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1 我儘王女と聖なる王女

緑に囲まれ、肥沃な泉と精霊に守られる国があった。


その国の名をトリムルトと言う。

かたわらに大国、アショーク王国を置き、強豪列国にかこまれながらも、そのどれもと友好関係を崩すことない国である。

その小国には、王子が三人、王女が二人いた。王子もそれぞれ賢明で民の誇りであったが、それとは別に王女は美しさで特に世間に知られていた。



それはそれは美しい王女が二人。

しかし、その二人それぞれの評判は異なる。

一人は「我儘王女」、もう一人は「聖なる王女」といわれていた。


我儘王女の名前は、スカーレット。この国の第一王女である。


赤い髪に、暗い赤銅の瞳を持つその姫には、沢山の噂があった。

いわく、しかられたことが気に入らず、すぐに教師を変える。ついには教師がいなくなり、誰も王女に教えることはできなくなった。――それを王も宰相も諭したが、その言葉に彼女は耳を貸すことはなく、部屋には幼児向けの本が置かれているという。


いわく、最初に被害にあったのはその王女の乳兄弟で、それは献身的に務めたが、これ幸いと難題を言いつけると、ついには王女の心を離れたという。それでも王女は懲りずに紅顔の美少年を入れ代わり立ち代わり従者にしてはこれも飽き、誣告してはその任を解く。ついにははるか昔に退役した、日向に眠気を堪えら得ない老兵が、形ばかりの従者となったとも。


懲りずに流行りのドレスを何着も買い求め、散りばめる装飾品が多すぎて不格好にもほどがあり、感性のずれた化粧で母親譲りの美しさも台無しである。十二の教会の祝福の折も、十四の婚約成立の折も、それぞれのパレードで現れた王女は、美しいことはわかるが品が良いとはお世辞でしかいうことができなかった。




対して聖なる王女は、フィアリーテ、第二王女であった。

淡い茶色の髪の毛と、赤茶の瞳、その色味は平凡であり、姉の王女のように苛烈な美貌ではなかったが、その笑顔の愛らしさは輝くばかりで、それを見た者すべてがつられて微笑むのだ。


小柄で愛らしい外見ながら、行動的で、機智に富み、何にでも興味を持つ性格で、こっそりと城下町に降りてきたこともあるという。


この王女は教会の祝福を受けた十二の頃、教会から聖女であるとの神託を受けた。聖女が現れたのがおよそ百年ぶりであった。その事態に国中が祝福し、王都でおこなったパレードには、ひと目見ようと他国からも見物人がやってきて、その年一番の賑わいになった。婚約の申し出も引く手あまたで、スカーレットの婚約者ですら、彼女の婚約に代えることはできないかと、密かに打診をしたらしいが、聖女であるという貴重さゆえに、その話はなくなったという。



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