16話
最後に土産屋に入る。水族館の別棟にある建物は、水族館ならでわの物から、アクセサリーなどの小物まで、ここだけで充分買い物が楽しめる規模である。
巽と美咲へのお土産を買いたいとの、巴のリクエスト。
まずは一回りと。歩き始めて間もなく、巴はアクセサリー売り場で立ち止まる。気になっていた小物でもあったのか、海を気にすることなく店に入っていった。海は巴の後についていく。
「かわいい」
「どれ?」
海が後ろから覗きこむと、巴の手には、平らな円の中に真珠・雪の結晶・月のモチーフなどがちりばめられた、古風な首飾りがあった。西都から入ってきた物らしい。
「かわいいね」
「はい」
巴は嬉しそうに返事をするが、値札を見ると名残惜しそうに、首飾りをもとの位置に戻した。
「いいの?」
海が聞けば、巴はコクリ頷き、店を出て歩き始める。
一回りして、巽と美咲の土産を買っている巴に、海は「ちょっと空けるけど、ここで待っててね」と言って巴から離れる。そして、先刻の店に向かった。
女性客が多い中で、男一人はやはり目立つ。巴が欲しかったであろう首飾りを探して、会計をする。
「贈り物ですか?」
「はい。さっき彼女が気に入ったみたいだったんですが、買わなかったんです」
会計をしてくれたのは、物腰の柔らかい店員だったせいか、海はいつもよりおしゃべりになった。
「そうなんですか。その方、こんなに想ってくれる殿方がいて幸せ者ですね」
「まだ、俺の片想い中なんですけどね」
「あら!素敵じゃないですか」
会計を済ませ、海は巴のもとへ急ぐ。
首飾りは、贈り物用に包装されている。
見ず知らずの人におしゃべりになるほど緊張している自分に苦笑する。
海が戻ると巴は店の前で待っていた。
「何かあったんですか?」
巴は海に気がつくなり、駆け寄りそう聞いた。
「え?」
「なかなか戻ってこないから、何かあったかと思って……」
「もしかして、かなり心配してくれてた?」
ヘラリと笑う海に、自分が心配していたのを軽く流された気がした巴は、不機嫌になる。
「本当に心配たんですからね!!」
「ごめんなさい……。で、買い物は終わった?」
「黒崎さんが、どこかにいっているうちに終わりましたよ」
しゅんとする海に、怒る気がなえて、巴は手提げ袋を持ち上げて見せた。
「どうする?まだ見る?」
「見ると欲しくなっちゃうから、もういいです」
「じゃあ、帰りますか」
まだ、少しむくれたままの巴に、海は風がそよぐように笑う。
何気なく巴の荷物を持ち、反対側の空いている手を巴に差し出す海。その行動の意味がわからず、巴はきょとんとしている。
「お手をどうぞ」
「え?」
「手、繋がない?何か思い出すかもよ?」
海は、不敵な笑みする。
「さぁ」
再度促されると、巴は恥ずかしそうに手を重ねる。その仕草は、桔梗のように控えめだった。




