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第0話

キーンコーンカーンコーン・・・


学校の終了を告げるチャイムが校内に鳴り響き、生徒達は各々の教室をあとにする。

まぁ、俺、笹山 明もその一人なのだが。


俺が荷物をまとめ、席を立とうとした時に、声を掛けられた。


「お、明。明日は休みだから皆でカラオケでも行かね?」


教室の後ろにある空きスペースで数人が集まっている中、その内の一人が手を挙げていた。


「明日かぁ・・・いや、明日はバイトがあるからパスだ。悪いな」

「うへ。またバイトかよ〜。お前、最近付き合い悪ぃぞ」


声を掛けてきたクラスメート、滝沢 孝司は苦笑を浮かべながらぼやいた。


「悪い。また今度誘ってくれよ」


俺は滝沢にそう言って、荷物を手に教室を出た。





「ねぇ。最近、笹山君逞しくなってない?」


明が教室を出た後、明をカラオケに誘ったグループの内の女子生徒がこんばんは挙げた。


「うんうん。私も思った。でも、逞しくなったって言うより、引き締まった・・・の方が正確かも」

「確かに、体育の時に俺らも思った。アイツ、何かやってんのか?」

「前に聞いてみたけど、バイトが結構身体使うんだってさ」


そんな他愛のない会話の後に一同は心の中で呟く。


『何のバイトしてんだろ?』

















市内の公立高校に通う俺は、一言で言えば『平凡』に尽きる。

容姿は普通。学力は中の下。運動はそこそこ。

特に目立った所も無く、特技と言える物も無い。

趣味も特になく、たまにアニメや小説、マンガや映画を観るくらい。オタクでは無いが、広く浅くって感じだ。

そんな俺だが、週末はちょっと忙しくなる。

二年前・・・中学三年の時から少し変わったバイトをしている。

それは・・・




「おい!そっち行ったぞ!!」

「わ、分かってるニャ!!」


俺が叫ぶと、猫耳を頭から生やした女性が叫ぶ。


「この!しぶといニャッ!」


猫耳娘に向かって爆走する『ソレ』は、降り下ろされた剣を意に介さずに走り回る。


「硬すぎるニャ!!」

「硬いのは分かってた事だろう!ぼやいてないで、さっさと・・・・?」


猫耳娘に叫んでいると、妙な気配を感じて後ろを振り返る。


「!?」


俺の視線の先にはレイピアを掲げ、何かを呟いている女性が立っていた。

長い金髪を靡かせ、チラチラとその特徴ある長い耳が顔を覗かせていた。


「あ・・・あンの、バカが!」


俺の頭の中に、次に起こるアクションが浮かぶ。

いや、十中八九間違いないだろう。


「み・・・みんな、伏せろぉぉぉぉっ!!」

「「「!?」」」


俺が大声で叫ぶと、周囲に居た人達は振り返り、咄嗟に身体を地に伏せた。

すかさず俺も頭を抱えて伏せる。

数瞬後、大地を震わせるズガンッ!と言う爆音と共に衝撃波が拡がっていく。







「ペッペッ・・・・あ〜、死ぬかと思った」


立ち込める土煙の中、一人の男が立ち上がる。

金髪碧眼の、いわゆるイケメンな男。


「ま・・・まだ耳がキンキンしてるニャ・・・」


耳を押さえながら、フラフラと猫耳娘も立ち上がる。


「堪忍してや・・・」


うんざりした顔で座り込んでいるショートカットの女性。


「うん。完璧」


満足気に何度も頷き、フンスと鼻を鳴らすエルフ娘。


「この・・・バカたれがぁっ!!」

「ぎゃんっ!!」


そして俺は、そんなエルフ娘の後頭部に拳骨を炸裂させた。


「痛ったぁ〜。いきなり、何すんのよ!アキラ!!」


頭を擦りながら振り返り、涙を浮かべながらも抗議してきたエルフ娘。


「何するはコッチの台詞だ!対象とあれだけ前衛が接近してるのに精霊魔法使うなんて、俺らを殺す気か!?」

「死んでないんだから良いじゃない!」

「結果オーライで済ますな!この前も同じ事しただろうが!」

「アキラは細かい!」

「細か!?・・・・ハァ、あのなぁ。こんな事やってると・・・・・・いつか誰か死ぬぞ?」

「!!・・・」


俺の言葉にエルフ娘は黙ってしまう。


「対象は?」


俺はエルフ娘に背を向けて他の奴の所に歩いていく。


「完全に死んでるニャ」

「さすがはエルフの精霊魔法だね」

「竜種を一撃とか、どないやねん」


対象の亡骸を眺めながら各々が呟く。


「ま、何がともあれ任務達成だな。さっさと街に戻って報告だ」






そう。俺のバイトとは・・・・







『異世界で冒険者』やってます。


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