第4話 転生をする準備をします!
「さて、カルトも泣き止んだし、これからどうするか考えようか。」
「だからっ泣いてないって言ってんだろ!」
「はいはい。そういうことにしといてあげる。」
「だからっ!」
ちなみに、カルトは一晩中泣き続けていたので目が赤くなってしまっている。
「あー分かった分かった、お前は泣いてない、これでいいでしょ。」
「なんか、馬鹿にされてる気が・・・・・・。」
正解である。
「とりあえずーこの魔法陣をいじろっか。」
「はぁ!?」
カルトは正気かよこいつという目で天輝を見る。
「いや、この魔法陣はいじらなきゃダメなんだよ。」
「どういうことだ。」
天輝いわく、この『転生』の魔法陣はまだ不完全で魔法陣の空白部分を埋めることで、初めて『転生』の魔法陣として機能するのだとか。
「へぇー。そうなんだな。で、この空白部分に何を入れるんだ?結構、空白のところがあるが・・・・・・。」
「うん?あぁ、そーだな・・・・・・。例えば、今の見た目を来世でも同じようにするか、とか。」
「そ、そんなことができるのか!?」
「うん。」
他にも、今使ってる魔法『アイテムボックス』を中に入れている物ごと引き継いだり、今の体質を引き継いだり、今の身体能力を引き継いだりもできるよ、と天輝はつづける。その言葉を聞くたびに、カルトの顔が引きつっていく。
「じゃあ、とりあえず容姿は引継ぎっと。」
「ちょっと待て、さすがにそれはまずいだろ。」
「?何で?」
「だって・・・・・・俺たちは一応魔王と勇者だろ。」
そう。つい忘れがちになってしまうが、彼らは元魔王と元勇者である。・・・・・・たとえ、森の奥深くにある家で、だらだらとゲーム三昧の生活を送っていたとしても。仮にも魔王と勇者であったならば多くの人に見た目を知られているはずだった。
「あぁ。それは大丈夫。みんな、僕たちの姿をはっきりと知っている人はいないから。」
「ん?なんでそんなこと知ってんだよ。」
「実際、街に行ってきたから。」
「はぁ!?」
「別に問題なかったよ。」
「・・・・・・」
カルトにはもうツッコミをする気力がなかった。そして、天輝の魔法陣いじり、もとい作業は続いていく。
「・・・・・・あぁーーーー!!めんどくさい!!相談しながら作業するの、めんどくさい!!もう、全部引継ぎでいいよね!!」
「・・・・・・あぁ、うん。」
「よしっ!言質はとったから、あとからだめって言っても変えないから。」
じゃあ、ちゃっちゃと済ませちゃうよ、と言って5分ほどで魔法陣を完成させる。
「できたよ~。ちなみに、僕とカルトは双子として転生できるようにしたから。初めから一緒にい方が、探す手間がなくなるでしょ。疲れた。すっごく眠い。さすがに徹夜した次の日に魔法陣組み立てるのは、きつかったかな。ふぁ~。」
「そりゃそうだろ。魔法陣の組み立てには、何故か体力が奪われていくんだ。普通、徹夜して魔法陣組み立てたら倒れるぞ。すごく眠いで済んでる、お前がおかしいんだ。」
「徹夜したのはどっかの誰かさんのせいでしょ~。」
「そ、それは・・・・・・。」
「ま~い~や。カルト、まだ眠くないんだったら、この家がほかに見つからないように結界張っておいて。あと、魔族の国に今迄物資を送ってきてくれていたお礼と、僕たちが転生すること、伝えといて~。僕、寝るから~。」
「はいはいって、もう寝てるし。・・・・・・さて、俺も頑張りますか。」
こうして、元魔王と元勇者の転生の準備は着々と進んでいくのだった。