010
フルールの勢いに呆気にとられるサク。
フルールの一言に真っ赤になるセンシ。
センシとは違った感情で真っ赤になっているフルール。
三者三様のその状況を一言で表すなら、混沌だった。
「で? あんた、何者だい?」
現在、3人は卓を囲み、センシの淹れた薬茶を啜って、パリポリと小気味よい音を奏でるオクキという菓子を摘んでいる。
あの後、いち早く冷静さを取り戻したセンシの提案で、取り敢えず落ち着こうと、センシの先導で居住部に移動したのだ。薬茶の薬効と菓子の素朴な甘さが相俟って、3人は直ぐに落ち着きを取り戻した。
ナイス!
センシ!
で、ある。
落ち着きを取り戻したフルールは、幾分柔らかな声音でサクに聞いた。
「俺は、サク。サク・ラシード。旅人だ」
サクは、それに応えるようにあっさりとした自己紹介をした。
「そうかい。それじゃあ、サク。何であんたはセンシちゃんと一緒にいるんだい?」
丸で、尋問官の様なフルール。その取り調べは長引きそうだ。
「森で逢った」
それに応じる、サクの返事は非常にシンプルで、言葉足らずでそっけない。
「森って言うと、アカアールの森かい?」
フルールの言葉にあった『アカアール』がどこを指すのか判らないサクは首を傾げ、センシは『ええ』という様に頷く。それを見て、サクも頷いた。
「なんでまた、そんな所で2人は出会ったんだい?」
思わずサクを見つめるセンシ。センシにとっては一番痛い質問が来た。上手く誤魔化してくれという強い気持ちでサクを見つめた。
「こいつ、そこでカダイラの群れに襲われてたんだ。だから、助けた」
願い虚しく、あっさりと事の経緯を暴露するサク。
「今言った事は本当かい!?」
ズイッと身を乗り出したフルールの圧に押され、思わずのけ反ったサク。しかし、しっかりと頷いた。
「俺は、嘘だけは絶対吐かない」
どこの嘘吐きの言だということを大真面目な顔でサクは宣言する。その横でほんの少し瞳を揺らしたセンシを視界の端に認め、フルールはサクの言葉には疑問を持つも、それが真実だと見抜く。ただの噂好きのおばさんではなく意外と眼力の鋭いお人なのだ。
それを悟ったセンシは内心で「あちゃぁ」と、顔を手で覆った。
「さて、センシちゃん。事情を説明してくれるかい?」
フルールの矛先がセンシに向く。
センシは、寸の間逡巡し、意を決して口を開く。
「今日、私はいつもの様にアカアールの森まで薬草を摘みに行きました。そこで、その、カダイラの群れに遭遇してしまった・のです・・・(あれは本当に生きた心地がしませんでした。)そこでサクさんが颯爽と現れて下さり、丸で魔法の様にあれよあれよという間にカダイラ達が全滅。今に至ります」
途中、その時のことを思い出しながら、センシはボソボソと説明した。
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