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歪みの苑  作者: みづき
二章
25/82

<14>

 甘い香りが部屋に漂い、ふわりと鼻腔をくすぐる。

 隣で侍女であるサリーがお茶を淹れているのを横目に、仁和は眉を寄せていた。

 ロイアの言葉の意味。

 以前にも、不可解な言葉を投げかけれらたことがある。そのすべての意味は分からず、そしてロイアに問いただせずにいた。

「でも、探してってことは……教えてはくれないんだよね?」

 なぜだかそんな気がした。

 仁和はそっと息を吐き出して、サリーの勧めてくれたお菓子を口に運びながら首をかしげた。

 元いた世界にあるクッキーを彷彿とさせるこの焼き菓子は仁和のお気に入りである。

「何か騒がしくない?」

 食べる手を止めてサリーを見やる。

 廊下から聞こえてくる声は重なり合い、足音もなにやら騒がしい。

 普段この仁和に用意された部屋はあまり外の音が聞こえない。なのに、今は部屋の中からでも聞こえるほどである。

「……そうですね、何かあったんでしょうか」

 不思議に思ったサリーが首をかしげているのを見ると、彼女も何が起こっているのか知らないらしい。

 二人そろって首をかしげていると、木製の扉が軽く叩かれる。

 ゆったりしたのではなくなぜか急いでいるように感じられ、サリーが慌てて扉を開ける。

「……失礼します」

 現れたのは、全部で六人ほど。その先頭には親衛隊の隊長であるジャンソンがいた。

 わずかに強張った顔をむけられ、仁和は思わず身じろいだ。

 ジャンソンは深く息を吸い込んで口を開く。

「――王が、婚姻を結ぶと仰せです」

 ここ最近晴れ渡っていた空が、わずかに曇り始めていた。

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