幼馴染の復讐
それは一週間前、実家に帰省した時の事だった。
久しぶりに幼馴染に会おうと、隣の嶋半家のインターホンを押した。
しかし、誰も出てこない。
そこで、俺はある作戦を思いついた。
昔貰った合鍵を使って中に入り、幼馴染であるミキを驚かせようと。
鍵を使って中に入り、小声で「お邪魔しまーす」と言いつつ中に入る。
一歩、二歩、三歩ぐらい歩いた時だろうか。
ガラッと風呂場の戸が開いた。
そこには、すっかり大人の女性になっていたミキがいた。
ミキは風呂上りで、パンツをはいていた。しまパンだった。
首にタオルをかけていて、髪を拭きながら出て来たところだった。
なお、上は何も着ていなかった。
俺が大人になったように、ミキも立派な大人になっていた……。
いやぁ、それからが大変だった。
泣くわ喚くわ、俺があまり見えなかったって言ったら「おっぱいが小さいとでも言いたいのか」とか言い出すし。
まー役得ではあったけどね。
それが一週間前の出来事だ。
さて、俺は今びっくりしている。
俺の実家であり、ミキが住んでいるのは山梨県。
俺の今いる大阪とはかなりの距離がある。
あるはずだが……。
目が覚めたら、ミキがいた。
仁王立ちをして高笑いをしている。
何故だ? なんでこいつここにいるんだ?
それで、何で俺は手錠で拘束されてるんだ?
「ホーッホッホ。何故私がここにいるか分からないって顔してるわね!」
「そりゃあ……まぁ……」
「これはね、復讐よ! 復讐なのよ!」
「復讐? ……あー」
ここで俺は一週間前の事を思い出した。
いや、でもそれだけの為にわざわざ大阪まで来るか? 普通。
「復讐? 復讐って俺を拘束することなのか?」
「いいえ! 私の復讐はすでに達成された!」
「お、おう……」
何か誇らしげだが何なんだろう。
凄い嫌な予感がしない。
ミキは再び高笑いを始めた。
何かよく分からないが、とりあえず話を進めて欲しい。
「……で、復讐って何をしたんだ?」
「よくぞ聞いてくれた!」
「聞いて欲しかったのか……」
「まずはトイレットペーパー! 一度外して、逆方向にさせてもらった!」
「……逆?」
……あー、アレか。
ホルダーにセットする時の方向を逆にしたのか。
たまーに間違えてセットしちゃって、紙を出しにくくて慌てて直すんだよな。
いや、でもそれってセットしなおせばいいだけじゃ……。
ミキの顔を見る。
あぁ、こいつリアクション待ちしてるわ。
仕方ない、付き合ってやるか。
「な、何て恐ろしい真似を! そんなことをしたら、紙を出したくてもちょっと時間がかかってしまう!」
「ほーっほっほ! 恐ろしいでしょう、でもまだあるのですよ!」
「まだあるのか……」
「見なさい、コレです!」
ミキは透明なビニールを出した。
そこには草加せんべいと書かれていた。
というか、中身が空っぽなんだけど食ったのかよ。
「それを全部食べたのが復讐なのか?」
「いーえ違うわ。コレを見なさい!」
「こ、コレは!」
「そう、乾燥剤を水に浸してやったわ!」
な、何てしょうもない。
というか肝心のおせんべいはどこに行ったんだ。
ミキは再びリアクション待ちの表情をしている。
うわーもう面倒くさい。
「な、なんだってぇー。 それじゃあ、海苔の缶に使いまわす事ができなくなってしまったじゃないかぁー」
「ほーっほっほっほ!」
「ちなみにおせんべいは?」
「あ、それは私が食べた。つい」
それ食べたら乾燥剤ダメにする意味ないだろう……。
というかおせんべいを食った事の方が復讐になるんじゃ……。
まぁ、1人暮らしで食いきれなかったからいいんだけどさ。
「で、他にはあるのか?」
「これを見なさい!」
「こ、これは……!」
赤のマジックペンと、黒のマジックペンのフタが逆になっている。
何と地味な嫌がらせ。
あとでそっと戻しておこう。
その後も、ミキの地味な復讐が続いた。
爪楊枝と綿棒の位置が逆だったり。
砂糖と塩のシールが逆になってたり。
俺のジェットス●リームアタック再現フィギュアのガ●ア機と●ッシュ機が逆になってたり。
基本逆にする感じなんだな。
「そして、最後の復讐が!」
「何だ、まだあるのか」
「これだぁ!」
ミキはドサッと何かを置いた。
それはミキの自分の荷物だった。
「今晩泊まれる場所が無いので、泊めてください」
「あ、あぁ。分かったからとりあえずこの手錠外せ」
ちなみに、その日の晩御飯はチンジャオロースーにした。
ピーマンが苦手なミキは、涙目になりながらちゃんと食べていた。
明日の朝は、ピーマンの肉詰めにするか。
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