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3,5

クラウス視点です。


扉がノックされて顔を上げる。

入室を促すと、酒とグラスを2つ手にした男が立っていた。


「兄上、少しお時間よろしいですか?」


「いいよ。」


マレンツが酒を持ってくるときは大抵なにか文句があるときだ。

何を言いたいか想像がつくものの、僕も言いたいことがあるためハープから手を離し椅子に腰かける。


「何の用?」


椅子に座り、酒を飲むばかりで要件に入ろうとしないマレンツに話しを促す。

するとマレンツは少しためらった後、口を開いた。


「兄上がカハメージュ公爵令嬢を伴侶とおっしゃったと伺いました。」


「うん、そうだね。」


やはり予想通りの内容に軽く流す。

それが気に入らなかったのかマレンツが立ちあがった。


「なぜですか!? 彼女は王種ではないはず! 王種が王種以外を伴侶にするなど前代未聞です。彼女のどこにそんな魅力があるというのです? 他国の、それも一族殺しと噂されるような少女ではないですか!」


「ねぇ、マレンツ。リージュのことをそれ以上悪く言ったらお前の首がとぶよ。分かってるよね?」


リージュをけなす発言をされて目が細くなる。

包帯をしていない今、マレンツには僕の不機嫌がもろに伝わっているのだろう。

包帯をしていても怖いらしいが、してない今よりはましだろう。

可哀想にマレンツが体を震わせた。

しかし、それでもなおマレンツが言葉をつづける。

よほどリージュのことが気に障ったようだ。


「言い過ぎたのは謝ります。ですが、あなた様の伴侶が人であるとは受け入れがたい。カハメージュ公爵令嬢のどこに惹かれたのですか?」


マレンツが椅子に座り直し、落ち着きを取り戻したが、それでもなお苛立ちが収まらない。

とはいえ先ほどよりはましなので、酒の入ったグラスをゆすって気を紛らわせる。


「お前ごときがリージュのことを口にするだけで殺したくなっちゃう。でもいいよ、兄弟だから特別に教えてあげる。僕は彼女の紅い目に惹かれたんだよ。」


「紅? カハメージュ公爵令嬢の目の色は菫色では?」


「普段は菫みたいだね。僕も驚いちゃった。」


最初に会った時の紅い目を思い出し微笑む。

僕の機嫌が良くなって威圧するような雰囲気がなくなったはずなのにマレンツが震える。


「目が紅いということは、まさか王種ですか?」


「うん、多分ね。今までだってさ王種が王種以外に惹かれることなんてなかったでしょ? さっきマレンツが言った通り。それから考えてもリージュは王種だよ。あの目、本当にぞくぞくする。父上も見たはずなんだけど、聞かなかった?」


狂気を含んだ笑みが浮かんでいるだろうことは想像に難くない。

ようやく自分と同じものを見られる人が現れた。

その喜びが全身を駆け巡る。


嬉しさに身を任せようとしたところで目の前の邪魔者に思考を引きもどされる。

質問をしたのは僕のほうだが、答えようとするマレンツがいらない。

リージュの素晴らしさに思いをはせる行為を邪魔されてイライラする。


「どっちでもいいや。そんなことよりさ、僕リージュのこと離すつもりないから。ルーディンス王国に上手いこと言っておいて。頼んだよ、マレンツ。」


名前を呼ばれてマレンツがシャンと立ち上がった。

そして椅子と机から少し離れた位置で跪く。


「御意仰せ仕りました。この命に代えても成し遂げましょう。」


「もし失敗したらお前の命なんかじゃ足りないよ。でも、もしルーディンス王国が変に動くようなら僕が壊してこようかな。」


それもいいかもと考えつつマレンツに退室を促す。

マレンツは抵抗する様子も見せず、そのまま出ていった。


やっと、やっと見つけたんだ。

逃がさないよリージュ。


紅い目を瞬かせたリージュを思い浮かべ、ハープを再び手にとった。

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