レイド、ブルー
二つ目の投稿になります。ショートショートです。
ただ、当たり前に見えているものを欲する、欠陥品たるヒトの夢。
1.レイドブルー
見渡す限りの青。青、蒼、藍、あお、アオ、ブルー、アズール、ターコイズ……あとは、えっと、他なんかあるかな?
グォングォンという独特な音を伴いながら高出力のロケットエンジンが俺らの後方遠くで鳴り響く。
俺の目に、青以外の色は、映らない。
2.RGB
「ねえ、知ってる?空の色。」
あの子が語りかけてきた。名前は知らない。もう結構長い間一緒に遊んで、すっかり親友だったのに、名前もロクに覚えてない。きっとこの子もそう。
「?」
何が言いたいの?と首を傾げて見せたっけ。
「私たちみたいな色盲の人間でも、青い色だけはちゃんと見えるんだよ。」
「そうなの?でも僕、緑も赤も見えてるよ。」
「それは見えてるんじゃなくって、区別できてるだけ、あなたの視界が独自のものとして発展してあなたの中でテイギされただけよ。それを言い出したら私にだって見えているもの。」
この子は頭がよくって、僕は時々話についていけなくなる。この前も、セードーイツなんとかっていう難しい話を聞かされて、僕の頭はパンク寸前だった。
3.ネガティブリターン
「行っけえ!!」
甲高い声で相棒が叫んだのは、つい4分ほど前の事なんだけど、地面はみるみる遠くになっていって、やがて青かったはずの空は真っ黒になっていた。……空が、もう空じゃなくなったんだ。
管制塔は繰り返し、「ネガティブリターン(発射基地への帰還不能)」を告げている。
4.またあした
「そしてね、お空の青はね、手に入れようとして追いかけると、逃げていくんだって!」
また、難しい話だと思った。雲が動くって事さえカイキゲンショーな僕にとっては、わからない言葉の群れだった。
「だから私は、宇宙飛行士になりたいんだあ!」
あの子はそう言って少年らしい笑顔を見せた。
「じゃあ僕も!ウチューヒコーシなりたぁい!」
「一緒になろ!」
「うん!」
こういうの、ハツコイって言うんだって、絵本で読んだ。
5.真相
ポン・ポン・ポン・ポン・ポン………規則的な音と共に緑のうねる線がモニターに映って行く。消えては映る、映っては消える。ポン・ポン・ポン・ポン・ポン………。それが今の俺の全て。
ギィっとパイプ椅子の軋む音がすぐ傍で響いたかもしれない。
「とんだスパゲティシンドロームだ、ね。」
あの子が言った。そして俺の手を取って、グッと握ってくれた。……のだと信じたいけど、わからないんだ。空の青色と同じで、手に入らなかった。
色弱及び色盲の人間は宇宙飛行士にはなれません。そして、女性に色盲が出る事は極めて稀です。
スパゲティシンドロームとは、危篤で瀕死の人間とか植物人間とかが、点滴やら計器類のコードやらを大量にくっつけている状態の事。
ただそれだけのお話。約1000字のみで構成しています。奇数章は現在を、偶数章は過去を描いています。本当にただそれだけ。




