《はぁ。仕方ないな。》
ルディウスとアルディスはにっこりと笑う。
「っ!」
「まあ、何かいいことでもあったのかしら。」
「・・・・・・とうさま、かあさま。わたしは、ルディとアルをがんばってまもります!」
「そうか。良かった。レグルス、この子達と仲良くしてくれ。」
「はい!」
《うんうん。家族は仲良くしなくちゃね!》
《まあ、これでいいだろ。》
こうして、元魔王と元勇者は家族との顔合わせを終えたのだった。