11 王子は子持ち
お父様、アルヴィー様に掛けあって、私この結婚を破棄された暁には、パン屋として故郷の街に帰ることを許されていますの。
もちろんそれには、白い結婚というのも条件に入っておりますわ。性行為をしてしまっては、王子の子どもを妊娠した、と捉えられる恐れがありますし。我儘で、嫌われていると評判の私が、それでも手を出されるような魅力であるなどと誤解されては、興味本位に縁談を持ちかけるような輩がでてくるやもしれません。殿方でも奥方でも、そちら方面に貪欲な方というのは、いつの時代にもどのような身分であっても存在しておりますし、そういった方々の気力・体力・実行力というのは侮ることはできません。一度興味を持たれてしまえば、王女という身分の者を、田舎に捨て置きのんべんだらりと過ごすことができるほど、私の国は甘くもありませんし、切り札も多くございません。
とは言っても、あの王子が私に手をだす確率など、油虫にくちづけするくらい低いものですわ。
あら、想像するだに気分が悪くなります。
王もこの戦いが終われば退位の意向を示しております。
ですから、そのまま王になるあの方の、その世継ぎは重要な問題であります。ええ。
王子にまだ世継ぎがいない、となれば私の油虫くちづけ確率も上がるのですけれど、そこはご安心ください。
王子はなんと、6人の子宝に恵まれておりますの! そうですの。
もちろん男児もいらっしゃいます。三男三女、あら忘れていたわ、現在妊娠中の方もいらっしゃるそうですわ。私子どもはそれほど好きではありませんが、悔しいけれど外見だけは見惚れる王子と、綺羅綺羅しいお姫様達とのお子様ですもの。鑑賞に耐えうると楽しみにしております。
妹に恋慕の情を寄せる王子ですけれど、大国の王太子でありますから、私の他に複数人の婚約者がそもそも幼少期からおりますの。
正妃もきちんとおりまして、その方が男児を一番目にお産みになりました。
その方は海を越え、港を持つ国マルティミナの第二王女です。陽を浴びた海色の瞳に、金糸の髪をもつ方で、それは慈愛に溢れていると他国にもその美しさと見識の広さは知れ渡っております。
政略結婚はうまくいっているようで、王子によく似たご子息を大切に育てられているとのことですわ。乳母はおりますがご自身も積極的に育児にかかわられているとのことです。ああ、なんと真摯な方でしょう。
お見かけするのが楽しみです。
王子は次期王としての責務をこなしつつ、妹のおしりを王城から眺めている、というのが現状ですわ。
その点だけは、私あの王子を尊敬してさしあげることができます。もちろん見目麗しく戦士としても充分な能力を持つあの王子は、私に向ける刃さえなければ、とてもよろしいお相手なのは存じあげておりますわ。
ただ最初に会った時から、あの王子の視線の先には妹が有り、私は妹に嫉妬する醜い姉でしたから、その位置は絶対に変わることはありませんの。




