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嫌われ王女はパン屋の娘  作者: うるいあ


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13/20

13 私の従者、妹の従者

外は夕暮れ、わたくしの寝室は二階にあり、先ほどの庭が窓越しに目に入ります。

いまだほうぼう様々な草が入り乱れ、時折食べられる果実が見え隠れし、風が吹く度に木々や草、それに映った夕日の橙が揺れています。

きっと、窓を開ければ夜の匂いを含んだ少し冷たい風が入ってくるわ。


――そんなことをすれば、暗殺者が押し入ってくるかもしれませんから、絶対にできませんけれど。

夕暮れの建物の影にうまく隠れたのでしょう。子どもはそういうことが得意ですから。だからといって衛兵の怠慢を許すことはできませんけれど、それでも目を凝らすと少しずつ動く子どもの姿を追います。走っていく子どもの、一人は少し動きが鈍いようで、よろけて一度転げます。草に寝転がり、動かないのを先に走っていたもう一人の子どもが気づいて振り返ります。そのまま転げた子どもを起こすのかと思って見守ると、活発な方の子どもがごろんと横に寝転がりました。


「もう帰らないと、怒られますわ」


『もう、帰りましょう』


王城ではめったに目にしない光景に、少し嬉しくなってつぶやいたのに、懐かしい思い出が痛みをともなって蘇りました。

そう、同じ言葉で幼い日のわたくしかしたのは、わたくしの従者ジルクでした。

幼いころよりずっと一緒で、お目付け役だった彼は、夕暮れに庭を駆け回るのを、優しくたしなめました。

わたくしはそのたびに頬を膨らませて、ぐずるのですけれど、ジルクったら、やさしくやさしく、何度もわたくしをたしなめるの。


『姫様、夕暮れは綺麗ですけれど、夕闇に紛れたら僕は見つけられないんです。まだ未熟な騎士ですから』


未熟なジルク。

ですからわたくしは心の広い主人として、両手を広げて命令するのです。


『ではわたくしを、かかえて頂戴』


ええ、もちろんです。

ジルクは笑ってそう言うから――わたくしは安心して身を預けることができました。

ですけれどそれも過去の話。



ジルクは妹の従者となり、現在は勇者一行の一員となり戦地に赴いています。



「カリア、わたくしお茶が飲みたいわ」


視界の子どもたちを振りきって、わたくしは声をあげました。

あの時失った愛情は、お父さんとお母さんが与えてくれました。

すべて欲しがっていた、幼いわたくしはもういないの。


そう、わたくしはパン屋の娘。


聖女の従者や大国の王子はわたくしの世界の外にあるべきものですわ。

ああ、労うことのできないダメなあるじを許してねカリア。

でもそれもあと数ヶ月で終わるのですから、お願いですわ。

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