電話一本出前一分 ファックス男
電話一本出前一分 ファックス男
ジリリリリン、ジリリリリン…。部屋に響き渡る鈴の音。
「へいっ、来来軒です!…わかりやした。ラーメン一丁、チャーシュー一丁にギョーザと
チャーハンですね。すぐに出前します!!ところでファックスはお持ちですか?ある?じ
ゃあ電源を入れといてください。」
脂ぎった店のおやじが豪快に鍋を振る。額の汗はますます噴き出し、次々に炎の料理が出
来上がる。調理場のボルテージは最高に達し、いやがうえにも盛り上がる。
「おい、出番だぞ。」
さっき電話に出た男、リチャード ギャンブルに声が掛かる。彼はファックスのダイアル
を出前元に掛ける。そして…。
「あの馬鹿、おかもちを忘れていきやがった。」おやじが一言呟く。
彼は何時の間にかファックスの前から消えていた。おかもちの上には寂しい風だけが吹い
ていた。
これはファックスを用いて移動できる男、リチャード ギャンブルの愛と正義と勇気の物
語である。
本編
リチャードは迷っていた。なぜか警官に追われていた。こんな事は初めてだ。どう対処
したら良いか分からずパニックに陥っていた。
「何がどうなってんだ?一体、私が何をしたというんだ?ただ、出前をしただけなのに。
それに頼んでないといちゃもんまでつけられるとは…。」
そりゃそうだ。いきなりファックスから人間が現れて
「ラーメンお届けに参りましたあ~。」
なんていわれりゃ普通の人はびびるわな。しかも頼んでなければなおのこと。
「くそっ、ここは何処だ?早くラーメンを届けなければならないのに…。そうだ!ファッ
クスを探そう。」
彼は最寄りのコンビニに駆け込んだ。しかしそこにはファックスがなかった!!
このままでは麺が延びてしまう。途方に暮れている暇はない!彼は店を飛び出す。
その瞬間、
「待ちやがれ!!この痴れ者!!」
いかん!さっきの警官だ!ダッシュで逃げる。警官はそれを見るとダッシュで追う。こう
なったら追い駆けっこだ。追いつけないと見ると銃を構える。
「止まりやがれ!!この痴れ者!止まらんと撃つぞ!!」
しかしそう言う前に撃っていた。なんて警官だ!こんな奴に市民の平和を守らせていいの
か!?
「危ない奴だ!!当たったらどうする!?」
そう叫んでも埒があかない。ぱんぱんと銃は撃たれる。流れ弾は歩行者を襲う。
まあ、下手糞だから当たりはしないものだ。ニューナンブは5発しか弾が装填できない。
あっという間に弾は無くなる。
「くっそ~、覚えていろよ~!」
警官はさも悔しそうに叫ぶ。どうやら振り切った。だが、もう麺は延び延びだった。
顔を上げるとそこは店の近くだった。
「おかしい、住所まで聞いたのに。」
とぼとぼと店に向かって歩く。そして彼は見た、自分の探す住所を。そこは店の隣だった。
店に待っていたのは鬼のような形相のおやじと怒り顔の出前主だった。
出前がある限りリチャード ギャンブルの戦いは続く。頑張れ、リチャード!愛と正義と
勇気がある限り。負けるな、リチャード!平和を掴むその日まで。無実が証明されるその
日まで。
大学時代の黒歴史を敢えて晒しました。下らないで済めば御の字です。