異世界トリップで××に!?
初めまして、私は現在、人間ではない姿になって異世界へ行きました。
そう、異世界トリップです!…と、喜びたいのはやまやまですが、現在の私は人型じゃないんです。
人型じゃ、ないんですよ!?どうする事も出来ないんですよ!?
ついでに、神様には出会っていません。残念な事にです。
では何故夢じゃないかと理解しているのかと言うと、目の前の紙が原因です。
紙にはこう書いてありました。長々しく書いてあったので省略している部分もありますが。
何故かはわからないが世界にバグが起きたらしいのです。
けれど肌で触れさえしなければ大丈夫な危険度の低いバグだったらしいのでしたが…。
たまたま私が持ち前のドジで顔面を勢いよく強打した所がそのバグだったらしいのです。
あまりもピンポイントさに見ていた神々はそれぞれ飲み物を吹き出し、お腹を抱えて爆笑していたらしいです。とほほ…。
それが面白かったのとバグに当たった謝罪の代わりに転生をさせてくださるらしいのです。
そして、何故直接ではないのかと言うのも書いてありました。
理由は落ち着くまでは私の姿を見ると笑い、呼吸困難に陥りそうになるだろうという判断らしいです。
実際に同じ格好のまま気を失っていた私を見た数人の神様が笑い転げていたらしいです。
けれど、ある程度落ち着いたら神殿に行けば会ってくださるらしいのです。
本来神様はあまり姿を見せないのですが私の場合は謝罪の意味も込めいるらしいです。
そして、申し訳ないが容姿などはランダムになる。と書いてありました。
そのかわり、スキルなどに色を付けてくださるとの事。
そして重大な事が書いてありました。なんでも、前世の名前、容姿、性別になることは出来ないとのことです
つまり、今の私は雄です。さらに前世の名前どころか容姿すら違う別人?別犬?です。
けれど新しい生はありがたいので、神殿に行った際にはお礼を言いたいと思います。
今の私…ぼくと言った方が良いですかね?
ぼくは現在視界に入る自分の前足を見るからに柴犬らしいです。大きさ的には豆柴でしょうか?
なんとなく右足でたしたしと地面を蹴ってみます。少し違和感があります。
そしてゆっくりと歩きだしてみました。やっぱり少し違和感があります。
暫くすると少し慣れてきました。今は走る練習をしています。
すると、どこからか話し声が聞こえてきました。ぼくはふらふらと近づいて行きました。
こっそり見つめるとそこには凄く格好良い男性が三人いました。
「…誰だ、出てこい。」
ボーッと三人を見つめていたら、そう金髪青目の人がこっちを睨みつめながら低い声で話しかけてきました。
他の二人もこちらを警戒した様子で睨みつけ、金髪さんともう一人は剣に手を当てています。
そしてもう一人の緑色の髪をした人は肩くらいまである大きな杖をこちらに向けています。
とても怖く、ぼくは固まってしまいました。毛が逆立っているのが分かります。
「出てこないのか?なら…。」
三人からじわりじわり、と何かが溢れだしているのがなんとなく分かりました。
多分それは殺気なのだと思います。このままでは折角新しく生かせてもらったのに無駄になってしまいます。
ぼくは震える四本の足でなんとか歩き、草むらから出ました。すると三人は目を見開きます。
「おい、これはなんだ?」
「なんでしょう…?このような魔獣、見た事ありません。」
「つか、なんねんこのモコモコした魔獣。ちっこいし、50セントもないやろ?」
三人はいまだ警戒した様子で、ぼくはつい足の間に尻尾を入れて、きゅーんと鳴いてしまいます。
そんなぼくを見て何故か固まる三人。どうかしたのでしょうか?
しかしすぐに動き出した三人。なにか混乱しているようです。
「おい、これ幻覚ちゃうん!?なにあれ可愛すぎやろ!?」
「…大変驚くことに、魔力の揺れは一切確認できなかったので、あれは幻覚ではないかと…。」
「なんだと…!?」
その魔法使いさんの言葉を聞いた二人が勢いよくぼくを見てきました。目が怖いです。
ぼくはあまりの怖さに足の間に尻尾を入れ、耳はぺたりと垂れ、きゅーんと鳴いてしまいました。心なしか体が震えています。
そんなぼくに何故か三人はぶるぶると震えはじめました。もしかして殺されてしまうのでしょうか?
ぼくはあまりの運の無さにきゅーんきゅーんと鳴き続けました。
すると一瞬のうちに関西弁擬きで喋っていた茶目茶髪のお兄さんがぼくの目の前で鼻息荒くしていました。
びくりと震えるのに気にした風もなく恐る恐る触れてきました。…ご丁寧に手甲を脱いでくれました。
「ふおおおお!!モフモフ!モフモフやで!?ホンマなんやねん!!メーリィよりもモフモフしとる!!
しかもほんのり温かいっちゅーのも…かわええ、ホンマかわええ…!!」
顔が崩壊しています。それがとてもエロく感じてしまうのでやめてください。
あと涎が出てますよお兄さん、とは思いますけど本人は気付いていないようです。
涎が降りかかってきそうなので嫌なのですがぼくは子犬で、お兄さんは人間。力の差は歴然です。
その時、「ぐえ」という声と共にお兄さんは尻もちつきました。
どうやら金髪のお兄さんが助けてくれたようです。ぼくは助かった事に尻尾をぱたぱたと振ってしまいます。
そんなぼくを見たお兄さんはぴくりと反応しましたが、表情は変わりませんでした。
「…どうだ?」
どうだ、とはどういう意味なのでしょう?ぼくは尻尾を振るのをやめ、首を傾げました。
それを見た茶髪のお兄さんは身悶えています。奇声を発しているのに狂気を感じますのでやめてください。
そこに、緑色の髪のお兄さんは何かを呟きました。するとぼくサイズの魔方陣が現れました。
そして光の輪がゆっくり上下に行ったり来たりをしていました。
やがてふと消えました。ですがぼくは初めての魔法に興奮しすぎて固まっています。
「……その、幻覚でもなければ、縮小魔法が掛かっているわけでもないようです。」
「ふぉぉぉおおあああああああっ!!」
茶髪のお兄さんはまた奇声を上げました。いよいよ恐ろしくなってしました。
そう思っていたのがいけなかったのでしょうか?茶髪のお兄さんは血走った目で鼻息荒くぼくを触ろうとしてきました。
その瞬間、ぼくはふわっと浮き上がりました。お腹を持たれてる感覚がします。
目の前には、金髪のお兄さんがいます。ぼくは助かったので尻尾を振り、ありがとうの意味を込めてきゃんと鳴きました。
金髪のお兄さんはそんなぼくを見て顔を近づけてきました。
ぼくは再びありがとうの意味を込めてすりすりしました。お兄さんは何も言いませんでした。
けれど、ちらりと見えた二人のお兄さんは目を見開いて驚いていました。
どうしたのかとぼくは金髪のお兄さんを見上げますが無表情のままでした。
「…で、この魔獣はどうするのですか?」
魔獣って事はぼくですよね?と緑色の髪のお兄さんに首を傾げてみせます。
すると動揺したように一瞬視線を彷徨わせたのち、何故か茶髪のお兄さんを蹴り飛ばしました。
「ゴフッ」と声が聞こえてきましたがぼくにはどうする事も出来ません。
「……連れて帰る。」
「おや、いいですね。もし捨てておくなどと言われたら私は新しい魔法の実験体になってもらおうかと思いました。」
その言葉を聞いて、ぼくは理解しました。
どうやら、ぼくはこのお兄さんたちに拾われたようです。