第2話 元魔王と元勇者、ニートであることに気づく
2文付け加えました。
魔族の男が荷物を届け終わったころ――――
「よっしゃーーーーー!!あがりー!!」
「あぁーーーー!!」
「じゃ、これもらうね~。いっただっきまーす。」
「チっ、次は必ず勝つ・・・・・・。」
「次も僕が勝つもんね~。モグモグ、ごちそーさまです。」
こんな会話が繰り広げられていた。ここは、魔族の男が荷物を届けに来たボロ小屋の中……なのだが、中はどう見てもボロ小屋には見えなかった。まず、内装が違った。どこの城だよと言いたくなるような豪華な内装である。次に広さ。ボロ小屋とは比較にならず、街1つがすっぽりと入りそうなくらい広く、何故か階段があり、三階まである。そして、部屋の数、部屋1つの広さ、家具の質。もう突っ込みどころ満載であった。
そんな数ある部屋の1部屋に、2人の青年がいた。彼らはこの小屋の主であり、この小屋には彼ら以外は誰もいなかった。
「ふっふっふ。じゃあ、第二回戦といこうか。負けた方はー、外の荷物を取ってくるってのはどう?ちょうど荷物が届けられたみたいだし。ゲームは……オセロがいいかな」
そう言ってオセロの準備を始めた青年の名は白羽 天輝。この世界に罪を犯した魔族を断罪するために人族の手によって召喚された、日本人の高校生だった元勇者である。日本にいたときは黒髪黒目だったが、今彼の髪は白に近い銀髪を後ろ部分だけ伸ばした状態で、目は鮮やかな赤色に変わってしまっていた。中性的でどこか甘く、天使的な美しさの神々しい美貌。ちなみに、この美貌は召喚されてからのものであり、元は普通より少し上程度の顔面偏差値だった。男にしては高めの声は少し甘さが含まれている。御年218歳。不老不死である。
「おい、何で自分で自分の苦手なゲームを選んでるんだよ」
そう言って、ふてくされたように天輝をにらんでいるのはカルト・ルイ・ヴェストーラ。この世界で生まれた魔族で、魔族の国ヴェストーラの王をしていた元魔王である。漆黒というのにぴったりな腰まである長い黒髪をゆるく結び、鮮やかな紫の目はどこか冷たさを感じさせる。中性的で涼しげな、
悪魔的な美しさの魔性の美貌。高すぎず低すぎない美声。御年293歳。不老不死である。
「ハンデだよ、ハーン―デー。これくらいのこともわからないの~?カルトってー、実はお馬鹿さん?」
「おい!俺はそんなに弱くねーよ。ていうか俺とアマキはほぼ互角じゃないか。1回勝ったくらいでいいきになるなよ。」
「えぇー。でも、169100回勝負して、カルトは79900回、僕が83100回勝って、うち6100回が引き分けだから・・・・・・どっちかっていうと僕の方が強いよ。」
「・・・・・・アマキ・・・・・・お前全部覚えてるのかよ。」
「当たり前でしょ?」
「・・・・・・」
「えっ。カルト、どうして僕から離れるの?ちょっと!」
「あぁー。ごめん。その・・・・・・いや、何でもない。ごめんな。」
「ねえ!何その生暖かい視線は!?」
元魔王は元勇者の無自覚なハイスペックさに触れ、引いたのだった。
―――――――
オセロの石をひっくり返す音が響く。ちなみにこのオセロ、目が100×100の特注品である。なぜ100×100なのか、それは勇者の『普通のオセロだと、すぐ終わってしまうからおもしろくないよね~。』という言葉が原因である。
「・・・・・・ねぇ、カルト」
「何だ。」
「非常に言いにくいんだけど・・・・・・」
「言ってみろ。」
「僕たちって・・・・・・ニート?」
カルトは天輝から目をそらす。
不老不死になって、元魔王と元勇者が共に暮らし始めて200年。彼らはやっと、ニートであることに気づいたのだった。