13 私の従者、妹の従者
外は夕暮れ、私の寝室は二階にあり、先ほどの庭が窓越しに目に入ります。
いまだほうぼう様々な草が入り乱れ、時折食べられる果実が見え隠れし、風が吹く度に木々や草、それに映った夕日の橙が揺れています。
きっと、窓を開ければ夜の匂いを含んだ少し冷たい風が入ってくるわ。
――そんなことをすれば、暗殺者が押し入ってくるかもしれませんから、絶対にできませんけれど。
夕暮れの建物の影にうまく隠れたのでしょう。子どもはそういうことが得意ですから。だからといって衛兵の怠慢を許すことはできませんけれど、それでも目を凝らすと少しずつ動く子どもの姿を追います。走っていく子どもの、一人は少し動きが鈍いようで、よろけて一度転げます。草に寝転がり、動かないのを先に走っていたもう一人の子どもが気づいて振り返ります。そのまま転げた子どもを起こすのかと思って見守ると、活発な方の子どもがごろんと横に寝転がりました。
「もう帰らないと、怒られますわ」
『もう、帰りましょう』
王城ではめったに目にしない光景に、少し嬉しくなってつぶやいたのに、懐かしい思い出が痛みをともなって蘇りました。
そう、同じ言葉で幼い日の私を急かしたのは、私の従者ジルクでした。
幼いころよりずっと一緒で、お目付け役だった彼は、夕暮れに庭を駆け回るのを、優しくたしなめました。
私はそのたびに頬を膨らませて、ぐずるのですけれど、ジルクったら、やさしくやさしく、何度も私をたしなめるの。
『姫様、夕暮れは綺麗ですけれど、夕闇に紛れたら僕は見つけられないんです。まだ未熟な騎士ですから』
未熟なジルク。
ですから私は心の広い主人として、両手を広げて命令するのです。
『では私を、抱えて頂戴』
ええ、もちろんです。
ジルクは笑ってそう言うから――私は安心して身を預けることができました。
ですけれどそれも過去の話。
ジルクは妹の従者となり、現在は勇者一行の一員となり戦地に赴いています。
「カリア、私お茶が飲みたいわ」
視界の子どもたちを振りきって、私は声をあげました。
あの時失った愛情は、お父さんとお母さんが与えてくれました。
すべて欲しがっていた、幼い私はもういないの。
そう、私はパン屋の娘。
聖女の従者や大国の王子は私の世界の外にあるべきものですわ。
ああ、労うことのできないダメな主を許してねカリア。
でもそれもあと数ヶ月で終わるのですから、お願いですわ。




