第3話 どうやって働くか、考えよう
「僕たちって・・・・・・ニート?」
「・・・・・・」
自分から目をそらすカルトを見て、天輝は自分の考えが正解であることを確信した。
「うん。カルトも分かったんだね」
「あぁ、最悪だ。しかも、今まで全然気づかなかった。」
そう言って頭を抱えるカルトを見て勇者は叫ぶ。
「僕たちはニートだ!!これはどうしようもない事実なんだよ!!」
「分かってる!!分かってるから!!大声で言うなよ!!」
何か精神的なダメージを負った元魔王と元勇者は、この後めちゃくちゃ遊んだ。
―—―――――
「カルト、僕たちはニートだ。」
死んだ目で言う天輝。
「あぁ。そうだな。」
同じく、死んだ目で答えるカルト。
「僕らは働かなければならない。」
「でも、冒険者になるにしても、自分はこうこうこういう人ですっていう説明が必要なんだぞ。俺は元魔王で、お前は元勇者だ。正直に『俺は元魔王で~こいつは元勇者なんです~』って言うのか?」
「そんなこと言っても、誰も信じちゃくれないよ。」
「だろ?だからどうすんだよ。」
「それを今考えて・・・・・・あっ。」
「どうした?何かいい考えでも思いついたのか?」
「いい考えかは分からないけど・・・・・・転生するっていうのはどうかな?」
「転生?」
カルトは思わず声を上げる。
「そう、転生。転生すれば親もいるし、新しい名前もゲットできるし・・・・・・うん、我ながらいい考えだと思う。」
「なるほど。でもどうやって・・・・・・。」
「えっと、実は『転生』の魔法陣を持ってるんだけど・・・・・・。」
「何!?」
どこから取り出したのか、転生の魔法陣(仮)の書かれた紙を広げる天輝を見て、カルトは驚く。
「・・・・・・何でお前が持ってんだよ。」
カルトはそれが本当に『転生』の魔法陣であることを確認して天輝に問いかける。
「聞いても、怒らない?」
「内容によりけり、だな。」
天輝はひとつため息をつき、語りだす。
「・・・・・・僕って、別の世界からこの世界に召喚されてきたでしょ? 召喚されてきたばかりの時は、どうにかして元の世界に帰りたかったから、魔法の勉強ばっかりしてて・・・・・・。」
「そうしてできたのが、この『転生』の魔法陣か?」
「そう」
「何で、元の世界に帰るための魔法陣が『転生』の魔法陣になったんだよ!!」
カルトは、何故こうなったのかと叫びたかった。
「さあ。頑張って組み立てたんだけどね。駄目だった。」
「お前・・・・・・。」
少し悲しそうに言う天輝を見て、カルトは目頭を押さえる。
「でもっ、今はここにいてよかったって思えるようになったんだよ。これも全部カルトのおかげだよっ!」
そう言って笑う天輝を見て、カルトは泣き出す。
「えっ!どうしたの!?何で泣いてんの!?」
「ふぅっ、ひっく、ふぇぇ、な、泣いてなんかっねえよぅ。」
元魔王は泣き続け、元勇者はそれを慰め続けた。結局、元魔王が泣き止んだのは日が昇ってしばらくしてのことだった。