第5話 いざ、転生!
「・・・・・・さて、青空がきれいな昼になったよ。カルト、何か思い残したことはある?」
「いや、特には・・・・・・ない、よな?」
「・・・・・・もう1度確認する?」
この日、彼らはいよいよ転生する・・・・・・全ては立派な社会人になるために。そう、転生するのだ。しかし、彼らはいまだに転生できていなかった。さあ、転生するぞというときに、不安になっていろいろ確認しに行くのだ。先ほどからこのやり取りを20回くらいは繰り返している。
「よし、さあ転生しよう。」
「・・・・・・ちょっと待て。結界、ちゃんと張られてたか?」
「・・・・・・それ、さっきも確認しに行ってたよね。」
「いや、だってさ、いざ転生するってなると不安になるだろう?」
「それはわかるけどさ・・・・・・。」
なかなか転生ができない元魔王と元勇者だった。
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「・・・・・・さて。月がきれいな夜になったよ、カルト・・・・・・。」
「な、なんだよ。」
「もう、いいよね。」
「・・・・・・なんか、ごめん。」
天輝はやたらと確認に行くカルトにキレていた。
「じゃあ、この中に入って。」
「・・・・・・なあ、これって・・・・・・。」
「棺桶だよ?」
天輝とカルトの前には、2つの棺桶。これは、天輝が作った特別製である。
「何で棺桶・・・・・・。」
「この中に入って蓋を閉めて、横になってて。僕が魔法陣を起動させたら、転生してると思うから。次に目を覚ました時には、赤ちゃんだよ!」
「そ、そうか。」
「さあさあさあさあ、入って蓋閉めて横になりやがれ。」
「ア、アマキ、怒ってるのか?怒っているんだったら謝るから。だから押すな!」
「もう、言うことを聞かない悪い子にはこうなんだぞ。どりゃー。」
「がはっ!」
天輝はなかなか棺桶に入らないカルトを抱えて、棺桶に投げ入れた・・・・・・。ドガゴーーーーーードゴンガコッ、という音が聞こえたが天輝は気にせず蓋を閉め、自分も棺桶の中に入る。
「転生の魔法陣起動しましたー。転生開始まで、後60秒ー。」
「おい!アマキ!ごめんって。悪かった!」
「44ー、43ー、42ー・・・・・・。」
「ちょっ聞いてるのか?アマキ!」
「29ー、28ー、27ー・・・・・・。」
「謝るから!無視するなよ!」
「10ー、9ー、8ー・・・・・・。」
「ごめんなさい俺が悪かったですだから無視しないで!」
「3ー、2ー、1ー、転生開始ー。」
「アマキーーーーーー!?」
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「「ほぎゃあー、ほぎゃあー」」
「奥様、お生まれになられましたよ。双子の男の子です。
「あぁ。元気な声ね。ねえ、お顔を見せてほしいわ。」
「ええ、もちろんお見せいたしますよ。・・・・・・どうぞ。」
「まあ、この子達、もう目を開いているわ。見えているのかしら・・・・・・。」
「おい!生まれたのか!」
「あらあなた、走ってきたの?息が切れているわ。」
「そんなことはいいんだ。私にも顔を見せてくれ。」
「ふふふ、そんなに急がなくても逃げたりしないわ。はい、見て、双子の男の子なの。」
「・・・・・・目が開いているな。」
「ええ、そうなの。この子達とってもきれいな目を持っているの。それに、髪もきれい。」
「・・・・・・よし、名前を決めたぞ!」
「あら、なんていう名前なの?」
「漆黒の髪と紫の目の子がルディウス、白銀の髪と赤い目の子がアルディスだ。」
「じゃあ、ルディとアルね。」
「ああ。」
「ルディ、アル、これからよろしくね。」
生まれたばかりの2人の赤ん坊は、その言葉に返事をするかのように微笑んだ。
こうして、元魔王と元勇者は、無事、転生することができたのだった。
転生後の名前が思いつかなくて……。