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「ホホホホ、オーッホッホッホ」
笑う少女の銀色の髪が満月の光に照らされて星が散ったかのようにきらめく。
その足元には暗い赤が散っていた。
少女は赤が靴につくことも気にせず片手を口元にあて、ただ笑い続けた。
「お……さま。そろそろメリ……国につき……。お目覚めに……。」
「ここは……?」
身体をゆすられて、まとろみから意識が浮上する。
目を擦りながら侍女のほうを向くが、夢見が悪かったせいか思考がまとまらない。
私は今日何をすればいいの……?
確か予定があったような気が……。
「あら、お嬢様。本日はメリアーノ公国に到着する日ですわ。しっかりなさってくださいまし。」
「……そうであった。」
そうだ、今日はメリアーノ公国の次期公爵の正妻が選ばれるパーティーに出席する日だ。
メリアーノ公国は美男美女のそろっている国として有名で、国土がそこまで広くないにも関わらずいざ戦争になると一般兵ですら統制のとられた騎士団のように動き、公爵家に対する尊敬ゆえか死ぬまで剣をふるい続けるという国だ。
そのため人外の住まう国ではないかという噂まで響き渡っている。
この噂がなければ国王の孫とはいえ一族殺しという汚名を被っている私が出る必要などなかったというに。
ため息を一つき、窓から見える城を眺めた。
城に着くとパーティーが始まるまで待機する客室に案内された。
ルーディンス王国からついてきた侍女たちはすぐに支度を始めようとしたが、パーティーが始まるまで結構時間がある事を理由に断る。
侍女としても私と一緒にいるのは怖いようで、すぐに退出していった。
「ふぅ、つかれた……。」
完全に侍女が部屋からいなくなったのを見てからルーディンス王国の女性王族特有の言葉を崩す。
そして一つ伸びをした。
ルーディンス王国からこの城まで何日もの間馬車で揺られていたのだ。
しかもパーティー当日に到着とは休む暇もない。
王女たちが行きたがらずに押し付けあうのは勝手だけれど、もう少し早く結論を出してほしかった。
馬車でも寝ていたが、長旅で疲れた体を少しでも休めるために椅子に座って目を閉じた。
「…………。……………。」
どれくらい寝ていたのか分からないが、歌がきこえてきて目が覚めた。
ハープにまじって聞こえるその歌は聞いたことのない声ではあるものの、なんとなく私を誘っているように感じ窓を開けた。
夢うつつのままふらふらと城の庭を歩き、小さめの建物の前に出た。
建物についている扉は鍵がかかっているようで開かない。
それでも歌に誘われるままに空をとび、歌声の主のいる部屋のバルコニーに立つ。
「君は……。」
その声にハッと我に返り、歌っていた男の目を見て思考が真っ白になる。
紅い。
まるで吹き出したばかりの血のような……。
そこまで考えたところで本能が警鐘を鳴らした。
この男は危険。
私よりも強い。
囚われてはならない。
自分でも理解できない思いがあふれ、何階だか分からない部屋のバルコニーからとび降りた。
初めまして、またはお久しぶりです。
誤字が多いうえ文才もないのに懲りずに小説を投稿してしまいました。
誤字脱字日本語の間違いなどありましたら、教えてくださると嬉しいです。