9話
巴と美咲は順調に進んでいく。次のポイントは、借り物競争。二人の借り物は”月うさぎの大福“
「なんで、大福……」
「ちょうどいいわ。おじいちゃんのお土産に買うわ」
ポイントから少し離れた場所に、楓の木が目印の和菓子屋・月うさぎが店を構えている。暖簾の柄がかわいい店。
「こんにちは」
ショーケースには、水菓子や綺麗な細工の和菓子、団子などが並んでいる。
「いらっしゃい」
店の奥からは、着物に割烹着の初老の女主人が姿を見せた。髪をおだんごに結い、紅い玉簪を挿している。
「こんにちは」
美咲もあいさつをする。
「草大福、4つちょうだい」
「はいよ。今日は賑やかだね」
大福を包みながら女主人が言う。
「夏至祭りだもの。今、スタンプラリーに参加しているの」
「おや。そりゃー早くしないとね」
「うん」
会計を済ませ、「頑張って」との激励を背中で聞いて店を出る。ポイントに戻り、スタンプを押してもらう。残るはあと1つ。上位15位までが、水族館の招待券がもらえる。
「あと1つね」
「地図にあるのは、この先ね」
確認しあう二人の目指す先は公園、最終ポイントは“パン食い競争”
「ここは、私に任せなさい」
ポイント受付を済ませると、運動神経のいい美咲は、さっそく風を切って走り、踏み台を上手く使ってジャンプする。そして、見事にあんパンをくわえて着地。
「お見事!」
美咲の綺麗なフォームに周りからも、拍手喝采。
「これで、目指すはゴールね」
今いるいまところから、ゴールまではそう遠くない。巴は左手で着物の裾を少し持ち上げ、美咲は小鹿のように軽やかに走り抜ける。
「お疲れ様です!お二人は14位です」
係員が、14位の旗を巴に渡す。
「危なかったね。でも、これで水族館へ行けるね!」
「うん!ありがとう。美咲」
嬉しくてはしゃいでいるのも束の間、1つ大事なことを忘れていた。
「はっ!あの人は?」
「あ、忘れてた。でも、黒崎さんのことだから……」
「忘れていたとは悲しいな」
巴が言い終える前に、後ろから声がした。振り返ると、1位の旗を持っていた海がいた。
「すごいですね」
「自分でも驚いたよ。巴ちゃん達も、15位までには入れたんだ」
「はい!」
ほくほくと嬉しそうな巴。美咲は何も言わずに微笑む。
その後、賞品を受け取り、3人は金木犀で休憩をすることにした。




